1. 血と砂(1922)
《ネタバレ》 ルドルフ・ヴァレンティノのご尊顔を拝したく、満を持しての鑑賞。1941年のタイロン・パワー版は既に観ていたのですケドも、正直ソレが好かったのか悪かったのか…(話が入って来易いのは当然好かったとも思うモノの…)今作の方で個人的に目立ってたと思ったのはやはり、肝心の妖婦ドニア・ソルなのです、が…なんつーか、太々しいとゆーか太ましいとゆーか、寧ろもう図々しいとゆーか(ハッキリ)アクドい・悪辣だとゆーか、外面的にも内面的にも全く以て魅力的な=観て好かったと思わせる様なキャラには感じられませんでしたよね⇒1941年版ではコレが(お初のカラー作品登場ってゆう)リタ・ヘイワースだったのですから、もう…… んでそもそも、もっと肝心なるルドルフ・ヴァレンティノの方とても、正直コッチすら私にはその魅力がほぼ伝わらず終いって有様でして…結論、コレなら、シンプルな比較として1941年版の方を観ておけば全く事足りる、としか言い様がありませんですね(個人的にはね)。こーなるとまた、ヴァレンティノ&ナジモヴァ共演の『椿姫(1921)』の方も観たいのですケド、コッチは媒体が見つからない…… ※今作って、IMDbだと108分の作品ってなってて、本サイトでもソレに倣って登録されていると思われるのですが、私の観たのはどー見ても60分版のDVDなのですよ(ナニコレ?)。大幅にカットされてるってコトなのか、ちょっと調べても見当が付かず…(ソレも心残り…) [DVD(字幕)] 4点(2024-01-11 12:52:37) |
2. 死滅の谷
《ネタバレ》 コレは確かにナンとも強烈な……ブニュエルが今作を観て映画監督になろうと思った、てなコトらしいですケド、個人的には(コレもその影響自体は一般的に認知されてる)ベルイマンとか+彼の『第七の封印』とかへの影響…てのがより強力かもなって印象ですね。それは技術的な部分のみならず、今作が先進的・芸術的な表現技法を駆使して描き出すトコロの力強いテーマ性の部分にもまた大いに見て取れると思うのです。中盤の3つのストーリーで実に極上なるファンタジックの渦の中に見事に引き込まれたと思うやいなや、ラス前のエピソードの余りの冷徹さにモ~首がもげる位の勢いで現実に引き戻される、この感覚が実に鮮烈で、かつ(映画的にエッセンシャルな)「快感」だったと思うのですね。うーん、まだまだ、子どもの頃にコレを観せたら(ブニュエルとかベルイマンとかと同様に)ひとりの人の人生を⇒それを通して世界の在り方をも少し変えてゆける様な超・パワフルな作品だと思われますね。傑作。 [DVD(字幕)] 8点(2023-11-02 17:41:15) |
3. 裁かるゝジャンヌ
《ネタバレ》 うーん…私は一体、いま何を観たのか?とゆーのをスグには断言できなかった、とでも言いますか。。例えば、画面の総合的なクオリティとか、或いは(サイレントではありながらの)諸々の演技の出来だとか、そもそもソコら辺はもうオーパーツ!とかってレベルでメチャクチャ高度だったと思うのですよね。でもやはり、ソレらとて(100年前のサイレント映画のヤツだから)現時点の一般的な映画のモノとは大いに質感を異にしているとも思いますし、でも他方、どう見てもつくりもの・ごく抽象的な表現でもあるのに、むしろ意外なマデに真に迫って深く深く心を穿ってゆくとゆーか(⇒私自身は、キリスト教徒でもナンでもないのですケドね)正直に本当に何が画面に映ってるのかが段々と好く分からなくなってってしまいました…と。重ね重ね、私は今映画を観たのか・宗教音楽を聴いたのか(⇒まあ伴奏音楽は現代の後付けだと思いますが)・小説を読んだのか(⇒サイレントのモノクロだからか実に高尚で文芸的な空気も感じ取れたのですよね)・それとも何か、現実の歴史の一ページとゆーのを奇跡的にも垣間見る機会を得てしまったのか……この上無く独特でそして唯一無二とも言える映画鑑賞経験、なんてのをしてしまったという風にさえ感じてしまいました⇒今まで観たサイレント映画の中では、間違い無くイチバン強烈でしたすね(その意味でのこの評点で)。 [DVD(字幕)] 9点(2023-08-29 00:04:16) |
4. 吸血鬼ノスフェラトゥ(1922)
《ネタバレ》 今回鑑賞出来たのは「アメリカンバージョン」というヤツらしく、クレジットやインタータイトルは全て英語、かつ登場人物の名前もブラム・ストーカー版に準拠したものに変えられている様です。ソレも含めて、まず原作の内容が頭に入っていればサイレント作品としてはごく観易く・分かり易く観れる作品だろうと思いますね。で、極初期のホラー作品として(今でも)ヴィヴィッドに怖いかと言われれば決してそーでもないかな…と思うものの、肝心のノスフェラトゥ自体のヴィジュアルに代表される禍々しい物理的表現、或いは登場人物の恐怖や狂気の表現(演技)とゆーのは、コレは決して現代のソレと比べても(エッセンシャルな部分では)全く引けを取らないモノかな…とも思えました。特にやはり、ノスフェラトゥ自体の画ヅラ・雰囲気なんかは実に強烈なマデに不気味だったですね(⇒コレとて似た様なヤツは現代のホラーの中にだって今だ幾らでも見い出せるかと)。結論、機会が在れば観ておいて損は絶対に無いと思いますね(かなりオススメ)。 [DVD(字幕)] 6点(2022-07-16 23:54:42) |
5. パンドラの箱(1929)
《ネタバレ》 私の観た「クリティカル・エディション」とゆーのは、1997年にドイツで修復されたプリントによるもので、その際に伴奏音楽は新たに作曲されたものということである。かなり現代的で(でありながらレトロで時代的な雰囲気も十二分に醸している)叙情豊かな音楽は相当に良質で、字幕がかなり少ないことも相まって率直な観たままの感触はオペラや音楽劇にも近いもの(=音楽の力で伝えたいモノを伝えてゆこうという意志を持つもの)に感じられた。確かに少し分かり難い作品ではあるが、その意味ではあくまで個人的にはある程度「慣れて」いる範疇の演劇的表現であったかと思う。内容的にも例えば『マノン・レスコー』などにもかなり近い様な、所謂(その時代の先進的な)ファム・ファタールを描く物語だと思われるが、今作のルイーズ・ブルックスにはそういった他作品の女性に感じる負の人間性の側面よりは、むしろ純粋で透き通ったソレの方をより強く感じ取れる様にも思われるのだ。 ルイーズ・ブルックス、世紀のハマリ役ですね。しかし、ただ悪女かと言うと少し違うとも思います。彼女は自分の感情にどこまでも素直なだけであり、そしてそう振る舞うことに揺るぎ無い自信と矜持を持ち合わせている、と感じました。その部分の彼女の表現の絶対的な土台となっているのが、類稀で実に現代的・普遍的な彼女のルックスであるかと思います。話を聞くと、実際の彼女本人もそういう自信に満ち溢れた「媚びぬ」女性だった様で、その意味でもこれ以上無いというキャスティングだったのでしょう。重ねて、今作の彼女のキャラクターには常しえに朽ち果てぬであろう普遍性とゆーのを感じます。傑作ですね。 [DVD(字幕)] 8点(2021-08-11 08:55:42) |
6. チャップリンの黄金狂時代
《ネタバレ》 ナレーション付版で鑑賞。冒頭、冒険家として(雪山で)出てくるのがいつもの格好のチャップリンなのが、まず笑いドコロ(個人的にはこの時点でツボ)。あと好きなのが、ロールパンにフォークの名シーン。『Mr.ビーン』の大好きなクリスマスの回で、人形を手で動かすコントを思い出した。チャップリンやアトキンソン、一流のコメディアンは、モノを使って(自分が動かなくても)面白さを同じ様に創り出す。「笑い」の根本に対する深い洞察と理解が窺える。女優もチャーミング、かつ程よく世慣れた感じがチャップリンとはアンマッチでそれも面白い。人類の宝という映画ですね。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2020-04-17 00:11:39) |