1. 女相続人
《ネタバレ》 中盤までの感じは正直、時代的にも超・コテコテなメロドラマ…みたいに見えてたのですが、そーするとそこでハヴィランド自身は(そりゃ実年齢30過ぎなのですから)再び素晴らしく美人ではあるモノの⇒世間知らずの箱入り娘=個人的にはどう見繕ってもハタチ前後のキャラ、には流石にちょっと見えないかも…みたいな感覚もありましてですね。しかし、その序盤のパッとしない感じが逆に、中盤で恋を得てドンドン活き活きと輝き出すサマを描いてゆく上では非常に効果的だったかも……な~んて思ってたトコロからのこの「ドンデン返し」にはまたもや、私も流石にちょっと「震えて」しまいましたよね。正に名優と称するに相応しい超演技で、オスカーも納得だとしか言い様がありません(⇒てか、こと現代に至っては、最早この彼女の演技のみを観る為の映画だ…とすら言えると思いますよね)。重ねて極めてシンプルなクラシックだと思いますが、確実に傑作だと思いますね。 [インターネット(字幕)] 8点(2024-02-27 23:29:08) |
2. 悪魔が夜来る
《ネタバレ》 全体として、少し取り留めが無い=一番言いたいコトが何なのかがややはっきりしない(具体的でない)という感じも有るには有るのですが、最後まで観ると高度に寓話的で比喩的で示唆的⇒そして実に芸術的な優れた作品だと思えました。時代と、そして製作背景を考えれば結構驚くべきコトにも思えますね。芸術的という意味では、前半は確かに少しダルいのですが(その時点からも)流石のジャック・プレヴェールの手による詩的な台詞回し(愛の囁き)が中々にお洒落だったと思いますし、後半は俄然力の入ってゆく演技の質がまた高かったですよね。悪魔役のジュール・ベリも(当然)大目立ちではありますけれど、他方で名優アルレッティの得体の知れない+ごく妖艶な雰囲気も素晴らしかったかなと(ちょっとダケ若いコトもあって、ワタシ的には『天井桟敷の人々』の時よりも素直に魅力的だと思われました)。あと、その相方の男の方もよく見るとドエラいイケメンなのですよね(ギリシャ彫刻みたいな)。諸々と結構、シンプルに眼福な映画でもありました。 ドラマとしても個人的には、この世界には色々な種類の人間が居るのだ…という事実を冷徹に描きつつ⇒その中に一つ「でも正義は必ず勝つ!」というヒューマニズムなメッセージを描き込んだ、シンプルに気持ちの好い作品だと思われましたね。重ねて、この作品がつくられた状況をしっかりと鑑みるに、ソレは非常に尊いコトだった、と率直に思われます。名作の範疇かと。 [インターネット(字幕)] 7点(2023-07-07 22:25:58) |
3. 破戒(1948)
《ネタバレ》 今般の前田和男監督版を観る為に、既存の映画化二作品を先に観てみたというトコロです。しかし、その結果として思うのは、まずは原作がやはり長大な小説であって、かつごく高度に主人公の内面を描き出しているモノであるから、第一に映画化に際しては時間的な枠に収める為に隅々までの取捨選択が必要になるトコロで、更にまたその主人公の心の動き・葛藤(或いは解放)というモノも文字ほどに伝えるコトはそもそもかなり難しい…と(率直に)感じました。あの最後の、丑松の教室での告白の場面などは、小説ではその度に涙無くしては読めない…という崇高なシーンだと(私個人としては)考えているのですが、残念ながら(少なくとも)既存二作の映画に関してはソコまでのシーンには為って居なかったかな…とゆーのが正直な感想ですね。中々、根本的に「難題」と言うべきプロジェクトなのだろう…という気はしてます(⇒また少なくとも恐らく、連続ドラマ位の分量を持って挑んだ方が好さそう…とも)。 そして、この1948年版は(1962版と比べても)尺自体も短く、だから種々の要素をドラスティックに簡略化・オミットしている⇒し過ぎている、と端的に思われました。丑松の事情としても、猪子蓮太郎との関係性=彼にすらその「告白」が叶わなかったコトの後悔、といったトコロはほぼほぼ描かれていませんし、また風間敬之進の家の悲惨や、志保と蓮華寺住職の陰惨なエピソードまでもが完全に割愛されているので、物語としては唯、丑松が隠し抜いていた秘密を最後には公然に告白した…という筋を表面的になぞっているダケで、とにかくその告白の「重み」とゆーのが全く感じられないのです。そもそも、ラスト付近は原作からもかなり大幅に展開自体が変えられて(=ごく分かり易く・またシンプルに盛り上がる様なモノに)しまっているので、少なくとも私としては原作のクオリティから期待すべき映画化には程遠い仕上りに思えました。ごく、中学生とかに教育目的で観ていただく分には、却って分かり易くて好いかも知れませんが。 [インターネット(邦画)] 4点(2023-06-18 01:21:18) |
4. 恐怖のまわり道
《ネタバレ》 大昔の、そして非常にシンプルなノワールですね。暇潰しには持って来い!ですが、重ねてごく純粋なサスペンスなので(同時に)ドラマにも成っている…とは言えないって感じでもありますかね。個人的には、第二の「死」の顛末は多少トリッキーだと言えるかとも思うのですが(⇒そんなコトがホントに起きるかは別として意外ではあった…と)翻って第一の「死」には結局ナンの仕掛けも無かった様なのですし(⇒現代的な感覚では、だったら素直に警察に行ってれば好かった…と)そしてその後に女と出会ったのも偶然なのであれば出来すぎ…かとも思われますかね(⇒何らか合理的な理由とゆーのをもう少しハッキリ説明して呉れた方が好かった…と)。でもでも、前述どおり、シンプルでコンパクトなので暇潰しになら(やはり)絶好だとも思いますかね。アマプラでタダですので、お暇なら。 [インターネット(字幕)] 6点(2023-05-23 23:09:36) |
5. 狼男(1941)
《ネタバレ》 『ドラキュラ』『フランケンシュタイン』『透明人間』とかと比べると、ユニバーサルの怪奇映画では少し後発という時期になる作品&ホラーモンスターかと。ただコイツもまた、ごく「伝統的・古典的」な存在ではある一方で、それら先達が見出した様々な「好ましい面」を取り合せて・ミックスしてつくり上げたキャラクター…という様な印象もあるのですね。まず中でもやはり吸血鬼にはかなり近しい存在に思いましたし、でも連中とは違って狼男には「悪意(=悪であるという意識)」が無い⇒謂わば「無意識の怪物」であるが故、逆にヒトと怪物の狭間で思い悩み、その運命に(自らもが)恐怖する…という辺りは(今度は)フランケンの方にも通じるな…な~んて。シンプルな様で、でも多少の複雑みとゆーのもしっかりと感じられてソコも好いな…と思ったりもしましたです。 しかし結局、コヤツに於いてのいちばん「ユニーク」な要素とゆーのは、ゆーてやはり前述どおり「悪意がない」=「悪役ではない(必ずしも)」というコトかと思うのですね。だからまた逆に、今作は(そのコテコテなタイトル&テーマのワリには)根本的にはホラーじゃなくて人間ドラマの方だったかな…とも思ってしまいまして、なので何なら恐るべき「モンスター」とゆーのが(実は)出て来てねーじゃねーか!という意味でも、結論的には暢気にホラーを観にいくと少し肩を透かされてしまう…とゆーのが最も根本的で強力かつごく「残念」な方にも近い感覚(=観た感じ)に思われるのですね。そして、また実際にそのホラーモンスターとしての彼の「外見」「怖さ」「ショックなシーンのショックのレベル」とか、或いは(モンスターとしてのシンプルな)「キャラの出来」なんかの要素についても、ココは先行作に於ける秀逸な方々に比べると如何せんやや見劣りするな…てのがまた正直な感覚なのですよね(何故ならとにかく、ソッチの御仁らは諸々とごく「分り易い」から)。 結論、悪いトコロばかりではない…とは(確実にそう)思うのですケド、この時代のホラーとしてはコンセプト自体があまり「巧くいかなそーな」感じだったかな…と思いました。ただ、だからこそ「今作のお蔭で」今のホラーが在る…のカモ…と思ったりもするのですケドね。 [DVD(字幕)] 4点(2023-05-03 16:07:54) |
6. フランケンシュタインの幽霊
《ネタバレ》 フランケンシュタインの「幽霊」とゆーのは、文字どおり初代ヘンリーの幽霊のコトっす(まあ、嘘ではない)。今作において怪物役はカーロフ⇒ロン・チェイニー・ジュニアに替ってますが、劇中台詞はほぼ無くて、かつ見た目は思い切りカーロフ版に寄せているので、心配してた違和感とかは特に無かったです。でも、前述どおりヘンリーの幽霊が出て来たり、で彼の息子ルドウィグ役もサー・セドリック・ハードウィックだったり、またイゴール役のルゴシも引き続きガンガン出まくってますし、そんなこんなで正直あんまり主役の怪物フランケンが目立ってねーのですよね(特に中盤は全く…と言って好いレベルで)。んで結局、ゴチャゴチャと陰謀とかサスペンスとかみたいな話になっちゃってるのは、個人的にはホラーとしては全く好みではねーのですわ(やはり、ソレは「看板に偽り有り」というコトにしか見えないのでして)。ラスト付近はまた結構派手に燃え盛ってて悪くはなかったですケド、結論的にはイマイチでしたっす。 [DVD(字幕)] 4点(2023-04-27 00:18:31) |
7. 桃太郎 海の神兵
《ネタバレ》 言い尽くされているコトでしょーが正直観てビックリ!という作品なのは間違い無いと思いますね。それは、現在のアニメとの「流儀の違い」と同時に、で在りながらの(もはや普遍性とも言える様な)クオリティの高さ、にだと思います。ディズニーの『ファンタジア』も参考にしたとのコトで(日本での正式公開前なのですが、戦地で接収したフィルムを今作のスタッフは観るコトが出来た…とのコトで)まずは秒間24コマのフル・アニメーションでもありますし、また近年のアニメに比べても同じ画面中で動くモノが終始やたら多かったり、作画が面倒な画面の「奥⇔手前」の動きもまたふんだんだったり、一方で静止画のシーンやバンクはごく僅か…という(逆に小細工をまだ知らないが故の)正真正銘の真っ向勝負!が全編実にゴージャスに感じられました。 ただ、そのまた一方で、コレも全編で非常に工夫された凝った構図の数々やシンプルながら高品質なキャラデザイン、そして(コレも『ファンタジア』を模してのコトであるが故の)比較的ボリューム有るミュージカルシーンをはじめとして、シーンごとの「見せ場」とゆーのも結構多様だったと思いました。当初の製作意図はどーあれ、全編実に「心」の込められた作品だと思います(その戦意高揚の為の要素とゆーのも、個人的には予想よりもずっと控えめだった様に思います)。この作品が後世に残されたコトには、素直に感謝したいと思いますね。 [インターネット(邦画)] 7点(2023-04-10 18:06:07) |
8. 若草の頃
《ネタバレ》 マーヴィン・ルロイ版『若草物語』は1949年製作ですが、同年末には日本でも公開されたとのコトなのです。翻って本作、製作こそ先立つことの1944年ですが日本公開は1951年になってからで、なのでタイトルがこの感じなのはそれ故に…とゆーコトなのでしょう。確かに、ミュージカルと一般映画という大きな違いこそあれ、両作は登場人物の構成などもかなり似通っていますし、何よりも作品が描こうとするモノにこそ大いに共通する部分が見て取れます。すなわち、両作はどちらも「家族の愛」や「人と人との繋がりに生じる喜び」といったごく普遍的な価値観を温かくノスタルジックに描いてゆこう…という作品だとは確実に言えるかと思うのですね。 本作は『若草物語』に比べれば(ミュージカルらしく)ドラマ部分はごくハートフルで然程シリアスに振れるコトはありません、が、ただ明るくコミカル…というワケでは決してなくてシットリやホッコリ、或いはジーンとするシーンも在って、ごく楽しい作品であると同時により深い見応えとゆーのも決して『若草物語』に勝るとも劣らないモノかと思います。その本作の中で、ジュディ・ガーランドは正に彼女の生涯ベストアクトと言っても好いレベルの(諸々の)パフォーマンスを披露していますが、その内で演技にもごくバリエーションが豊富で、彼女の様々な人間性の側面を感じ取れるという意味ではまず非常にお得感とゆーのもありますね。他の役者も、実に可愛らしい末の妹も然ることながら家族の面々も総じて優れた出来で(ダンスパーティのダンディな爺ちゃんなんて最高でしたすね)、重ねてドラマ的なクオリティも十分な作品だと思われるのです。 その上で、本作はミュージカル映画としても立派に名作と言って好いクオリティを有しています。ダンスは(ホントの)ダンスパーティシーンが主ですが実に華やかで素敵ですし、そんなコトよりも何より歌(曲)がも~ド級の名曲揃いです。中盤の『The Trolley Song』も完全に名曲!というヤツで大いに好みだったのですが、更にラストの『Have Yourself a Merry Little Christmas』もコレはも~20世紀屈指の名曲!てな感じで、この曲のシーンだけの為にでも本作を観る価値が在ったと率直に感じましたね。重ね重ね、最高(全盛期)と言って好いガーランドの出来も含めて非常に完成度の高いファミリー・ミュージカル・ドラマ映画でありました。必見かと思いますね。 [インターネット(字幕)] 9点(2022-04-14 22:24:18) |
9. 天井桟敷の人々
《ネタバレ》 それこそ十数年振りに観ましたが、流石にハタチそこそこの時に比べれば一番肝心な「ガランスの魅力」にも多少は気付き易くなってたかな…と思います。ただまあ、諸々と結構分かり難いキャラではありますよね。そりゃ確かに美人だけど年増(年代を考えれば大年増)てのは、売れない芸人としてはまあ適切かとも思うのですが、男たちがガランスに片っ端から惹きつけられてゆく様子からはどーみても(若い)只の超絶美人(に対する反応)の様にしか思えなくて、かつ彼女自身のあの奔放さだってどちらかと言えば後者(=只の美人)の方にこそより整合しそう…てなモンで。 他に感じたのは、恋愛映画としてのシンプルさ(=それ故のエッセンシャルで普遍的・永劫不滅なクオリティ)と、それを彩るその他諸々のクオリティの「高尚さ」ですかね。かなり長尺な作品ながらガランスとバチストの2人のシーンとゆーのはかなり限定的で、それ自体が2人の関係性の特別さを好く表現していたとも思います。そんな2人の純愛が描かれる世界(世界観)をつくり込むその他の要素については、まずは脚本(台詞)のハイ・ソサエティぶりに今回少しビックリしました(脚本のジャック・プレヴェール氏は本業は詩人なのですね)。あるいは、都度挿入されていく(主に)バチスタ演じるパントマイム・無言劇の芸術性の高さや、そしてそういった美しく洒落た要素を孕みつつもその他の部分では醜悪なサマを確実に垣間見せる清濁綯交ぜのパリ…が舞台だからこそ、2人の愛の純粋さがより際立って感じられる…ともやはり感じるのですよね。 オーラスは、こんなんもうナンも言えねー!ですわね(コレはもう先にやったモン勝ち!てか)。トコロに依っては恋愛映画史上最高!とすら言われる作品てのは、やっぱ伊達じゃないですね。傑作。 [インターネット(字幕)] 9点(2021-12-31 23:18:23) |
10. ハナ子さん
《ネタバレ》 つい先日亡くなられた落語家・川柳川柳師のそれこそ十八番(とゆーか師は、ほぼこの噺しか演らないという非常に稀有な落語家であった)、史上屈指の傑作(新作)落語『ガーコン』に因れば、戦中に広く歌われた「軍歌」の曲調とゆーのも、戦局に応じてまた変化していった…とのコトである。連戦連勝だった開戦当初は当然の如くに威勢の好かったものが、次第に負けが込んでゆくに連れて段々と重く暗くなってゆき…という次第だ。更にのち、終戦間際は逆に妙に暢気な曲ばかり流れていた…とゆーのも、師の言だったかは定かでないがコレも何処かで聞いたエピソードだったと記憶している。 徹頭徹尾明るく長閑で笑いの絶えない本作であるが、コレは上述における「余裕」を意味するものか、それとも既にして「末期的」様相を呈しておるものか、どちらであろうか。その意味でゆーと、私が常々思案しているとある事柄として、それこそ例えばホラー映画とゆーのが巷で繁盛している…てのは、逆説的にその社会が健全であることを意味しているというひとつの視点である。つまり、現実がホラー映画以上の「恐怖」と化してしまった人とゆーのは、ホラー映画なんか決して観に来たりはしないというコトなのだ。その視点からすればやはり、今作の底抜けの明るさとゆーのは(既に1943年初頭にして)コレも逆説的に当時の世相の暗さ・不健全さを如実に示している様に思えて仕方が無い…のであって、今作も中々、今だにただ楽しく観れるという作品ではないかな…とゆーのが率直なトコロではありますね。 しかし、一方で本作に描き込まれる家族の情景(或いはその「幸福」)というモノには、だからこその切実さ・真実味が確かに籠められている様にもまた思われるのですね。ラストなんかも、ハナ子が実際に泣いているシーンとゆーのはそれこそ検閲によってカットされてしまった…とのコトですが、それでも尚、ハナ子が実は泣いているという「事実」自体は、轟夕起子の演技を通じて確実に我々にもひしひしと伝わってくるのです。ひとつの「時代」を確かに投影した映画としては、本作もまた小さくない価値を立派に備えている、と言えるのではないかと思いますね。 [インターネット(邦画)] 6点(2021-12-30 18:05:17) |
11. ミルドレッド・ピアース
《ネタバレ》 なかなかジョーン・クロフォードの(見た目の)全盛期の映画とゆーと、正直観る機会が無かったのですが、その意味では今作は比較的良いタイミングの作品で、彼女の類稀な美人ぶりが(まだ)冴え渡っている、と言っても好いのではないでしょーかね。彼女はまた今作でオスカーも獲得していますが、その凄みの有る(どちらかと言えば冷たい)美貌に違わぬ鉄の様に「強い」女を率直に言って好演しています。時代も考えればかなり特徴的なキャラだと言って好いかと思いますね。周りの男たちとゆーのが総じてだらしなさ過ぎる、とゆーのは確かなのですケド、彼女はその誰もと対等以上に立ち回り、才覚を発揮して経済的には特に男どもも顔負けに見事な振舞いを見せて…ただ、少し彼女のキャラのつくり込みに物足りなさがあったのが、その強い部分とゆーよりは弱点の方、つまり、娘を含めて何故彼女はこーまで人間関係にトラブルを抱え続けるのか、というその理由の部分ですね。なんとなく分かる様な気もしなくもないのですが、特にヴィーダが何故あーまで人格破綻者の様な有様に育ってしまったのかとゆー部分には、少なからず観ているコッチも引っかかるモノがあるとも思うので、その「ワケ」はもう少し分かり易く描かれた方が好かったと思います。そこそこビックリかつ悲劇的な結末も含めて、重厚なネガティブ人間ドラマとしては見応えは完全に十分です。良作。 [DVD(字幕)] 7点(2021-10-06 18:05:49) |
12. ヤンキー・ドゥードゥル・ダンディー
《ネタバレ》 戦意高揚映画とのコトで、描かれるのは古き良き「アメリカの価値観」と、正にソレを体現する様なジョージ・M・コーハンの波瀾万丈一代記なのです(一点の曇りも無いアメリカ万歳!映画すね)。ただ、彼の物語として本作を観る限り、常に家族や仲間と志を共にして歩んだ彼の人生とゆーのは確かにそういった価値観を大いに体現するものであった、とは十分に感じられるのですね(=上っ面だけのプロパガンダ映画では全くないかな、と)。才気煥発な男ではありますが、相当に頑固で我の強烈なトコロも含めて決して弱点・欠点の無い人物だというワケではないと思うのです。ソコを、家族や仲間と支え・支えられするコトでむしろ短所を長所にも変えてゆけたとゆーか、その部分は彼の奥さんが言う様に「あなたには誰かがついていないといけない」というコトだったのかな、と思いました。なんとゆーか実に微笑ましく、そして羨ましい人生だと感じますね。 特にイイな!と思ったのはその奥さんとのワンシーン。大女優フェイに自作の劇に出演してもらうためアピールしに行くのですが、奥さんに歌わせたい曲"メアリー"は彼女には渡したくない、その彼の葛藤の様子に垣間見える確かな家族想いの側面(そしてやはり芯の通った側面)と、結局そのコトをごく明るく快く受け入れる妻の「彼女は歌を取って、私は貴方を取った」という洒落た返しも含めて、私も実に心地好く爽快に観ていましたですね。加えてその後、フェイが件の歌を舞台で披露するシーンも好かったですね。奥さんを演じるジョーン・レスリーもそこそこ歌は巧いのですケド、フェイ役のアイリーン・マニングは更に一枚上手とゆーか(彼女は確実に声楽的なトレーニングを積んだプロですね)、そのコトが妻の決断の正しさ・聡明さを顕かにしているし、歌唱シーンとしてもより感動的なモノに仕上がっていると思いました。ここの流れ、スゴく好きですね。 [DVD(字幕)] 8点(2021-10-03 03:51:34) |
13. 夜歩く男
《ネタバレ》 無駄とゆーものを限り無く削ぎ落とした、混じりっ気無しのガチンコ・ノワール。身内を殺られた警察の鬼気迫る全力捜査には、いつでもそんぐらいマジメにやれよ、と若干ながら溜息も出そうになるものの、リチャード・ベイスハート演じる犯人の意外なまでの狡猾さ・凶悪ぶりを見せつけられれば、(ちょいと詰めが甘いのがだいぶん気にはなるケドも)警察やったれ!と何やら鶏冠に昇って来るのも必然か。ラスト、ベイスハートは小柄なのもあってスルッとまた排水溝から地下に逃げてしまう、そっから先は『第三の男』で観たよーな地下の追っかけっこだが、今作の方が1年先行の作品なのですね。催涙弾からの集中砲火で哀れ凶悪犯は蜂の巣に…キレの好いラストにもまた、実に無駄が無い。良作。 [インターネット(字幕)] 7点(2021-08-09 01:55:53) |
14. カバーガール
《ネタバレ》 戦前の作品ながらカラー作なのが嬉しい今作では、何と言ってもうら若きリタ・ヘイワースが正に全米の恋人と言うべき素晴らしい風情。カラーだから実に見映えのする燃える様なご自慢の赤毛に加えて衣装も結構凝っていて、そこら辺からもルックスは完全に申し分無いと言える。しかし、それでいて踊りも歌も驚くほどに達者なのだから、コレにはもうグウの音のグの字も出ない。相手役ジーン・ケリーも(ごく爽やかなルックスも然ることながら)こちらも踊りは相当に上質で、中盤の別撮りを合成したシーンなどは流石だな~というハイ・クオリティ。ミュージカルシーン自体の量もそこそこ豊富で、その点からももう大満足。お話もごく他愛無いケドここぞというシーンの演技はまずまずで、アクセントとゆーのが付けられていてホッコリしながらもシンミリとも出来る。結論、かなり満足出来ましたですね。 [DVD(字幕)] 7点(2021-07-07 21:57:22) |
15. 血と砂(1941)
《ネタバレ》 歌劇『カルメン』のドン・ホセとエスカミーリョをひっくり返した様なお話、とでもゆーか、極めてティピカルな(ひとりの闘牛士の)栄光と転落が描かれる。闘牛のシーンは当然俳優が演じてるワケでもないし、また特に前半の「成り上がり」の部分なんかはシナリオ的な工夫も欠いており、全体としてもそこまで内容に観る価値があるとも率直に思えないのだが、実際にはそこそこ以上に面白く観れてしまった…とゆーのがやはり俳優の質に要因あるトコロかと思う。 主人公フアンを演じるのは名優タイロン・パワー。才気を存分に迸らせつつ如何にも誠実そうでもありながら、この手のファム・ファタールに容易に惑わされそうという雰囲気も十二分で、ハマリ役である(『情婦』のイメージが頭の中にあるからかね)。そして肝心の妖婦ドニア・ソルを演じるリタ・ヘイワースはこちらも流石の妖艶さであるが、これと相対すべき正妻カルメンを演じるリンダ・ダーネルの美貌と風格がまた見事であった(これで弱冠17歳とゆーのは、少し驚きである)。闘牛と恋の双方でフアンを出し抜いてゆくライバル・マノロを演じるアンソニー・クインも、チョイ役ながら20代の爽やかさと「喰えなさ」を巧みに醸し出す存在感ある仕事。主人公に先んじて悲劇的な最期を迎えてゆく同僚ナシオナル役は、ジョン・キャラダインがこれも重厚な演技で担っている。 もう一人、主人公の母がこれも単なるチョイ役かと思いきや優れたキレと深みを兼ね備える演技で、地味に凄えなと思ったらこれがサイレント時代の伝説女優・ナジモヴァであった。やっぱ伝説ともなると色々と「違う」もんである。 [インターネット(字幕)] 7点(2021-06-02 23:46:10) |
16. いちごブロンド
《ネタバレ》 戦前~戦中あたりの古い映画の中でも、とりわけ観てホッとできる作品、とでも言いましょうか(『素晴らしき哉、人生!』的な)。決して器用だとは言えないけれどごく誠実なジェームズ・キャグニーとオリヴィア・デ・ハヴィランドが、結局は最後にささやかながらも真の幸せを手にする、此処に在るのはシンプルな人間性への称賛と信頼です。全編通してラブコメ描写も非常に微笑ましく、それでいてやるコトなすコトジャック・カーソンに出し抜かれるキャグニーの様子には、少しばかりの人生の口惜しさというモノと、それ以上に「頑張れ!」という意味での力強い共感を覚えることが出来るのです。 キャグニーの憎めないキャラも抜群でしたが、女優2人がとにかく出色な作品でもあります。「いちごブロンド」ことリタ・ヘイワースはサバサバとした小悪魔的女子を実に爽快に演じていましたし、ルックスも色気・品の好さ・若々しさ等をバランス好く兼ね備えた素晴らしいものでした。しかし、今作の主役は何と言ってもハヴィランドの方。こちらは清楚さに全振りしたエレガントな佇まいが正に絶品です。それでいて中盤、ちょっと気取って自由奔放な女を装う場面なんかは対照的に背伸びした少女的な可愛さを振りまいて、ココって私ホントに大好きですわ。女優さん目当てでぜひ観てもらいたい隠れた秀作です。 [DVD(字幕)] 7点(2021-05-31 23:42:11) |
17. 大いなる罪びと
《ネタバレ》 面白い。賭博(とそれによる堕落・破滅)をテーマとするシナリオは一見比較的シンプルに見えるのであり、中盤、グレゴリー・ペックが大勝ち→調子に乗ってスッカラカン、くらいまでは「だ~から、言わんこっちゃない!」てな感じで(ここまででも十分面白いケド)よくあるヤツとして観てたのですが、そっから先が更に二段ぐらいまた面白いというか、尻上りにどんどん面白くなってったという感じでしたね。賭博者はカネと同時に「魂」をも賭けている、という台詞が身に沁みます(賭けても何も「実の在る」見返りは無いのかも知れませんが)。 演技面でも、脇役からしてコレがウォルター・ヒューストン、メルヴィン・ダグラス、エセル・バリモア、アグネス・ムーアヘッドと綺羅星の如く豪華で、実際の演技もいずれも実に申し分無い。エヴァ・ガードナーもこれまた最高に美人。ただ、何と言っても今作は主演のペックの抜群さでしょう。上品で澄ました前半の出で立ちからの、尾羽打ち枯らした無様な後半に漂わせる哀愁は絶品でしたすね(特にその虚ろな目が素晴らしい)。コレを観ずしてギャンブル映画を語るなかれ。 [DVD(字幕)] 8点(2021-04-29 13:16:07)(良:1票) |
18. ドリアン・グレイの肖像(1945)
《ネタバレ》 シンプルかつ静謐な雰囲気、そして終始能面の様に無表情なドリアンの様子は、ゴシック・ホラーな文芸映画として原作の持つ文学的な趣を最も的確に作品に取り込んでいる様に思われます。 特に、本コンテンツが描き出さんとする「恐怖」の本質的な部分の表現は的確だったと思います。自らの魂の堕落が具現化・可視化されるということの苦悩と、そしてそれに伴って自分の肉体の方が虚構・抜け殻と化すことの恐怖というものが本作からは大いに感じ取れたというか。その意味でも優れた文芸映画だと言ってよいのではないでしょうか。 前述どおり全体的には非常に静かな作品でショック描写等も控えめですが、肝心のその場面だけカラーにしてハイライトした肖像画の醜悪ぶりはかなり鮮烈でした。画自体の芸術性というものもかなり高く、これも好かったと思います。 [DVD(字幕)] 6点(2021-01-18 19:09:09)(良:1票) |
19. 大雷雨
《ネタバレ》 コレは面白いな~豪華キャストが織りなすシンプルな三角関係が描かれますが、三人ともがごく善人で、それぞれが互いを思いやった行動を取ってはゆくものの、しかし愛というものはそういった論理や倫理を超えていってしまう…とでも言いますか。前述どおりキャラがいずれも魅力的なぶん、徐々に不穏さを増してゆく展開にはどんどん引き込まれてハラハラしながら観れましたし、クライマックスなんかはもう釘付けでしたね。”イケメン”ジョージ・ラフトが結局イイ所をかっさらってゆく結末には、この世で唯一絶対の理は「カッコ好いは正義」なのか!と非モテの私などはそこはかとなく不満も覚えましたが、それでもエドワード・G・ロビンソンにも哀愁を纏わせてこちらもカッコ好く送り出してくれる粋なラストはかなり快感でもありました。マレーネ・ディートリッヒの風情も素晴らしかったですし。 でもな~個人的にはハンクに幸せになって欲しかったな~中盤の朝食のシーンなんかスゴイ感じ好かったじゃないですかー(だからこそ、ラストの哀愁が絶品なワケですケド)。 [DVD(字幕)] 8点(2021-01-14 23:59:33)(良:1票) |
20. ファンタジア
《ネタバレ》 アニメというのは「動く画」だと思うが、重要なのは「動くこと」なのか「画」なのか、というのは答えの出ない問いかも知れない。私見だが、日本のアニメというのはどちらかというと「画」であることを重視しているようにも思う。もちろんそれは「画を動かす」ということが必要とする多大な労力を鑑みての謂わば消極的な第二の経済的選択肢として、止まった画の中にも動きを取り込む、だとかいった方面の表現技法の方を磨いてきた、ということもあるのかも知れないし、(それも日本アニメの発展と決して無関係ではないだろうが)本邦における漫画文化の独自の発展も影響しているのだろうし、あるいは何らかの日本人的感性、静の中に動を見出す、といった価値観がそうさせた、のかも知れないと思ったりもする。それに比べれば(それは本作を観てもそう思うトコロであるが)アメリカのアニメというのはやはり「動き」だなあ、と思う。アメリカ産のそれがより簡単に動かすことの出来るCGに偏重していったのも然もありなん、とは本作を観ても実感できるのである。それこそ、かつてNHKがこの『ファンタジア』を模して製作した番組『音楽ファンタジー・ゆめ』がこれもCGアニメであったことからも察せられる様に。 その観点からすると本作の凄さというのは、「画」を芸術的な画のままに「動かす」というそのどちらにも何らの妥協もしていない点だろう。原画100万枚!という無理難題を持ってせねば実現できぬこのクオリティは、もはやオーパーツであり、またロストテクノロジーだと言ってよい。今後これを超えるものは恐らくないだろう、という意味では、これも恐らく永遠に歴史の頂点にある作品であることにも間違いが無いし、可能性、という意味で日本のアニメでこれを超えることが出来たかもしれない唯一の作品『かぐや姫の物語』ですら、惜しむらくこれも50億を費やしてさえ今一歩の完成度の不足に泣いた、というその事実が、むしろ如何に『ファンタジア』が異常な作品であったのかを示している様に思えてならない。 どれも素晴らしい作品の数々ではあるが、一つだけ選ぶとすれば個人的には『はげ山の一夜』を推したい。とにかく魔人がカッコいいコト!雄々しく、禍々しく、そして確実にどこか美しい。画自体の質・動きのダイナミックさも素晴らしかった。私はこれが一番お気に入り。 [インターネット(字幕)] 8点(2021-01-06 21:05:14)(良:1票) |