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1.  暗い鏡 《ネタバレ》 
殺人殺人事件の容疑者として浮かんだ若い女。彼女は一卵性双生児で瓜二つの姉妹がおり、日頃から時折入れ替わっても誰も気づかないほどだった。したがって、事件についても「どちらが犯人かわからない」という目くらましに警察もお手上げとなり、完全犯罪となる様相へ、というひねりの利いた脚本が申し分ない。  そして打つ手に困った警察から姉妹の心理分析を依頼された気鋭の精神科医が調査を進めるうちに姉妹との三角関係にはまっていくとともに、姉妹の潜在的な人格の対照性が浮かび上がっていく。それが、片や謙虚で社交的で誰からも好かれる常識人、片や自己主張が強く、かつ殺人も辞さないサイコパスという戦慄の対立模様。しかもどちらが姉でどちらが妹なのかも謎という、この背筋を凍らせるような緊張感が本作を他のフィルム・ノワール作品の追随を許さないサイコ・サスペンスの傑作に仕立てている。  以上のような双子姉妹の織りなす色濃い愛憎劇の立役者が他でもないオリヴィア・デ・ハヴィランドである。双子姉妹の二役を演じる彼女の演技が圧巻といえるのは、表面にあらわれる双子姉妹のキャラクターの対照性としては「白か黒か」というほどの明瞭なものではなく、「ちょっと片方が我が強いな」というくらいのさじ加減をきっちり表現してみせたことである。掛け値なしにこの人の演技力には恐れ入る。本作でオスカーの候補に挙がらなかったのが不思議で仕方ないほどである。  そして驚くのが、約80年前の作品でありながら、姉妹が同じ画面の中で語り合ったり、肌に触れ合ったりという場面が全く違和感がない合成技術の見事さ。  加えて、この作品の制作時は精神医療がまだ過渡期にあり、「精神病」といえば社会から差別や監視の対象とされた時代であることを考えれば、正面からこのテーマを取り上げた果敢な精神も評価したい。  もっと光が当たって然るべき逸品だ。
[DVD(字幕)] 10点(2025-05-06 06:24:14)
2.  夜歩く男 《ネタバレ》 
 数あるフィルム・ノワールの中では貴重な実録犯罪もの。  ロサンゼルスで起きた警官殺しの犯人を総力を上げて突き止めようとするロス市警。そんな警察の死に物狂いの奮闘をあざ笑うかのように捜査網をすり抜けて犯罪を重ねる百戦錬磨の(といっても若いが)主人公。  この男、凶悪だが冷静沈着で頭脳が冴えまくった知能犯(メカにも強い!)で、警察の動きをすっかり読み取り、決して無謀な動きには出ないので、警察もなかなか尻尾が掴めない。この焦燥感が爽快ですらある。  特筆すべきは、科学的捜査がまだ発展途上の段階にあった時代、銃弾の鑑識や犯人のモンタージュ(ただし似顔絵)作成といった当時として最先端であろう捜査のプロセスが克明に描かれている点である。このあたりは警察の事件ファイルに依拠して入念に作り込まれた充実感がある。  そして主演のリチャード・ベイスハートが美男ながらも時折みせる、自らの孤独を美酒を味わうかのような気色の悪い笑顔と、何を世間に対して怒っているんだろうという得体の知れない禍々しいニヒリズムを表現して絶妙である。ただし、動機も含めてこの犯人の人間像の掘り下げがほぼ無に等しいのが物足りなくはある。そこはこの映画の趣旨がロス市警の尽力による犯人追及に重きを置き、センチメンタルな展開に流されまいという制作側の意図の表れとみるべきか。  また、多くで指摘されているように、主人公のアップや自室、そしてラストの地下排水路における光と影を駆使した緊張感溢れる映像美も秀逸である。  あっけない結末といってしまえば身も蓋もないが、主人公に絶命の寸前で何か一言喋らせてほしかった。  
[DVD(字幕)] 9点(2025-03-29 03:34:03)
3.  レベッカ(1940) 《ネタバレ》 
 ヒッチコック作品の中でも、舞台と登場人物の設定に「暗さ」という点で十分な念の入ったサイコ・スリラーとして随一といえる。  若き富豪の再婚相手に見初められた、都会的な美貌ながら垢抜けない青臭さの残る主人公の「私」。彼女は目を見張る大邸宅で夫と暮らすことになるが、夫の亡き前妻の底知れぬ威圧感をたたえた影に悩まされる。その亡妻レベッカの影を増幅して「私」を恐怖の谷に叩き込む、亡妻に忠実だった筆頭女中の凍てつくような冷たい圧迫感が凄まじい。  そんなウワバミと対峙していくなかで「私」は情緒不安定な夫を支える強い「妻」へと成長していくのである。  天下のヒッチコックだけに、序盤で思わぬ玉の輿に乗った「私」の可憐な笑顔を見ても、「きっとこの先に大なり小なり不幸が待ってるだろうな」と予測させる、ある種の倒錯感がまたたまらない。  前妻への未練を断ち切れない夫のマキシムには、夫婦としての愛情というよりは出来過ぎて持て余し気味だった妻へのコンプレックスが見え隠れし、それが後半の主題となる「妻殺し疑惑」の伏線となっているように思える。そこにはまた英国上流社会ならではの家父長制的な家族関係のあり方もうかがえて、本当にこの作品は奥が深い。  弱冠22歳で、レベッカの幻影に翻弄される痛々しさと、それを振り払うようにマキシムへの愛を貫こうとする一途さを鼻につくことのない適度なエネルギーで表現してみせたジョーン・フォンティンは天晴れではないか。  そして、予想だにしなかった壮絶なラスト。炎に包まれる屋敷に籠るレベッカと筆頭女中の戦慄溢れる怨念にとてつもない鳥肌が立つ。  これからも何度も観て、そこにある恐るべき魔窟に陥る楽しさを味わいたいと思わせる逸品だ。
[DVD(字幕)] 10点(2025-03-26 03:38:59)
4.  闇の曲り角 《ネタバレ》 
 ニューヨークで探偵事務所を営む主人公。彼には、かつて冤罪で2年服役した過去があった。その彼が何者かにまた罠にはめられようとしていた。黒幕の顔は全く見えてこない。そしてその裏には、かつて彼を陥れた憎き男の存在が絡んでいた――。  後半、殺人容疑を晴らすべく敏腕秘書とタッグを組んで黒幕の正体を追及していく過程はなかなか実を結ばず、まさに主人公が吐き捨てるように到着点のみえない「曲り角」の連続で観る者をヤキモキさせてくれる。この焦燥感こそがフィルム・ノワールの醍醐味だ。  探偵ものによくあるようなスーパーマン的な探偵が快刀乱麻を断つという展開ではなく、どちらかといえば後手後手に回りっ放しで窮地に追い込まれていき、自暴自棄になりがちな主人公を可憐に勇ましくサポートする秘書の魅力が光る。  ラストは無理矢理に幕を下ろした感があるものの、全体を通してテンポが良く、加えて光と影の案配、小道具の使い方、「ワード」に隠された謎、さらに男女の色恋の罪深さ・・・とサスペンスの要素が詰まった逸品だ。
[DVD(字幕)] 9点(2025-03-21 03:20:18)
5.  恐怖のまわり道 《ネタバレ》 
 久々に二度目の鑑賞。フィルム・ノワールの隠れた傑作だ。70分に満たない短尺で十分にハラハラドキドキの起承転結を味わわせてくれる。  物語は主人公がカフェの席で沈鬱に吐き出す回想の形で進んでいく。  恋人に会いに行くためアメリカを東から西へと大移動しようとする主人公は貧窮なためヒッチハイクという手段をとる。これが彼の運命を盛大に狂わせる元凶となる。そして運転していた車の持ち主が車中で突然死し、主人公は殺人と疑われるのを恐れて、その男になりすますという苦肉の策に出る。だが、その先でヒッチハイクで拾った謎の女がさらなる災難を呼び寄せることになる。  律義さがことごとく裏目に出る、とことん運のない男である。観ている側は自然に「そこはこうした方がいいだろ?」と思う場面で見事に(?)その逆の行動パターンを重ね、自らを窮地に追い込んでしまう展開は手に汗握るスリルに満ちている。ただ、せっかく結末で用意されたどんでん返しが、主人公のハッピーエンドに結びつくことなくアッサリ後景に退いてしまうところは、軽く説明が欲しかった。  そして何といっても、凄まじい眼力と圧力で主人公を振り回すファムファタール役、アン・サヴェージの存在を抜きにしてこの作品は語れない。サディスティックな性悪女でありながら、ひたすら闇に向かいがちな物語に妙に陽光を差し込む役目にもなっているのが彼女である。  主人公の不運を高見の見物で眺めつつも、「自分が主人公の立場だったらその時どうする?」という心理テストを突きつけているようで、80年経った今日でも色褪せない緊張感と面白さが短尺に詰め込まれている逸品といえようか。
[DVD(字幕)] 9点(2025-03-16 15:33:15)
6.  野良犬(1949) 《ネタバレ》 
 十数年ぶりに観たが、やはり黒澤作品の中でも抜きん出て同時代の社会そして人間のスケッチが素晴らしい。闇市や復員兵もそうだし、共犯者を押さえるためにプロ野球の巨人-南海戦に刑事たちが張り込む場面では、現役時代の川上哲治の打棒が観られるのもお得感。  物語のタテ糸は、終戦からまだ間もない混沌とした時代、掏られた拳銃を強盗殺人事件に使われたことで苦悩する新米刑事が、拳銃と犯人の行方をベテラン刑事と協力してまさに「犬」のように這いずり回って追跡していく中で警察官としての責任意識、職業倫理を体得して成長していくというところにある。  そこにはまた「新米は先輩の言う通りにしていればそれでいいのだ」という儒教的なパターナリズムも見て取れるし、そして「戦争」によって人生を狂わされた者と、狂う寸前で踏みとどまった者との「モラルの持続」における対照性が色濃く投影されている。 ただ、三船敏郎が風格満々で新米刑事にみえないというのもご愛敬だが、やはり三船の精悍で雄々しい風貌と緩急自在の身のこなしは惚れ惚れする。  黒澤作品における犯罪サスペンス映画の金字塔として『天国と地獄』が挙げられるが、途中で犯人の顔が明かされる『天国~』に対し、本作は最後の最後まで犯人の顔を見せないところがひときわスリリングな演出でとにかく息を飲む。  そして主人公と犯人が対決する時に近所から流れる悠長なピアノの音色。犯人をようやく捕らえた時に犯人の放出する盛大な嗚咽。さらに被さるのが登校中の子供たちの天真爛漫な歌声。こうした「不穏」と「平穏」との絶妙なコントラストを表現する演出の妙。  そこには、苦難を乗り越えて陰鬱な連続殺人事件を片付けた後に訪れる、えもいわれぬカタルシスを感じさせる。  また、この時代の地道ながら綿密な犯罪捜査の過程についても行き届いた描写がなされていて実に面白い。  作品の設定と同じく、うだるような真夏に鑑賞するのも一興だろう。
[DVD(邦画)] 10点(2025-02-26 05:23:33)
7.  毒薬と老嬢 《ネタバレ》 
 優しくて面倒見もよく、近所では聖女のように敬われている二人の老女が、13人もの老人男性を殺して屋敷内に遺体を眠らせている、希代の殺人鬼であった――。と聞けば、『サイコ』や『悪魔のいけにえ』も真っ青の恐怖ホラー映画と思いきや、その実は風刺やトンチの利いたドタバタ・コメディである。  第二次世界大戦もいよいよ大詰めとなる1944年、日本であれば国策映画しか製作を許されない非常時に、こんなに素っ頓狂な映画が撮れるというのは、さすがは自由の国アメリカならではと感心してしまう。  この時代、まだ高齢化社会の到来という緊迫感はなかったにしても、老人の孤独感と閉塞感というのは次第に米国社会でも問題視されていく流れが生れていたのかと感じる。  とにかく奇人変人大集合であるため、主人公ケーリー・グラントが負けじと奮闘している。グラントがここまで目をむき、奇声をあげ、ズッコケまくる役どころも珍しいのだろうが、長身でスマートな美男がとってつけたように過剰なコメディ演技でたたみかけてくるのが、途中で食傷気味になる。元々のキャスティングであったというボブ・ホープなら、もっと肩の力を抜いた自然体でドタバタを演じてくれたのではないか。
[DVD(字幕)] 7点(2025-02-18 07:14:18)
8.  女相続人 《ネタバレ》 
 近代国家は婚姻の自由を個人の権利として認めるようになった。しかし、やはり現実の家庭では家長の承認がなければ、いかに相思相愛だろうと結婚はかなわなかった。19世紀中葉の米国でも、少なくとも上流階級の家庭ではそれが当然であった。  裕福な家庭に生まれた主人公キャサリンは、容貌は人並み以上であるが、性格は暗愚で非社交的な娘である。そんな彼女が一途に愛する相手はどこの馬の骨ともわからぬ無職の青年モーリス。そんな二人の結婚を断固として認めない父親。家父長制の観念が根強い日本人には共感しやすい設定である。 実は財産目当てで近づいてきたモーリスの真意を見抜けず、キャサリンは父の反対も押し切って婚約しようとするが、結局は見捨てられる。  ここからが本作の見どころである。大きく傷ついたことでキャサリンは、うぶで純情可憐な娘から、ふてぶてしく冷厳な女性へと変貌を遂げていき、自分を騙した男に痛烈な報復を食らわせるのである。このプロットはその後、どれほど多くのサスペンスドラマで模倣されてきたことか。  また、キャサリンが覚醒するきっかけが、余命いくばくもない父から「お前は何の価値もない娘だ」と卑下された時であった。その際も、キャサリンは衰弱していく父に対し、これまで溜め込んできた父への反発を一挙に吐き出して追い詰める。ここには、近代の個人主義が浸透しつつある時代において、娘の自立志向が家父長制の崩壊を呼び込むという構図がはっきり示されている。  104才という驚きの長寿の末にみまかったオリビア・デ・ハビランドは、訃報では判で押したように“『風と共に去りぬ』の”という枕詞が付けられていたが、2度目のオスカーを獲った本作がもっと語り継がれるべきである。それにしても、この人は笑っている時も眼が笑っていない。ベティ・デイビスのようなあからさまに毒と色気を含んだ目とはまた異なり、人の心を見透かしたり試しているかのようなささやかな底意地の悪さが感じられる。  そんな彼女からモーリスが痛烈なしっぺ返しを食らうラストは悲痛にして爽快。こういう幕の下ろし方で魅せるのも希代の名匠ウィリアム・ワイラーならでは。
[DVD(字幕)] 10点(2025-02-18 06:43:05)(良:1票)
9.  小原庄助さん
 何度観てもとおかしさとぬくもりを感じる名作だ。  ムラ社会における人情ともたれ合いが紡ぎ出す「共同体」の構造がユーモラスに描き出される。  「小原庄助さん」といえば、民謡『会津磐梯山』でおなじみ。「朝寝朝酒朝湯が大好きで、それで身上潰した」「もっともだ、もっともだ」と歌われるように“放蕩の権化”というべきイメージが独り歩きしているが、単純に考えれば、ギャンブルや女遊びに耽るのでないなら「朝寝~」くらいで身上潰れないだろう。  本作の主人公は旧家の大地主で村人から「小原庄助さん」の愛称で親しまれているが、戦後の農地改革で一気に左前になってしまった。にもかかわらず、野球、ミシン、ダンスなど習い事教室など農村の文化振興に借金までして積極的に寄付をするなど建設的な金の使い方に余念がなく(客人が来たら必ず酒をふるまうのは散財かもしれないが)、決して放蕩にうつつを抜かすような人物ではない。  その篤志家ぶりに加え、何より名家の出ということから村人から村長選挙に推されるも、これを固辞するように政治的野心もない。というよりは、「人柄」より「家柄」が立身出世の源となっていた従来の日本社会が敗戦後になってもはや転換してしまったことを彼は理解していたのである。  大河内傳次郎の現代劇というのはかなり貴重。その彼が抑えた演技で旧態依然にみえる農村社会にも押し寄せる「戦後改革」の波を屈託なく体現してくれる。  思わず吹き出しそうなエンディングの粋な遊び心も素晴らしい。
[DVD(邦画)] 10点(2025-02-14 02:25:04)
10.  三人の妻への手紙 《ネタバレ》 
 経歴も性格も見事なまでにバラバラで、まさに三者三様の結婚生活を送る人妻三人組。アディという女性から三人に宛てられた「あなたたちの夫の誰か一人と駆け落ちする」という不穏な手紙に面食らい、おのおのの“思い当たるふし”が順番に回想シーンとして丁寧に描かれる。  騒動の張本人アディの姿を最後まで見せず、伝聞だけで想像をかき立てさせる脚本も素晴らしいが、この作品の一番の魅力は3組の夫婦が縦横無尽に繰り広げる会話であろう。とにかく機知に富んだジョークから、毒のある皮肉まで、お互いの腹を探り合う言葉のキャッチボールの妙を楽しませてくれる。そしてその会話の端々に、性別、人種、階級、家柄といった出自に関わる人間観の違いが吐露され、戦後のアメリカ社会でもまだ共有されていた価値観(結婚や軍人やマスメディアなどにまで至る)の対立が浮き彫りになるのである。  姿こそ見せないが、常にどこかからこっちを見ているような“恋敵”に右往左往する三人の妻がいずれも魅力的である。また、三組の夫婦を取り巻く人物もしっかり描写されており、とりわけ毒を吐きまくる家政婦のサディは強烈な存在感を放っている。  サスペンスタッチで、かつ人間観察と社会風刺に優れた上質のラブコメディである。
[DVD(字幕)] 10点(2020-07-31 21:20:03)
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