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1.  ロッキー4/炎の友情 《ネタバレ》 
ロッキーシリーズは4が直撃の世代です。私が初めて買った壁掛けのカレンダーが、このロッキー4のやつでした。この時のスタローンの肉体には、ホント惚れ惚れします。あぁ懐かしい。本当に、カッコいい。 シリーズとしては、一番オカシナ方向に行ってしまった感があります。ロッキーはアメリカの成功者として、国を背負って戦います。…いや、ノンタイトルマッチなので、個人的な試合なんですが、国旗のトランクス履いて最後は星条旗を背負ってガッツポーズ。これって、トランプ大統領が目指す『偉大なアメリカ』そのものですよね。確かにカッコいいんですよ。  時代は東西冷戦下。ライバルはソ連の巨人イワン・ドラゴ。解りやすいほど米ソの代理戦争の図式です。オープニングの国旗を模したグローブが衝突して爆発するくらい。あ、このシーン、スローで観ると、ソ連のグローブだけ大破してました。負けず嫌いですね。 アメリカ人が一番燃えるシチュエーションが“復讐劇”です。シンプルにアポロの敵討ちです。これって、真珠湾攻撃を模してるんだと思いました。一方的に敵が攻めてきて、圧倒的火力で、旧式戦艦(アリゾナ=アポロ)を滅多打ちにして帰っていく。先に手を出したのは奴ら。リメンバー・パールハーバー!さぁ反撃だ!! そもそも、アポロが会見場で必要以上にドラゴを挑発したのも悪いのに、そんな事より復讐なんですよ。“先に手を出させて、徹底的に叩き潰す”この国は今も昔も変わらないですね。こういうのが、彼らにはカッコいいんですよ。  過去作と大きく違う点は、ビル・コンティの有名なスコアを使わないで、ノリの良いロックが全編流れてます。このサントラも当時、私の周りみんな持ってました。もちろんダビングしたカセットテープですが、当時の“みんなが持っていた3大洋画サントラ”と言えば『トップガン』『ロッキー4』『オーバーザトップ』…かなぁ? サバイバーの“Burning Heart”がメイン・タイトルだと思うけど、一曲丸々入ってる“No Easy Way Out”も捨てがたい。凄いんですよ、この曲の間、ロッキーはただ、夜の道をランボルギーニに乗って走ってるだけなんです。そりゃアポロの死を悲しんだり、ドラゴへの闘志を燃やしたりしてるんだろうけど、映像は、ランボルギーニと、運転するロッキーと、さっき観たばかりのアポロが負けるシーンと、1~3のダイジェスト。全部アポロ絡みなら解るけど、エイドリアンとのラブラブシーンとか必要性のない回想も入ってます。でもロッキーのイメージビデオとして、カッコいいですけど。  僅か91分の映画に、過去一番の長さのボクシング&トレーニングシーン。過去一番の長さのロックシーン。過去一番の長さの回想シーン。こう書くと、どれだけ内容が薄っぺらいか伝わると思います。更にペッパー君みたいな給仕ロボットまで出てきます。久しぶりに観たとき、このロボットの事すっかり忘れてて、吹き出してしまいました。ボクシングの映画なのに、あれ何だったんでしょうかね? ジェームズ・ブラウン(本人役)にゴルバチョフ(そっくりさん)も出てきて、更に賑やかです。 当時の私は、社会派の戦争映画『プラトーン』にショックを受けてました。そのため、社会派の対極にある、本作のような単純な娯楽映画に対し、何か悪い点ばかりを突いて観ていたような気がします。でも年を重ねると、こういうキラキラしたお祭りのような映画も、カッコいいよね。って思えるようになりました。
[ビデオ(字幕)] 5点(2025-01-29 23:16:46)(良:2票) ★《新規》★
2.  チャイナ・シンドローム 《ネタバレ》 
“The China Syndrome”直訳だと『中国症候群』。「アメリカで炉心融解(メルトダウン)が起きたら、高熱の核燃料は原子炉容器を貫通(メルトスルー)して、地球の裏側の中国まで行くんじゃないか?」って、当時の研究者のブラック・ジョークなんだって。 公開直後にスリーマイル島原発事故(公開12日後!!)があり、映画と原発に、良くも悪くも世間の関心が高まるという相乗効果が生まれています。福島の炉心って、どこに行ったんだろう?  映画の架空の事件・事故が、現実世界の事件・事故とリンクする事があります。'70年代を全盛期に、パニック映画が大ブームで、ビル火災、大地震、航空機事故、豪華客船の沈没…そんな、自分は遭いたくないけど、どんななるか観たい欲求を満たす映画の一環として、多少なりとも本作も話題になったんじゃないかな?って思います。でも本作はパニックモノではなく、隠ぺい工作のサスペンス映画でした。  いい加減に作られた設備に計器。執拗に行われた調査から導き出された『〇〇だから今回の事故は問題ありませんでした』という、結論ありきの調査報告。原子力発電という、ちょっとしたミスで制御不能になる、危なっかしいエネルギーに頼る現状と、イザという時には現場の人が“一か八か”でどうするかを決める。そして事なきを得たら根拠のない安全性の主張。公開から30年以上たって、福島で原発事故の恐ろしさと、この映画と全然変わってない現場任せの対応、結論ありきの調査報告に、安全性の主張。当時とはパソコンと携帯電話があるだけで、やってる事がほとんど変わってないのが怖い。
[DVD(字幕)] 7点(2025-01-27 12:18:09)《新規》
3.  逃走迷路 《ネタバレ》 
“Saboteur”『破壊活動員』。“Sabotageは”妨害工作や破壊活動を意味するんだけど、日本語ではサボる=怠けるって意味合いが強いから、別な邦題にしたのかと。あとヒッチコックの『サボタージュ』('36)って作品があるため、ややこしいから区別の意味もあるんでしょう。  '80年代の中盤に、確か金曜ロードショーとかで放送されたと思います。当時ヒッチコックの作品はよく流れていましたが、私が小中学生の頃、ゴールデンタイムに昔のモノクロ映画を流したのは、本作とローマの休日くらいしか記憶にありません。それだけ有名というか、ヒッチコックの中でも重要な作品なんだと思っていましたが…そんな訳でもないのかな?あの放送は、どのような意図があったんでしょうかね?番組スタッフの“推し”だったんでしょうか?ちなみに私のモノクロ映画デビュー作です。思い返せば、工場火災で友人が焼け死ぬシーンでさえ怖かった記憶があります。当時私は何歳だったんだろう?相当幼かったのかなぁ?でもテンポが良くて面白かったなぁ。  初視聴から20年以上経って、BSで観た時も、内容全然覚えてなかったけど楽しめました。手錠をしたままのバリーが盲目の紳士に助けられるシーンはハラハラしたし、全てを見通してバリーを助けることにしたこと、サーカスの見世物にされている人達が彼らを助けることを選んだのもホロリとさせられます。要所要所で出てくるパットの看板もシャレが効いています。 劇場での映画のセリフとシンクロした銃撃戦や、自由の女神の追跡シーンもインパクトが大きいですね。自由の女神、案外小さいような気もしますが、実物大のセットなんでしょうかね?頭の部分の展望室、あの広さだと現地に行っても混んでて登れなさそう。腕の先まで登れるとは驚き。 ヒッチコックの初期作品って、アイデアがたくさん詰まってて、それを1作品に惜しげもなく注ぎ込んでる感じがして、大好きです。
[地上波(吹替)] 7点(2025-01-27 11:14:37)《新規》
4.  ロッキー3 《ネタバレ》 
ボクサーのヒューマンドラマから、ボクシングのアクション映画に生まれ変わったのが本作からで、シリーズ化されたロッキーのイメージは、この作品で完成されています。 この映画のために創られたサバイバーの『アイ オブ ザ タイガー』は、公開から40年以上経った今でも、ボクシングのイメージソングと言える歌です。オープニングのロッキーの試合ダイジェストと、ノリの良いロックの組み合わせは、当時人気急上昇のMTVにも通ずるものでした。  Ⅰ、Ⅱの不器用でクソ真面目なロッキーが、Ⅲでは饒舌でチャラいキャラクターになっています。Ⅱでも『大金持たせたら、後先考えずロクな事に使わない』姿は描かれていましたが、いつの間にか世渡り上手になっていて、どんどん稼いでどんどん使ってます。ミッキーのマネジメント能力ってとてつもないですね。 子供の頃、映画も観てないのに“ロッキー豪邸”って言葉は知っていたし、奥さんのエイドリアンがどんどん派手になっていくってのも知っていたくらいだから、ロッキーもスタローンも超有名人。アメリカンドリームの体現者。世界のスーパーヒーローでしたね。  このボクシング映画のヒーローが、当時大人気のプロレスラー、ハルク・ホーガンと戦うなんて、もう滅茶苦茶です。近年のバットマンVSスーパーマンとかアベンジャーズ並みの夢の対決を、この時代に実現していました。もちろん世界観がぶっ壊れないようにチャリティマッチって断り入れてますが、思いっきりブレーンバスターとか嚙ましてるし場外に投げ飛ばすし…。もしかしたら、'76年のアリVS猪木(他にも有名な異種格闘戦があったのかもしれない)のガチ試合を、もっとエンタメ寄りに再現してみたのかもしれませんね。 だけどⅠで引退しようかどうしようか、Ⅱで最後の試合だくらいな感じだった中年のベテラン・ボクサーだったのに、どこにこれだけのバイタリティーが??でもヒーロー物として楽しく観させてもらいました。 そして「飛行機だけは勘弁な(※特攻野郎Aチーム)」のコングことミスター・T。この人レスラーもやってたんですね。見た目的にも解りやすいラスボス感。見た目のインパクトが強すぎて、人物像の掘り下げがイマイチで、シリーズを通してのインパクトはあまり高くないように思えます。 でもⅠでは一切使わなかった、ボクサー目線のカメラ(ロッキーから見た自分を攻撃してくるクラバー)が多用されていて、臨場感が増しているのと、自分自身がこんな相手と戦ったら、怖いなぁって思えるようになってます。(※このカメラ位置はⅡで既に使われてます)  「虎の目を取り戻せ」本作品は、当初3部作の完結編の意味合いで創られたらしく、アポロとのライバル関係が、トレーニングを通して友情として昇華する過程は観応えがありました。リズム感の無いロッキーに“こんなのがどうしてチャンピオンになれたんだ?”なんて思いつつも、アポロとロッキーのステップがシンクロする様子や、一緒に砂浜を全力疾走する様子、星条旗のトランクスを貸すところは、観てて心地良かったです。ここのトレーニングのモンタージュでは『アイ オブ ザ タイガー』でなく『ロッキーのテーマ』。ココって時なのに『アイ・オブ~』は掛けないんですねぇ。まだビジネスとしての“あざとさ”が足りない時代とも言えるし、シリーズ物のロッキーらしさを残す演出とも言えます。 試合は…長期戦によるクラバーのスタミナ切れって、イマイチパッとしないんです。試合結果より、最後のアポロとの和やかなリベンジマッチと、綺麗なクロスカウンターがインパクト大です。
[地上波(吹替)] 7点(2025-01-27 10:26:07)《新規》
5.  ジョニーは戦場へ行った 《ネタバレ》 
“Johnny Got His Gun”『ジョニーは銃をとった』。映画の主人公はジョニーではなくジョー。 第一次大戦の志願兵の募集広告“Johnny Get Your Gun”『ジョニーよ銃をとれ』に対する、その結果どうなったか?を表したとも言えるタイトル。 “鬱映画”とか“救いのない映画”として、ネットで度々目にしていて、あらすじから結末まで知ってしまってからの視聴。観終わって気分が悪くなる映画(=いわゆる“胸糞映画”)って、私の中ではあまり評価が高くありません。でも本作は私が思っていたような作品とは違ってて、確かに救いは無いけど、嫌いではなかったです。結末知らないで観た方が良かったかな。  負傷して視覚を奪われたジョーが、腕が無い事、足が無い事、顔が無い事を、徐々に理解していく過程が残酷。心の中で叫んでも誰にも聞こえない恐怖と絶望感。 現実のモノクロの世界に対し、カラーで表現されるジョーの回想と夢。死者を運んでいく列車に兵士たちを乗せるキリストと呼ばれる男。これは夢だろうな。「私が社長、これはシャンパン、メリークリスマス!」鎮静剤の副作用か、恐らくバグってる回想。どこか幻想的な夢の表現が印象深い。  外界との繋がりを持てない中、日の光を肌で感じて昼夜を知り、メリークリスマスの文字から、今日が何日か判る喜び。どうにか接触方法を探るジョーの努力と、献身的な看護婦の触れ合いは、こんな絶望的な状況でも希望を感じさせ、映画の先を観たい気持ちにさせてくれます。うん、観続けるのがシンドイ映画じゃないんですね。  結末が恐怖です。遂に訪れた意思疎通の場。そこには、ジョーのうなづきがモールス信号だと気が付いた士官、従軍牧師、ジョーを生かすことにした軍医、献身的な看護婦、そして軍の責任者が居ます。 でもここが軍の病院で、ジョーは軍の研究のために生かされています。軍はジョーの回復具合を見るのではなく、この植物状態で、人間がどれだけ生きられるか?だけを観るのが目的だったので、彼が意思疎通の図れる、感情ある人間だとは考えていなかったんですね。  この映画の怖いところは、戦争で手足と顔を奪われた事はもちろんだけど、ジョーが意思疎通が出来た事実を闇に葬る軍の決定にあると思います。見て見ぬふりを決める責任者と、それに反対しない・出来ない軍属たち。巨大な組織の隠ぺい体質には、いま話題のテレビ局の問題に通ずるものを感じます。 日の光すら奪われ、死ぬことも許されないジョー。あまりに残酷な『銃をとった』結果に、言葉を失ってしまいます。
[DVD(字幕)] 8点(2025-01-27 09:28:04)(良:1票) 《新規》
6.  恋人までの距離(ディスタンス) 《ネタバレ》 
“Before Sunrise”『日の出まえ』。初対面の男女が、ウィーンの街並みを背景に、一晩中歩いて話して恋をする。ってだけの映画です。事件も起きず、トラブルも起きず、大喧嘩もせず、見逃せないラストのオチもない。そんな映画、何が面白いねん?って思ってしまいますが、このシンプルな映画に、どういう訳か引き込まれました。 この構成って、もしかしたら、『孤独のグルメ』に近い感覚かもしれません。腹が減った男が、飯屋を探して、黙々と飯を食う。ってだけのドラマですね。事件も起きず、トラb…~~~~そんなドラマ、何が面白いねん?って、思っt…~~~どういう訳か引き込まれるんですよねぇ~。  『鉄道の中でジェシーが、意気投合したセリーヌをウィーンの街に連れ出すことに成功しました。』で、この映画の説明は6割がた終了です。あとは、結末と、そこに至る過程くらい? この映画の大部分って、孤独のグルメで言うと、美味しそうな料理を見て『この料理、先日食べたわ、そうそう、この部分が美味しいんだよね』なんて、自分の記憶の中の類似した料理を回想するか、『こういう料理もあるのか、頼んだこと無いけど美味しそう、今度食べよう』って、後学のための参考にするって楽しみ方があると思います。 孤独のグルメの、男が黙々とご飯を食べる映像は、きっと、あまり外食をしない、出された料理を楽しまない人には、恐らくあんまり興味が湧かないジャンルにも思えます。  ご飯はそうでも、恋愛はどうでしょう?きっと多くの人が、異性と思いもよらず会話が弾んで、時間を忘れて話し込んで、相手の事をもっと知りたい、この人に私の事をもっと知ってほしいって、そんな気持ちになった事ってあると思います。 ウィーンの美しい街並みすら背景(モブ)にしてしまうほど。奇妙な占い師や路上詩人を二人を輝かせるイベントにしてしまうほど。飽くこと無き探求心が湧いてきて、あっという間に過ぎていく二人の時間。『そういえば、私も(俺も)、そんな気持ちになったこと、あったなぁ~』なんて思えた人は、きっとジェシーとセリーヌのように、幸せな時間を過ごした事がある人なんでしょう。この映画は、自分の過去のワクワクした気持ちを、ぼんやりと思い出させてくれる映画に思えました。
[DVD(字幕)] 8点(2025-01-21 22:37:49)
7.  それでもボクはやってない 《ネタバレ》 
本作は痴漢の冤罪を扱った作品ですが、重きを置いているのは、痴漢ではなく冤罪の方。『やってない』事を証明することが、どれだけ難しい事か。そしてこの事件に関わる多くの人が『やっている』事が前提の対応をしてくる。 乗客の男性、駅員、刑事、留置所の警官、検事、判事。女子中学生が痴漢されたと言えば、周りは徹平が痴漢という“悪”であると決めつけて、正義の行いとして、どんどん徹平の立場を追い込んでいく。この、底なし沼に沈んでいくような怖さから、こちらの胃袋までキュッとしてきます。  希望が現れ、それが消えていく絶望感の演出が、えげつないですね。特に2点、被告に対しても公平で論理的。『正しい判決を出してくれそう』って言える大森判事の、突然の異動。その代わりの室山判事の、被告=有罪であることを最短距離で詰めてくるような恐怖。優しい笑顔で被告をどん底に叩き落す、被告とは住む世界が違う感じの冷徹さを感じました。 裁判官を演じた二人の俳優。一見冷たそうな正名さんに、一見優しそうな小日向さん。それぞれ、パッと見の印象と違う役柄を演じさせたのも巧いですね。 駅員室まで来てくれた目撃者の女性。駅員の杜撰な対応で姿を見失い、母親と親友の粘り強いビラ配りの結果、名乗り出てくれた勇気。証言も記憶も、客観的意見もしっかりしていて、観ていて『あぁ、これで助かった』って思った…にも関わらず。こんな重要で確かな証言が、参考意見程度に流されるなんて、絶望しかありません。  本作の主題は痴漢でなく冤罪の方。なので、真犯人も、真実も解りません。実際、徹平は痴漢をしていないのかは、最後のナレーションの通りだと思うし、須藤弁護士が最後まで担当を降りなかった事から、私たちの目には明らかです。 『十人の真犯人を逃がすとも 一人の無辜を罰するなかれ』優秀な弁護士。親身に動いてくれる親友。同じ冤罪の被告。証人。これだけの後押しがあっても、覆らない判決の恐ろしさ。痴漢の嫌疑をかけられた時点でもう、食肉にされる家畜と同じ運命ですね。
[地上波(邦画)] 9点(2025-01-20 22:43:24)(良:1票)
8.  リトル・プリンセス 《ネタバレ》 
“A Little Princess”『貴族の幼い女性』って意味あいの児童文学を、当時のセンスある翻訳家が、解りやすく魅力的な言葉を創って名付けたタイトルが『小公女』。 当時『小公女セーラ』のアニメを、家族揃って毎週観てました。思えばそんな、両親もみんなで観たアニメは、この作品だけかもしれません。暗く悲しいオープニング『花のささやき』。重たい空気と、ささやかな幸せと、終わりのない絶望感。セーラと共にミンチン先生の飼い猫・シーザーが、いつ学園を追い出されるかとヒヤヒヤして観ていました。 以前、他作品のレビューで『創作の“主人公を不幸なシチュエーションに遭わせる感動作”が苦手』って書きましたが、こういう、逆境を跳ね返す作品は大丈夫みたいです。 そんなワケで、思い入れがあるだけに厳しめな評価になりそうですが、これがまた、児童向け映画として良く出来ていました。  うろ覚えですが、アニメとの設定の違いを考えると、セーラはアニメ版より気が強く、言われたら言い返す性格です。ミンチン先生との口論や、ラビニアに魔術を掛けるのを、アニメのセーラがやっているのを想像すると、ちょっと微笑ましいです。ミンチン先生、アメリア先生、ラビニアとロッティが、アニメのイメージのまんまで嬉しかったです。ベッキーが黒人になってるのは、まだポリコレとか言われる以前の映画で、人種の変更はどんな意図があったんでしょうかね?原作でもベッキーは田舎出身の白人のようです。アーメンガードは一目で解りましたが、イメージよりポッチャリでメガネっ子でした。シーザーはさすがにアニメオリジナルか。 舞台をイギリスからアメリカにしたため、ベッキーの人種変更とか、インパクトの大きかった衛兵がセーラを手助けするエピソードが割愛されていました。(※アニメオリジナルだったりして)  「女の子はみんなお姫様」良い言葉です。この言葉に生徒たちだけでなく、ベッキーやアメリア先生(!)までが救われていく展開は、胸がスカッとします。 『お姫様と普通の女の子の違いって、何なの?』とか、『どうしてお姫様だと幸せなの?』とか、現代風に屁理屈こねるのでなく、子供でも『幸せな女の子=お姫様』って解釈できる解りやすさが、夢があって素敵です。 “ I am a princess. All girls are.”宇宙飛行士やアイドル歌手になる夢よりも、そこに至る過程の難しさやドロドロした政治的な内情に目が行ってしまう今の世の中で、このシンプルな事実はとっても大切だと思います。 エンディングに向かっての奇跡とピンチ、スリル。そしてアニメ版以上の急展開。とっても上手くまとまっています。アニメ版が好きだった人は、ミンチン先生、アメリア先生、ラビニアの最後に注目ですが、それぞれ、良いですねぇ。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2025-01-19 13:15:17)
9.  ロッキー2 《ネタバレ》 
“Rocky II”あぁ、いまレビュー書いてて思ったけど“2”でなく“Ⅱ”なのって、ロッキーがイタリア人だから、ローマ数字表記のⅡなのね?きっと。 なにか“最後にロッキーが勝つ”って前提の、筋書ありきの映画です。単独の名作ヒューマンドラマの続編であり、ボクシングのアクション映画シリーズへの、橋渡し作品でもあります。 当時の日本ではこの『困難を乗り越え、トレーニングをして、最後は強敵を倒す』ってシンプルなシナリオがウケたんでしょうね。'80年代を席巻した週間少年ジャンプの格闘アクションものの原点が、この作品から感じられます。 そして表現がイチイチ漫画チックです。初見時中学生だった私も、前作が大人のドラマだったのに対し、急に少年漫画っぽくなったなって思っていました。  序盤こそ前作の続編として静かに始まりますが、動物園で告白するのって、前作でガッツォの部下が「エイドリアンとデートなら動物園にでも行けよ」ってからかわれて、ロッキーも怒ってたような?まぁでも、温かくて良いシーンだけどね。 結婚式のシーンも良かったです。ポーリーにミッキー、ガッツォ(!)にグロリア(ペットショップのオーナー)が出席する、主賓が消えたら横の繋がりが全く無くなる結婚式だけど、前作の繋がりが感じられて、私は好きだな。 そして冗談のような悪夢のCM撮影。確かに、ガッツ、輪島、渡嘉敷、内藤…有名ボクサーってバラエティ番組で観る機会が多かったですよね。それ以外のボクサーは、あまり観る機会は無いから、ロッキーのような真面目なタイプのボクサーは、第二の人生の、チャンスを生かせず、人知れず消えていくんでしょう。  ロッキーの度を越した豪遊っぷりは、今後の転落人生を簡単に想像させますし、エイドリアンが妊娠→出産で倒れるのも、ドラマとしてはよくある展開。言葉は悪いけどベタです。絵に描いたような私生活のどん底と、ずっと寝ないで看病するロッキー。当時は涙ぐましく感じましたが、鼻のチューブとか点滴や心電図もないエイドリアンは、ただ寝てるだけに観えて、そんなに危機感を感じません。エイドリアンの「Win…Win!」は、タリアがこの映画で一番可愛いらしく観える名シーンです。ここにトレーニング中の音楽を被せ、ミッキーの掛け声が入るのは、何とも漫画チックな展開です。ロッキーってこんな映画だったっけ?  前作でも生卵飲んだり、冷凍肉叩いたりと珍しいトレーニングがありましたが、今回はニワトリ捕まえたり、鉄ハンマーで鉄板叩いたり、丸太抱えてうさぎ跳び…効果は解らないけど、お金のないロッキーのハングリーさを表すとともに、きっと、当時世界中で流行り掛けてたジャッキーのカンフー映画からもインスピレーションを得たんだろうな。と思いました。 仕上げはロッキー走りにロッキー階段。このジョギングで子供たちが追い掛けてくるのが訳が分からないですね。なぜかアメリカ国旗(続けて万国旗)の並ぶ車道を走るロッキーと子供たち。階段の頃には子供たち凄い数になってます。もう笑うしかないフィーバーっぷりです。この盛り上がりっぷりって、アポロと試合をしたボクサー、ロッキー・バルボアの応援としてでなく、スタローン演じる映画“ロッキー”の主人公が走ってることへの、盛り上がりに思えます。こんな映画だったっけ?  最後の試合は乱打乱打の乱れ打ち。序盤から終盤まで、疲れを知らないハードパンチの打ち合いです。あれだけテンプルにレバーにボディにガンガン強打が当たってるのに、格闘ゲームのキャラみたいにず~~っと全力で打ち合ってます。長期戦こそ前作みたくクリンチが増えるものだと思うけど…。そして最終ラウンドでダブル・ノックアウトって、絵に描いたような漫画展開。直前に観たファーゴより、コッチのがよっぽどコメディに思えます。
[地上波(吹替)] 5点(2025-01-19 00:48:09)
10.  ファーゴ 《ネタバレ》 
“Fargo”ノースダコタ州の都市名。でも映画の舞台のほとんどはミネソタ州…え? そしてず~~っと実話ベースだと思っていたけど、フィクション…えぇ??  最初観たとき、とても生々しい映画に思えました。というのも、出てくる俳優さんがみんなリアルなんです。マクドーマンド、ブシェーミ、ストーメア、メイシー。皆さん素直に美男美女とは言えない俳優さんで、名バイプレイヤーとしてはインパクトは大きいけど、主演俳優としては、ときめかないというか…報道番組でインタビューを受ける、その辺の人のような、そんなどこでも居そうなアメリカ人。って感じが出てます。  殺人のシーンも痛々しくてリアルですね。保安官を殺した後のカーチェイス→スリップ事故→射殺の流れは、逃げる立場での絶望を感じました。でも、フィクションだったなんて今回の再視聴まで知らなかったわ。『ブラックコメディ』に分類されてるのが変だなぁって思っていたけど、そうか、フィクションだったからか。  登場人物がみんな「ヤー?ヤー!」って言ってるの。ミネソタなまり表現らしけど、当時はリアルだなーって観ていました。でも北海道の映画で登場人物みんなが「なまら~だべ?」とかって言ってる感じかもしれない。「実際そんなにヤーヤー言わないから。」ってツッコミながら観るのが正しいのかもしれない。 それでも私には、この映画をコメディとして観る観点は備わってない気がする。次回は“コレはコメディなんだ!”って念を押しながら観るとしよう。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2025-01-18 23:27:20)
11.  アメリカン・グラフィティ2 《ネタバレ》 
“More American Graffiti”『もっとアメリカン・グラフィティ(=アメリカの落書き)』。おぉ~なんて素敵なタイトル。'62年のひと夏の夜を描いた前作から、今度は'64年~'67年の4年間の大晦日を舞台に、時代を行ったり来たりして、各登場人物の" その後"を描いています。 '64年はミルナーのドラッグレースと相変わらず変化球な恋。'65年はテリーのベトナム戦争。'66年はデビーのロックとドラッグとヒッピー生活。'67年はスティーブとローリーの結婚生活と学生運動。この4つの時代を行ったり来たりしながらだから、一晩の話の前作に比べ、複雑に思えますが、各時代ごとに撮影カメラを変えて、区別が付くように創られています。 制昨年から『帝国の逆襲』で多忙だったと思われるルーカスに代わり、B・W・L・ノートンなる人物が監督を務めています。グーグル検索するとビル・L・ノートンという監督が出てくるので、同一人物かもしれません。ベトナム戦争のテレビ映画なんかを撮っている人なので、オープニングのヘリの編隊撮影と結び付きそうな気がします。でもあの近接撮影の迫力は、ルーカスっぽいんだよなぁ。恐らくアメリカで撮ったであろうベトナムの戦場ですが、良い映像です。  私自身、アメグラは高校生の頃から観続けた好きな映画で、2があることは薄っすら知っていましたが、あまり評判を聞かなかったので、観るほどの映画じゃないのかなぁ?って思っていました。 それがたまたまDVDを手に入れることが出来まして…これがまた、いい映画なんですね。もっと早くに観ておきたかったって気もしますが、アメグラの初見から30年以上たって、こんな偶然みたいなカタチで、彼らのしっかりとした後日談が観られたのが、何かサプライズ的な嬉しさがありました。 前作の登場人物が次々出てくるのが、同窓会的に嬉しいです。時代設定が4年に分けられているので、“この日・この時・あの時のメンバーが顔を合わせる”といった、テレビのスペシャル特番にあるような不自然さが無く、純粋に『あぁ、あのヒト、こんな仕事してたんだ』って楽しさがありました。ファラオ団のジョーがテリーの戦友だったり、ハリソン・フォード=ファルファが白バイ警官になっていたり。キャロルも大きくなって…  見た目はそのままで、すっかり男らしくなったテリーがカッコ良かったです。前作で彼が行方不明になったテロップに、ちょっと気持ちがモヤモヤしましたが『おぉ、そう来るのか!』って感じでした。30年ぶりにスッキリしたし、観てよかった気分になれましたよ。 ミルナーの最後の観せ方も巧いですね。うねった道を走っていくデュースクーペ、対向車のヘッドライトが、ハラハラさせるんでなく、何故かしんみりします。何ででしょうね?この映画は初めて観るのに、新しいものを観るのでなく、懐かしいものを観る気分にさせてくれるからでしょうか? 大晦日から新年へ。オールド・ラング・サイン(=蛍の光の原曲)の、時代を超えた合唱が、心に沁みます。エンディングのライク・ア・ローリングストーンも良いですね。 '50年代からのオールディーズの有名曲ぞろいだった前作から、'60年代中盤のロック・ポップスのヒット曲満載の本作へ。時代を象徴する音楽の使い方が巧いです。コッチのサントラも欲しくなったわ。
[DVD(字幕)] 8点(2025-01-17 23:27:10)
12.  ロッキー 《ネタバレ》 
“ROCKY”邦題まま。ロッキー=ボクシングのアクション映画だと思っていたら、一作目はボクサーの人生を描いたヒューマンドラマでした。ランボー同様、2以降を含むロッキーシリーズとは別に、1作目は単体作品として鑑賞するべき作品ですね。 ビル・コンティの名スコアと共に黒地に白文字でデカデカと流れる『ROCKY』のタイトル。もうテンション爆上がりです。何か普段の力以上のものを出さなきゃいけない時、この『ロッキーのテーマ』は体の中の眠っている力を引き出してくれる気がします。ちなみに私が初めて買ったサントラレコードが、このロッキーでした。 タイトルのあと、ボクシング場のキリストの肖像画と“Resurrection(復活)”の文字が印象深い。  復活。時代はベトナム戦争の敗北の傷跡も癒えない'76。アメリカン・ニューシネマ全盛期で、何だかモヤモヤする映画が多い時代、社会の底辺からアメリカンドリームを掴んだ一人のボクサーの物語が、多くのアメリカ人の共感を生みました。 試合が始まり、余裕しゃくしゃくのアポロに、緊張を隠せないガチガチのロッキー。笑顔でジャブを入れてくるアポロに、目の覚めるようなロッキーの左フックが決まった時、崩れ落ちるアポロと同じ『え??』って気持ちになり、全身が震えました。あぁ、この瞬間アメリカ中が同じ気持ちになったんだ。鬱屈した負け犬根性を打ち砕く一撃を観たんだ。  素晴らしいのはカメラです。アクション映画ならボクサー視点のカットを入れるところでしょうけど、本作ではあくまで観客の視点、中継カメラの視点、第三者の視点で、ロッキーの活躍を観ます。観てる自分がロッキーになるのではなく、自分はあくまでロッキーを観ている側の視点なんです。何度打たれても、何度倒されても立ち上がってくるロッキーに、客観的に勇気をもらえるんですね。ロッキーのファイトを観て、自分の中で諦めていた何かが“復活”する。多くのアメリカ人がそれを感じたんじゃないでしょうか?試合の日が建国200年(=1976年)の1月1日、新しい年の始まりというのも、高揚感を感じさせます。  アポロと戦う幸運を手に入れたロッキーと、散々自分を見下してきたミッキーがマネージャーにしてくれと懇願してくるシーンが秀逸です。「俺にはロッカーもないよ」と嫌味を言ったあと、トイレに籠ってミッキーが帰るのを待つシーン。ドアの開け閉めのバツの悪さ。面と向かっては文句を言えないロッキーの人の好さが伝わります。その後ミッキーを追いかけるセリフの無いシーンも素晴らしい。 内気なオールドミスだったエイドリアンが、ロッキーを受け入れ、どんどん綺麗に、饒舌になっていくのも大好きです。エイドリアンと言えばあの“話しかけてくんな”オーラが出まくってる逆三角メガネの印象が強かったけど、この一作の中だけで凄く綺麗にオシャレになってるんですね。地味なネズミ色の上下から、鮮やかな赤いコートに白いベレー帽。ロッキーにバトカス(犬)をプレゼントして、ロ「こいつ何食べるんだ?」エ「小さい亀よ」。ロッキーが一生懸命考えた亀のエサのジョークより上手い。  そして最後の「エイドリアーン!」のシーン。ロッキーは勝敗よりエイドリアンしか見えてない。控室でじっとしていたエイドリアン。試合会場に行き、湧き上がる場内を「ロッキー!」と叫びながら駆けていくところ。赤いベレー帽を落としても拾うことなくロッキーのモトへ駆けていき(※ポーリーのサポートがナイス)、熱い抱擁とキス。この時、劇中のカメラ&スタッフはもう、勝者アポロの方に向いてるんです。でも私たちは、カメラが観ていないロッキーとエイドリアンを観ている。試合には負けたけど、最終ラウンドまで戦い抜いたロッキーのファイトを、私たちは観た。 この映画を観ると、『私もまだ、頑張れるかな?』って、眠っていた元気と立ち向かう勇気が、いつでも何度でも湧いてくる気がして、本当に大好きな映画です。
[地上波(吹替)] 10点(2025-01-13 23:51:21)(良:1票)
13.  フルメタル・ジャケット 《ネタバレ》 
“Full Metal Jacket”『完全 被甲 弾』と訳されています。通常、ライフルの銃弾の先っちょって、柔らかめで砕けやすい鉛で出来てるんですが、そこを真鍮など硬い金属で覆って、装弾のジャム(弾詰まり)を減らし、貫通力を増した、軍用の銃弾の事だそうです。アメリカのどこにでも居る青年たちを、あの訓練所で殺人に特化した海兵隊員に、機械的に造り上げる工程を、軍用の銃弾に例えたタイトルだと思われます。 '80年代後半はベトナム戦争映画ラッシュで、中でもプラトーンと並んで社会的影響の大きかったのが本作です。“ファミコンウォーズのCM”で有名な、あの行進曲(ミリタリーケイデンス)を世間に広めた作品です。そしてもう一つ、漫画とかいろんな作品に影響を与えた“ハートマン軍曹のマシンガントーク”が観られる映画としても有名だと思います。この映画もテレビのロードショーで放送される予定でした。あのハートマン軍曹の卑猥なセリフをどう訳すのか?とても期待していたんですが…突然の番組差し替えでお蔵入りした記憶があります。以降、深夜枠含めて、この作品は民放では放送されてないんじゃないかなぁ?  前半の訓練パートがあまりに秀逸なので、後半のベトナムパートを重点的に観てみましょう。 ベトナム戦争と言えばジャングルとヘリのイメージなんですが、珍しい市街戦を扱っています。廃工場を半壊させてヤシの木を植えて創り上げた市街地の戦場が、独特な雰囲気を醸し出します。またいろんな映画で観慣れた軍用ヘリ、UH-1イロコイでなく、マイナーなHUS-1チョクトーを使っているのも目新しかったです。意味もなく民間人を撃つヘリガンナーも、ネットで有名ですね。 前半は軍隊マーチとジョーカーの心理面を表現した不気味なSEで、人間を内面から変えていく過酷で閉鎖的な訓練パート。パイル二等兵の凄惨な事件から、いきなりナンシー・シナトラのヒット曲『にくい貴方』が掛かり、ベトナム人娼婦がプリプリお尻を振って歩く開放的な画に代わります。戦線の後方の、ダラダラした空気が伝わります。訓練所で殺人の訓練を受けて、人格を造り替えて、行った先が、これです。  最前線では『敵の潜むエリアを目的地まで移動する』という、イマイチ必要性の分からない任務を行っています。安全圏の確保が目的でしょうけど、敵味方の区別がつきにくいベトナム戦争では、どこまで有効だったか解りません。更に行進中、敵の罠にはまり、撃たれてから撃ち返す受け身の戦術なので、味方もどんどん減っていきます。3人の命を奪ったスナイパーの正体は… 本作ではベトナム人娼婦が2回ほど出てきます。アメリカ兵に体を売って生活する娼婦。一方で躊躇なく冷酷にアメリカ兵を撃ち殺すスナイパーの少女。殺人の訓練を受けて、ベトナムまで来て、女を抱いて、女を殺す。この生産性のない活動に何の意味があるのか。 『ミッキーマウス・マーチ』彼らのやっていることは、ミッキーマウスのドタバタアニメと同じくらい、意味の無い事に思えます。  前半も後半も、人の命を奪う一発の銃弾で終わります。前半はパイルことレナードが自らの命を奪う銃弾。後半はスナイパーの少女の命を奪う銃弾です。ジョーカーがレナードの病気除隊を強く進言していたら、あの惨事は起きなかったでしょう。スナイパーのとどめを刺したのはジョーカーですが、ラフターマンの銃撃で、放っておいても彼女は死んだでしょう。どちらもジョーカーが人の命に係わる場面だったけど、どちらも彼が責任を感じる必要はないこと。戦場で自分がまだ生きていることを実感するジョーカー。『Paint It Black』戦場で彼の感覚が塗り潰されていく。
[ビデオ(字幕)] 8点(2025-01-13 22:17:02)
14.  湯を沸かすほどの熱い愛 《ネタバレ》 
私は、創作の“主人公を不幸なシチュエーションに遭わせる感動作”が苦手のようです。こう言う作品が好きで、心に届く方も居ることを考えると、批評的なレビューは避けるべきだとは思うんですが、制作側の「こうすれば主人公がもっと辛くなって、観てる人は泣くだろう」なんて考えてシナリオを創ってることを想像してしまうからでしょうか?苦手なんですね。  問題を突き付けられた際の、解答の意外性に重点を置いた作品に思えた。人の行動は、数学と違って答えは一つじゃないけど、この映画の場合は、どうしてこの答えを選んだのか、理解に苦しむ事が多かった。劇中の“周り(=家族や知人)”が納得しているから、外野の私が口を出すことじゃないんだろうけど、何度か「え?答えソレなの?」って思ってしまうことが多数… 旅行の際「ちゃんと伝えるね」は、自身の病気の事かと思った。まさかの実はあの店員さんが…ここは巧かったと思う。突然のビンタ。母が手話がいつか役に立つ。って習わせたところ。この辺のミスリードと前振りの回収はとても巧い。 あと双葉が実の母親に会いに行って面会を拒否された時、犬の飾りを握り締め、思い出に持って帰るのかと思ったら、エイヤと投げたのが痛快。  安澄への陰湿なイジメ。壁の“笑って”は誰が書いたんだろう?って思って、何かそこから救いにつながるような物語があるかと思ったが、特に触れられることがなかったのがちょっと残念。自分で書いたってこと? 全身絵具だらけな状態で「その(色の)中で、好きなのは?」それいま聞くことか?どうしてそれが安澄の救いになるんだ?? 制服を隠されたことに対し、体操服を脱いだのはびっくりする展開だった。これがもし、安澄がクラス中からいじめられていて、犯人が誰か(視聴者も)見当がつかない状況で、だけど安澄だけは犯人が解っていて、「今は体育の授業じゃないから」と言い返し、本人らを名指しせずに戒めた。って言うなら解るんだけど、あのクラスでは、あの女子3人が犯人なのは明白。だから突然下着姿になったことで、どうして彼女たちが制服を返そうと思ったのかが、私にはピンとこなかった。  「エジプトに行きたい、一生日本しか知らないなんて、人生もったいない」けど、連れて行けない場合どうする? 人間ピラミッドを見せる。約束を全然守れなかった夫に対する、双葉の小言の一つでもあるけど、それに対する答えもズレてる気がしてならない。前段、君江さんがご馳走を作って、さぁ食べようってタイミングで、土下座して自分のワガママを通すのも嫌。まずは君江さんの好意に感謝して、ご馳走食べ終わってからじゃないの?土下座とかするの。こんなダメ夫です。の上塗りに思えた。誕生日のしゃぶしゃぶは神聖で、君江さんのご馳走はなおざり?って、自己中な人に思えてしまった。  みんなが大好きな母ちゃんが死んでしまった。どうする? ウチ銭湯だから、火葬場でなくボイラーで焼いて、お湯沸かしてみんなで温まろう…えぇ~~~!? そもそも、双葉がそれを望んだんだろうか?夫一人の考えでそうしたのか?劇中の家族や知人がその提案を聞いて、誰1人疑問に思わないから丸く収まってるけど、私が参加者の一人であれば、間違いなくドン引きしてるだろう。 ジョニー・デップ主演の名作で似たようなシチュエーションがあるけど、あの映画のように納得いく説明は無いし、そうしなければいけない事情もない。『燃やせばお湯が沸くから、みんなで温まってしまえ』って考えに、『死体も口に入れれば栄養になるんだし、料理して食べてしまおう』ってカニバリズムと同じレベルの気持ち悪さを感じてしまった。 でも、オダギリジョーや宮沢りえと言った、自分の意見を言えるであろうベテラン俳優が出て、このシナリオで納得して演じてるんだから、理解出来る人には理解出来るんだろうな。
[CS・衛星(邦画)] 3点(2025-01-09 23:10:27)
15.  マッド・ハイジ 《ネタバレ》 
“Mad Heidi”『怒ったハイジ』。 昨年『アルプスの少女ハイジ』のDVD全巻を手に入れ、3か月掛けて全話視聴しました。更に昨年はアニメ版の生誕50周年記念とのことで、大丸デパートで開催されたハイジ展も観にも行きました。そんなワケで、私の中でプチ・ハイジブームのさなか、本作の存在を知りました。  敵のボス・マイリ大統領がスターシップトゥルーパーズのジョニーリコだった!政府の宣伝番組で『 I am doing my part!』ネタが出てきて、あぁ、そっち系の笑いも入れてくるのねって感心したわ。 予告編でかなり期待が膨らんでしまう作品だったけど、アニメにしか出てこないヨーゼフ出てきたり、ハイジとペーターが子供の頃と違って恋人同士になってたり、ペーターが密造に手を染める展開や、予告で観た処刑までのスピード感があって良かったです。クララ(ちょっとイメージと違うが…)やロッテンマイヤー(字幕ではロットワイラーだった)さんもポンポン出てきて、序盤はハイジの世界観を壊す、意外性が楽しめるバイオレンス作品として楽しめました。  だけども、中盤からほとんどハイジ(原作)が関係なくなり、単なるバイオレンス作品になってしまいます。しかもベースとなるものが、なぜかキルビルのパロディで『バイオレンスと言ったらタランティーノだよね』って聞こえてきそうな、何の工夫もない作品にトーンダウンしていきます。 終盤はグラディエーター&バイオハザード系ホラーになってて、もっとハイジハイジしたネタを期待していたので、中盤以降の普通のバイオレンス・コメディは、ちょっと消化不良に感じました。もしかしたら『ハイジ アルプスの物語(2015年)』を観ていたら、もう少し楽しめたかもしれないですね。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2025-01-09 21:47:31)
16.  ダンケルク(2017) 《ネタバレ》 
“Dunkirk”フランスの都市名。以前観た『ウィンストン・チャーチル』が、彼らの撤退戦の補足資料として、多少なりとも活きました。 静かな町の路地。だらだら歩く兵士。降ってくるビラ。突然の銃撃。緊張感が伝わってきます。映画を盛り上げるハンス・ジマーのヒリヒリした音楽。長く続く緊張の連続。同じシチュエーションでもダークナイトのような緊張→緩和がなく、緊張→緊張って感じで、106分と短い映画だけど、観終わったらグッタリしてしまいます。  周り中ドイツ軍に囲まれた状況なんだけど、面白いことにドイツ兵が全然出てこないんですね。ドイツの戦闘機のパイロットとかがチラ観えしたりはありますが、最後のファリアを捕虜にする場面意外、全然出てこない。まぁもし、自分たちを殺す気満々のドイツ兵が出てきたら、緊張の糸がプツリと切れてしまい、多くの人が楽しめない映画になってしまったかもしれませんね。  陸の一週間、海の一日、空の一時間。この3つの時間軸を行ったり来たりします。最初はブツ切りに感じた場面転換も徐々に制作側の意図が伝わり、最後の同時間軸に繋がっていく展開は、巧いなぁって思いました。巧いんだけど「この続きが“今”気になるのに、場面変わってしまった」って事が結構あって、ちょっとストレスに感じました。でも2回目の鑑賞だと、結果にハラハラすることなく、場面場面を味わえるかもしれません。でもなぁ、疲れるから再視聴は、しばらく後でいいなぁ。
[DVD(字幕)] 5点(2025-01-08 21:33:19)
17.  ゼロ・グラビティ 《ネタバレ》 
“Gravity”『重力』。なんで“ゼロ”付けたし?会話で「ゼロG」って出てくるけど、改変理由の分からないタイトルになってます。 そんな邦題お構いなしに、映画は最後、湖から這い出て、全身を使って二本の足で立ち上がり、重い体を持ち上げて、安堵を感じながら歩き出すところで、このタイトル回収というスンバラシイ神展開となります。  少し前のマトリックスのレビューで「これ以降、映像革命は未だ起きていないぜ(キリッ」って私書いたけど、この映画が思いっきり映像革命起こしてますね。すみません。冒頭から宇宙ゴミの衝突からライアンの宇宙漂流まで、そこから間髪入れずにコワルスキーが救助して、シャトルに戻るあたりまで、一連の動きをまるでワンカットのように観せています。しかもカメラワークだけでなく、時にはライアンのヘルメットの中にまでカメラが入り、ヘッドアップディスプレイの情報まで私たちに観せる凝りよう。こんな映像観せようってアイデアに素直に感心します。  宇宙遊泳の表現も見事で、ライアンがISSにたどり着いて、ぶかぶかの宇宙服を脱ぎ捨て、細い体が出てきて、安堵の伸びをして、胎児のように丸くなる。無重力としか思えないこんな映像、ホントどうやって撮ったんだ? ソユーズでの脱出で、広がったパラシュートと絡まるロープの表現なんて、適当にやっても誰も解らない所だろうに、凄い計算に基づいて動かしてるんだと思うと頭が下がります。 宇宙ゴミが音もなくISSを破壊する恐怖。音のない宇宙空間の表現として、不安感を煽る音楽を効果音のように使うセンスも素晴らしい。  私は普通の2D字幕版で観ましたが、宇宙空間のふわふわ具合、酸素が減っていく息苦しさ、広い宇宙で自分だけ取り残される心細さ…体感型アトラクションのお手本のような映像表現でした。これ3Dで観ていたら、もっともっと凄かったんでしょうかね? 2013年。今と比べて映画は全然元気でしたが、映画館で観る価値がある映画を創ったことに、大きな意義があったと思います。
[映画館(字幕)] 9点(2025-01-08 20:52:43)(良:1票)
18.  THX-1138 《ネタバレ》 
“THX-1138”=主人公の名前です。「テックス」と呼んでるように聞こえます(サックス?そう聞こえるかな…)。…登場人物はみな、ローマ字3つと4桁の数字の組み合わせを持っているようです。機械的ですが個別識別出来るところから、名前とそう変わりなく思えます。  最近ネットで松田聖子や中森明菜の髪型を現代風に変えたものを見ました。素材が良いだけにみんな綺麗でした。さて、今回私が観たものは、CG技術で改良を加えたもののようです。手を加えてないモト作品も観ていると思うけど、違いが思い出せないけど、エレベーター付きのビルが観える街の景色とか、ロボットを組み立てるときの熱で溶けるシーンとか、綺麗になっていると思う。オリジナルは、もっとシンプルで退屈な映像の詰め合わせだったように思います。(うろ覚え)  この映画の見所の1つとして、パトカーとバイクのカーチェイスが挙げられると思います。言い換えるとここぐらいしか、解りやすくて娯楽要素のあるシーンは無いですからね。最初観たときは、スピード感が凄く、かなり斬新さを感じたけど、この作品の5年も前に、スピード感&迫力満点の『グランプリ』にルーカスが撮影で参加していて、この時の技法を使ってるんだなって、思えるようになりました。 そして、もう一つの見所、エンディングの夕日。シンプルで退屈な白い世界ばかりから、長いトンネルのカーチェイスを抜けて、その先に、あのでっかい、真っ赤な夕日があるから、オリジナルはインパクトが強かったように思います。でも最新CGで、真っ白で退屈なシーンのあっちこっちに余計な手を加えたため、最後の夕日のインパクトが弱まってしまったようにも思えます。 聖子ちゃんや明菜ちゃんの今風ヘアカットは、芋っぽさが減って洗練されていたけど、オリジナルの情熱は感じられなかった。この映画はそんな内容でした。  本作を始めて観たのは20年ほど前だったと思います。あの時と比べて今回、年齢を重ねたぶん、作品の理解が深まったかと言うと、正直今回もサッパリわからなかったなぁ。そもそもルーカスは才能があるとは言え、26歳の青年が自分の脳内のイメージを、少ない予算で映像化したのが本作であるなら、今の私より、20年前の私の方が、当時のルーカスに年齢が近いぶん、より理解も出来ていたのかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 4点(2025-01-07 21:56:19)
19.  ダークナイト ライジング 《ネタバレ》 
“The Dark Knight Rises”『暗黒の騎士 立ち上がる』…のような意味だと思いますが、この映画のタイトルは最後に出てきます。バットマンの最後の言葉「ヒーローはどこにでもいる」がタイトル回収だとしたら。ゴードンに限らず、ブレイク、セリーナ、名も無き警官たち。“Rises”には『増加する』という意味もあるので、もしかすると『暗闇から騎士(たち)が立ち上がる』って意味かもしれません。“Knights”って複数形じゃないので、単に思い付きですが。  前作でジョーカーを怪演したヒース・レジャーの急逝から、きっと3作目の構想は大幅に変わったと思われますが、あの続きからスムーズに繋がるのか不安もありました。いきなりヒーローものらしくない、結構リアルな、それでいてどこか007チックなハイジャック(?)から始まります。早速掴みはOKでした。前作の銀行強盗といい、現実からファンタジー世界に引き込むのが巧いですよね。 そして前作から8年も経過したことが解り、すっかり隠居したしおしおのブルースと、女の魅力たっぷりなセリーナの登場。本っ当コレ007か?ってくらい、ヒーロー物っぽくない、けど面白い導入部分でした。ベインはジョーカーに比べると魅力は落ちますが、本作のキャットウーマンはかなり魅力的です。お人形のようなアン・ハサウェイに、ゴーグル跳ね上げて猫耳にするなんて、ノーランは日本のヲタクの血でも輸血したんでしょうか?素晴らしい。  3作続けて登場の小悪党スケアクロウも可愛いですが、エンディングに繋がるブレイクの使い方は「そう来たか!」って感心してました。バットマンって孤高のヒーローってイメージがあるので、相棒とか何とかガールとかが一緒に戦うと、バットマンの魅力が薄まるんですよね。でも本作では最後までブレイクとして活躍するので、それぞれの魅力が薄まることなく共闘出来てました。 アルフレッドとブルースの再会。シリーズ物のエンディングとして、最高の部類じゃないでしょうか?アルフレッドとは面識のあるセリーナがまるで気付いてないのも、何か親友同士の秘密っぽくて良いと思います。
[地上波(吹替)] 9点(2025-01-06 22:36:41)
20.  ミッドウェイ(1976) 《ネタバレ》 
“Midway”英語で『中間』の意味だけど、ミッドウェー島周辺で起きた日米の『ミッドウェー海戦』を意味する。 連戦連勝の帝国海軍が、この海戦の敗北を契機に、劣勢に追い込まれていく。真珠湾攻撃('41年12月)から僅か半年後の'42年6月のこと。う~ん、我が国はこの状況で'45年まで戦争を続けたんですねぇ…  初見は中学生の頃の、年末の夜中のロードショーだったでしょうか?まだロクに飲めない缶ビールをいたずらしながら、往年の戦争映画を満喫していました。そんなワケで、この映画を観ると年末だなぁ~って気分になれるんです。 当時は気になりませんでしたが、そうとうツギハギだらけな映画だったんですねぇ。実際の戦争フィルムはもちろん、過去の戦争映画のフィルムをパク…借りてきて完成させていたという、トンデモな戦争大作です。振り返ると、本作や『遠すぎた橋』を最後に、オールスタ-キャストの戦争娯楽大作映画って、創られなくなったんじゃないでしょうか?莫大な製作費も、やっぱりオールスターの出演料に消えてしまったんでしょうかね? とはいえ、今のようなYouTubeとかで色々観られる時代と違い、戦時中の貴重なカラーフィルムを、一般の人たちが気軽に観られるという意味では、一本の映画にまとめた意味はあったかもしれません。  日本側から観ると、不運に継ぐ不運が次々と重なり、歴史的大敗北へと繋がっていく様子が痛ましく思えます。映画はアメリカ視点なので、偵察機に艦隊を観られたのに音沙汰なしとか、決死の覚悟で攻撃した空母がボンボン大爆発したりと、事情を知らないアメリカ側としては幸運の連続だったことでしょう。 ただラッキーで終わっては面白くならないので、日本の暗号を解読していたとか、日系人女性と結婚しようとするパイロットとその親の話を織り交ぜたりしていますが…状況説明が多く、それほどドラマチックにはなっていません。 大金をつぎ込んだと思われるオールスターキャストも、ポツポツ出てきてはそれっきりな感じで、キャスト同士が特に物語上で絡むことなく、ツギハギ映画らしいツギハギキャストって感じでした。
[地上波(吹替)] 5点(2025-01-05 21:58:54)
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