1. シムソンズ
《ネタバレ》 以前散歩していて、たまたま立ち寄ったカーリング場で、小笠原歩さんをナマで観たことがあります。小柄で綺麗な人でしたよ。シムソンズで一番知名度が高いと思っているのが彼女なんだけど、映画では一番受動的な菜摘なんですね。意外でした。 常呂町が舞台のカーリング競技っていう選定が渋いです。もっともこの時期、『学生が部活動にのめり込む青春モノ』が大量に創られていて、そのほとんどがマイナー競技にスポットを当てた作品でしたが、この映画の後もカーリングは注目を集め、彼女たちシムソンズの、次の次の世代の“常呂っ子チーム”ロコ・ソラーレの「そだねー」が流行語大賞になるくらい、カーリングは安定した知名度と注目を浴びるスポーツにまでなりました。 映画シムソンズは、実際のチームをモトにしているけど、創作部分がかなり多いと知りました。一番意外だったのは、みんな初心者ではなく、遅くとも中学生の頃までにはカーリング経験者だったことです。 カーリングは大きな動きが少ないスポーツ、つまり絵的に地味な競技です。加藤ローサら新人女優たちは、映画出演もカーリングも初心者です。そんな彼女らを使うにあたり、実話に基づいて経験者が強者になるまでを描くより、キャーキャーと氷上を転げまわってたのが、強者としてビシッとフォームを決めるまでに成長する姿の方が、画的に描きやすかったんでしょう。 ただ、素人がちょっとの練習で急成長して、数年後にオリンピックに行けてしまう映画の展開は、カーリングという競技が底の浅いスポーツと勘違いされそうです。競技選手へのリスペクトという意味でも、もう少し丁寧に書いても良かったかも? でも加藤ローサ演じる和子の、笑顔と前向きさがとても良いですね。観ている私まで元気を貰えました。展開はベタだけど、安心して楽しく観ていられました。 常呂町は、この映画公開の一か月後に北見市に合併されました。今は無き常呂町。今は無きシムソンズ。こんなカタチで片田舎の一時代が映画として残るのって、とても素敵だと思います。欲を言えば、もう少しロケ地を増やしてほしかったです。あれから20年。北見駅前もかなり様変わりしましたからね。 ちなみに、当時も今も道民は「したっけ」は、ほぼ使いません。大泉洋ちゃんも当時まだ若いから、指摘しなかったんですかね?「~だべ?」はけっこう使います。 [DVD(邦画)] 5点(2025-01-30 22:54:12) |
2. それでもボクはやってない
《ネタバレ》 本作は痴漢の冤罪を扱った作品ですが、重きを置いているのは、痴漢ではなく冤罪の方。『やってない』事を証明することが、どれだけ難しい事か。そしてこの事件に関わる多くの人が『やっている』事が前提の対応をしてくる。 乗客の男性、駅員、刑事、留置所の警官、検事、判事。女子中学生が痴漢されたと言えば、周りは徹平が痴漢という“悪”であると決めつけて、正義の行いとして、どんどん徹平の立場を追い込んでいく。この、底なし沼に沈んでいくような怖さから、こちらの胃袋までキュッとしてきます。 希望が現れ、それが消えていく絶望感の演出が、えげつないですね。特に2点、被告に対しても公平で論理的。『正しい判決を出してくれそう』って言える大森判事の、突然の異動。その代わりの室山判事の、被告=有罪であることを最短距離で詰めてくるような恐怖。優しい笑顔で被告をどん底に叩き落す、被告とは住む世界が違う感じの冷徹さを感じました。 裁判官を演じた二人の俳優。一見冷たそうな正名さんに、一見優しそうな小日向さん。それぞれ、パッと見の印象と違う役柄を演じさせたのも巧いですね。 駅員室まで来てくれた目撃者の女性。駅員の杜撰な対応で姿を見失い、母親と親友の粘り強いビラ配りの結果、名乗り出てくれた勇気。証言も記憶も、客観的意見もしっかりしていて、観ていて『あぁ、これで助かった』って思った…にも関わらず。こんな重要で確かな証言が、参考意見程度に流されるなんて、絶望しかありません。 本作の主題は痴漢でなく冤罪の方。なので、真犯人も、真実も解りません。実際、徹平は痴漢をしていないのかは、最後のナレーションの通りだと思うし、須藤弁護士が最後まで担当を降りなかった事から、私たちの目には明らかです。 『十人の真犯人を逃がすとも 一人の無辜を罰するなかれ』優秀な弁護士。親身に動いてくれる親友。同じ冤罪の被告。証人。これだけの後押しがあっても、覆らない判決の恐ろしさ。痴漢の嫌疑をかけられた時点でもう、食肉にされる家畜と同じ運命ですね。 [地上波(邦画)] 9点(2025-01-20 22:43:24)(良:1票) |
3. 単騎、千里を走る。
《ネタバレ》 “千里走単騎”邦題まま。タイトルから『健さんが凄い距離を一人で移動する映画かぁ、あぁ、ラリーの奴かなぁ』と思ったんですがそれは別な映画でした。 映画人・高倉健の遺作としての『ぽっぽや』良かったです。そのあとの高倉健の蛇足『ホタル』が駄作だったので、「韓国の次は中国か…」って、不安の方が大きい作品でしたが、思いのほか見応えがあって、静かだけどとても面白かったです。 『単騎、千里を走る。』という三国志演義の関羽の…つまり、演者が仮面をかぶって踊って歌う伝統舞踊の演目の一つだったんですね。 人づきあいが苦手な剛一が、言葉の通じない雲南省で、頭を下げたり誠意を尽くしたり、徐々に目的の舞踊撮影に近づいていく様子がとても見応えがありました。 急な呼び出しでも対応してくれる通訳の女性(最初健さんの頼みを断って冷たいと思った)。日本語が殆ど解らないのに付き添ったガイドの人(最初インチキじゃないか?と怪しいと思った)。面会を許可した刑務所長(This is 中国!って政府人間だと思った)。ヤンヤンを連れ出しを許可してくれた村長(ヤンヤン孤児だから厳しくしてるのかと思った)。 なんかみんな良い人たちで。あちらに住んでる人たちって、ホントはこんな、優しくて、私たちを理解しようと一緒に悩んでくれる、ほのぼのした人たちなのかもな?って思えました。最近、中国に対して友好的な話があまり出てきませんが、この映画に出てくる人たちとは、平和で友好的な隣人関係が持てそうで、そうなると良いなと思います。 さて、日本パートというか、寺島しのぶパートは全部苦手でした。最初の面会(拒否)から、何でもう少し事前に交通整理しとかないねん!って思ってしまった。 そして中国に渡った際も、健一に言うなといわれてたのに、何で言うねん!って。そして剛一の努力を全部ぶち壊しにする健一の“単騎~”の気持ちを言っちゃうし。 最後は訃報は仕方ないにせよ、剛一にとって道半ばのあそこで、遺書読むか?しかも国際電話で!?(※剛一は移動中だし国内と違ってバッテリーの浪費は避けたい) 何かもう、李加民の舞踊が消化試合にように、どうでもよくなってしまって… 一度難関をクリアすると、次回以降その難関はスルー出来るのはちょっと気になりました。ヤンヤンの村の宴会中に鳴る電話…屋根に登らないと通話できないんじゃ?遭難した二人を助けに来た救急車と通訳…あそこは車が通れないからトラクターに乗り換えたんじゃ?簡単に入れるだけでなく観客とかグレードアップしてた刑務所のステージ…でも寂しさ倍増のパーティライトが好きさ! いろいろ書いたけど、あの当時のイメージ通りの健さんを観られて、良い映画でした。 [DVD(字幕)] 7点(2024-12-30 15:51:16) |
4. 東京ゴッドファーザーズ
《ネタバレ》 今年のクリスマス映画に選びました。ホームレスとして一緒に生活する3人。ホームレスになったそれぞれの事情…というのが、ざっくり自分の身勝手さなんですね。それが、拾った赤ん坊を助けたい一心で次々と奇跡が起きていく。 赤ん坊を拾った時から、ペンキ缶が当たりそうになる、転倒バイクに轢かれそうになる…ってわかりやすい奇跡が起きます。簡単な奇跡から巡り巡っての奇跡まで、いろんな奇跡が詰め込まれた温かい映画でした。 この映画を観たいと思ったキッカケが、春から放送されてた朝ドラ『オードリー』の再放送を観て、主演の岡本綾に光るものを感じたからです。『続けていれば凄い女優さんになったろうに、早々に引退しちゃったんだな』って。そんな彼女が恐らく最初で最後の声優をしたのが本作でした。オードリーの彼女からは想像も付かない、不貞腐れた声と独特なイントネーションがとても良かったです。 全身厚手のフル装備だからよく解らなかったけど、以前はもっとぽっちゃりしてたミユキ。父を刺した回想が面白い。横たわる父の後ろでその事件を取り上げるテレビのワイドショー。「血なんかこれで拭けばいいじゃん」美由紀からのプレゼントだけど、服装から季節は夏だし、さすがにマフラーは使わないだろう。電車で偶然会った時、父はちゃんとマフラーしてました。両親がハナたちに代わり、家が段ボールハウスになり、今の痩せたミユキになってる。この境界線があいまいな夢の表現が実に今監督らしい。 察するに夏からホームレスになったミユキ。暗殺者にさらわれた際、ここにきて自分が売られる恐怖を感じます。それまでギンに拾われたために、闇落ちせずにノビノビ育ってたのも奇跡ですね。 父の愛情を感じられなかった美由紀が、赤ん坊をさらった幸子に、必死に親元に返すよう説得する言葉が、全部自分に跳ね返ってます。 ギンが助けた行倒れ爺さんがギンと(パッと見)同じ格好してる=将来の自分。娘を難病で亡くし妻を失った医者=ギンが自分語りするときの架空の自分。 そしてギャンブル好きで身を滅ぼした泰男=過去の自分。泰男を殴って言う言葉が、そのまんま過去の自分に言ってます。そんな過去の自分(泰男)が自殺しようとする幸子に「生まれ変わって、もう一度やり直そう」と叫ぶ。奇跡的に娘に会えたギンは、今後どうするんでしょうか? ホームレスが本当のホーム(家族)を再発見する奇跡の話。だけどハナちゃんどうなるんだろ?ギンが妻のもとに帰ったらそれこそ独りぼっちです。「泣いた赤鬼」の青鬼になってしまいます。なのできっとギンとハナちゃんは一緒に暮らすのかな。 2億円当選の宝くじ。やりすぎな気もするけど“赤ん坊の命はそれ以上の価値がある”って意味かなぁ? 最後、ゴッドファーザーズ(名付け親たち)のタイトル回収も巧いです。あの子が何て名前になるか一発で解る優しさ。年末にお酒を飲んで回らないアタマには、こういうのが丁度いいんだよ。ホント。 本作のモトになった西部劇『三人の名付け親』も観てみたいですね。 [DVD(邦画)] 8点(2024-12-29 11:47:08) |
5. ダークナイト(2008)
《ネタバレ》 “The Dark Knight”『暗黒の騎士』。『ダークナイト トリロジー』と言われているように、この2作目がシリーズの看板タイトルです。前作が幼少期からのブルースウェインの成長を描いたのに対し、本作は宿敵ジョーカーとの戦いに的を絞っています。今回のバットマンシリーズの目玉が本作であり、本作の世界観を広げるための前作…と言えてしまうくらいの出来栄えです。 ジョーカーといえばジャック・ニコルソンの怪演が、懐かしくも記憶に新しくもありで、前シリーズではこのジョーカーを超える悪役は遂に登場しませんでした。そりゃどの作品もペンギンにせよトゥーフェイスにせよ“個性的でユーモラスな悪役とその組織”って、1作目と同じベクトルばかりだったので、ジョーカーを超えることはもちろん無理でした。 ユーモラスな悪役から、どこかリアルな悪役にベクトルを変えてきた本シリーズ。ニコルソン・ジョーカーとは全然別の、全く新しいジョーカーで、真正面から勝負してきました。ヒース・レジャー演じるジョーカーからは恐怖と狂気を感じます。犯罪を楽しんでいるけど、楽しいのはジョーカーだけ。そんな、交渉の余地のない絶対悪のような存在をぶつけてきました。口にナイフを入れての自分語りや偽バットマンへの暴行はゾッとします。それでいて看護師の恰好で病院を爆破するところでは、愛嬌すら感じさせます。凄いキャラクターの誕生です。こんな怪演を観せてくれたヒースの、あまりに短い生涯が悔やまれます。 前座の悪役としてスケアクロウを出してるところは、人を殺さない主義のバットマンらしく好感。何より重要人物レイチェルが、まさか…でした。恐らくトリロジーの時点で彼女の運命も決めていたのかと思うと、3部作と言いつつも、2作目への力の入れっぷりが伝わります。 ジョーカーとのガチンコバトルと思っていたところ、ハービー/トゥー・フェイスを本作で惜しげもなく登場させたのも凄い。光の騎士の最後と、それに続くタイトル回収は鳥肌モノでした。 そして、こんな完璧なものを観せたあとに、この後何をどう続けるんだろう??って不安にもなりました。 [映画館(字幕)] 10点(2024-12-23 23:01:00) |
6. ブレイド2
《ネタバレ》 “BLADE II”邦題まま。 始まってすぐ、『ウィスラー、生きとったんかワレ!…格好わる』って驚きと共に、人気あったから無理っくり続編を作ったんかなぁ?って不安も大きかったです。今度の相棒スカッドが、なかなかいい味出してるんだから、あの状況でわざわざウィスラー復活させんでも…とは思いました。 今度の敵はリーパーズ。ヴァンパイアものだから前作からホラーテイストはありましたが、口の裂け方とか結構グロい。血が噴き出すとかでなく内臓系のグロさ。この辺はデル・トロの持ち味発揮だろうか? まさかのブレイドとバンパイアの共闘がワクワクさせてくれました。それも対ブレイド用に結成された部隊・ブラッドパックってのがかっこいい。日本刀には日本刀、無口で強いスノウマンがかっこいいですね。もっと活躍してほしかったですが、呆気ない最後…。チュパの名言「地獄行きまでマン毛一本だったぜ」は当時の私の流行語大賞でした。運よく使う機会は無かったですが。 ヴェルレーヌとライトハンマーのカップルって、日本のサイバーパンク系ボンデージファッションのキャラクターがモトのハズ(作者やタイトル失念しました)。そんなワケで、この長さの映画で、一度っきりの登場にも関わらず、ブラッドパックの面々の残した存在感はかなりのものでした。 ヴァンパイアと共闘しつつも、敵にも味方にも裏切りがあったりと、気の抜けない展開が飽きさせません。裏切者がハッキリして、本当の黒幕が割れて、ノーマックが戦う意味が分かり、さぁ最後スッキリ戦うぞ!って所から、なんか期待してたのと違う展開でした。でも2作続けて満足度は高めです。 3作目はイマイチだった記憶があるので、ここまでにしときます。 [映画館(字幕)] 6点(2024-12-16 22:25:22) |
7. バットマン ビギンズ
《ネタバレ》 “Batman Begins”『バットマン~始まり~』。タイトルの通り、徹底してバットマンの誕生秘話の作品です。よく見知った姿のバットマン(完全体)が登場まで約1時間、それまでブルース・ウェインの成長物語が続きます。 この当時、過去の名作と言われたSF映画がどんどんリバイバルされていて、作品の質も玉石混交。そんな中、バットマンは前作 Mr.フリーズからたった8年。当初は『ずいぶんと期間を開けた続編だなぁ』なんて思っていましたが、まさかたった8年で新シリーズを立ち上げるとは。当時はまだ、バートン版から4作続いたシリーズの記憶が鮮明過ぎて、どうにも新シリーズを観たいって気持ちにはなれませんでした。 渡辺謙が出てる。装甲車のようなバッドモービルと、何かと関心はありましたが、公開当時の周りの反応は『地味で暗い作品』だったと記憶してます。確かに前のシリーズが独特な世界観と漫画っぽいキャラクターが印象的だったので、シリアスでリアル路線の本作に違和感を感じたのもわかります。 本作はバットマン映画であり、同時にブルース・ウェインの映画でもありました。 バットマン映画として見ると、この作品は、続く『ダークナイト』を盛り上げるための序章に思います。映画1本まるまる使った序章って言うんですかね?。最後、カードを使った次回作への続きかたは、とてもワクワクする引っ張り方でした。そしてダークナイトが期待以上の作品だったため、本作の割り切った誕生物語が際立ちます。 単体で考えると、ブルース・ウェインの映画として観るのが一番の楽しめます。コウモリのトラウマ。両親殺害の犯人への復讐心がしっかり描かれていて、とても人間らしいウェインになっています。素顔の時はウェイン産業の大富豪として、プレイボーイの仮面を被って生活をし、夜はマスクを被って悪を倒す。この逆転現象も魅力的でした。 [DVD(字幕)] 7点(2024-12-04 22:34:39) |
8. GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊2.0
《ネタバレ》 攻殻のDVDを安く手に入れて、喜んで観たらコレでした。確かに『~2.0』って書いてあるけど、ファイナル・エディションとかディレクターズ・カット版とかの、DVDの仕様だと思っていましたよ。 始まってCG素子を観て、あちゃーって思いました。で、バトーやトグサはアニメのままな事に、一つの作品として統一感の無さを感じました。どうせなら人物すべてCGにすれば良いのに…なんて思っていたら、CG素子は一部だけなのね。だったら人物は全部アニメのままで良かったのに… CG素子ですが、2008年って、まだこの程度のCG技術だったんですね。アニメパートより古臭さを感じます。 音は良くなっていると思います。オリジナル版はいま観ると、SEに古臭さというか、昔のアニメっぽさを感じます。本作は結構リアル路線な作品ですが、人が飛び上がるときに『ビュン!』とか『シュタッ!』とかって実際には鳴らない音を入れてるのが当時のアニメらしいです。本作はそこは改善されていて、銃の音とかリアリティが増しています。 でも声は昔のほうが、私は好きです。オリジナルの清掃員の会話「あんた子供いる?」「(被せ気味に、怒り気味に)いるように見える?」は、短いながらも千葉さんの名演技だったなぁ。 人形使いを家弓さんから榊原さんに変えたのは、良くも悪くもです。オリジナルの違和感も良かったし、田中さんと声質の似ている榊原さんというのも面白い。でも『だったら最初から女性声で良かったのでは?』って思いました。変える必要性がイマイチ伝わりませんでした。 5分ほど長くなっていますが、どこが伸びたんだろ?出来ればSEだけを変えた1.5を創ってほしかったかな。初めてこの作品を観るなら、オリジナル版でしょう。コッチは…観なくても。 [DVD(邦画)] 4点(2024-11-24 14:49:15) |
9. サンキュー・スモーキング
《ネタバレ》 “Thank You for Smoking”『喫煙してくれてありがとう』。 この映画のおかげで(せいで?)“ディベート”に興味を抱き、自分の中で賛成意見と反対意見を考えて競わせる…なんて脳内遊びをしてましたね。困ったことに人の話を聞いている時にも、相手の主張と逆の視点で考えてしまい、それをつい口に出して、相手を不快にさせてしまったことも…。私のレビューで、酷評書いてるのに点数は高かったり…なんてのがあったら、脳内ディベートの弊害ですね。 ケーブルテレビでやっていたのをたまたま観ました。軽快なテンポでとても面白かったです。なのでDVDを買って改めて観たんだけど、なんかイマイチ。原因は字幕でした。思えば当時ケーブルで観たのは吹替版でした。字幕ではニックのマシンガントークが、端折られた字幕に殺されてるのもあるんだけど、字幕だと私が一番好きなEGO社の一連のシーンが、あまり面白くなかったんです。ここではニックは聞き役で、社長のジェフと助手のジャックの軽快なトークが面白く、吹替版でこそ面白さが伝わります。ってか、字幕が酷すぎだと思います。文字で内容は伝わるけど端折りすぎててニュアンスが伝わらない。これじゃ映画の内容も薄っぺらく感じます。 かなり日本びいきのジェフ社長と、EGO社でデカデカと流される、シャチがアシカを襲う映像。俳優にタバコを吸わせて、観る人にカッコいいと思わせるように、シャチの残虐性を見せつけて、反捕鯨をひっくり返す印象操作の一環なんでしょうかね? でもこの映画の主題は喫煙の善悪ではなく、語り手の腕次第で人の印象がどう変わるかです。遊園地でジョーイと『バニラとチョコ』のディベートをします。「お前を説得したいんじゃない、ターゲットは彼ら(大衆)」。物事の善悪を何が決めるのか、とてもわかり易かったと思います。上院議員のように、強い意志を持って何かを決める意見は“個人の選択の自由”と言う反対意見…というか寛容な逃げ道には勝てない、大衆は選ばない。でもこの映画で大事なのは、“個人の選択の自由”って結論に至るまでの、話の組み立ての過程で、そこが字幕版では欠如していたように思います。…ディベートを扱った映画なのに。 私は選べるなら字幕を選ぶ派ですが、この映画をたまたま吹替版で観たから、素直に面白いと思いました。でも字幕で観ていたら、そこまで良い印象は無かったかもです。また最初に観た方(吹替)で良い印象を持てば、後から観た方(字幕)がイマイチでも、その作品自体の評価は変わらないものです。他の映画でも同じことが言えるでしょう。観るなら字幕か吹替か。最初に観た方の印象って大事だってことを、この映画から学びました。 ちなみに、この映画を観たときには、私は禁煙に成功していました。なので劇中に出てきたニコチンパッチの恐ろしさは重々承知しています。…説明書に書いてましたが、パッチしたまま寝ると本当に悪夢を観られますよ。 [CS・衛星(吹替)] 7点(2024-11-24 11:38:18) |
10. マトリックス レボリューションズ
《ネタバレ》 “Revolutions”『革命』。Re-volutionで、再回転とか逆回転とかの意味もあるのかも?前作にちなんで、回転式拳銃のリボルバーとも結びつくかも?と思ったけど、上手くたどり着かなかったわ。 BTTF2~3に倣ってか、前作公開から半年間引っ張って公開された本作。2までは劇場で観た当時の私は、マトリックス世界のその後に興味を失い、たしか遅れに遅れて地上波で観ました。確かに観たけど、全然頭に入ってこなかったですねぇ。 久しぶりに観ましましたが、やはり難しい話です。前作でもかなり置いてけぼりだった登場人物&世界観に、更にトレインマンとかプログラム少女サティーが出てきて、余計に整理が追い付かなくなります。 本作の見所はザイオンを守るAPU(ロボット)VSセンチネルの大群。グリグリ動くCGがすごいですが、マトリックス世界と違って『バレットタイム』や『ストップモーション』といった観せ方の工夫はなく、なんか普通のSF映画になってます。 マトリックス世界の際立ったアクションは、最後のネオVSスミスに一点集約された感じですが、銃撃戦無しの舞空術を駆使しての殴り合いなので、好みによるかもしれません。まぁ、アニメや3Dゲームから飛び出したようなロボットアクションと格闘アクションの両方が楽しめると思えば、お得感も感じられそうですが、映像革命と言われた1作目のような新鮮さは感じられず、カタルシスはなかったです。ミフネの生傷が痛々しい現実世界と、マトリックス世界の痛みの感じられない殴り合いの対比を観せたかったんでしょうかね? そういう意味では主人公をネオ(ハンドルネーム)と呼ぶ人間と、Mr.アンダーソン(本名)と呼ぶプログラムの対比は面白かったですね。 良く解りませんが、ザイオンと機械の戦争は終わりました。マトリックス誕生後、人間と機械の戦いは6回(7回?)ループしていて、今回の救世主ネオは、世界で最大の脅威となったスミスを、自分を犠牲にして倒し、ループを断ち切った(=マトリックス世界に革命を起こした)ようです。今まで世界をループさせていたのは創造主アーキテクト。ネオに革命を起こさせたのは預言者オラクル。今後の世界はサティーらが創るんでしょう。あの緑がかったマトリックス世界が、最後鮮やかな原色の世界に変わってましたね。(レビューでなく解説になってんな) まだ眠ったままマトリックスの養分になってる人間は、希望すれば開放するそうだから、今後もマトリックスで遊んでいるか、ザイオンで集会して踊るか、選べるんでしょう。ザイオン側は勝利(あれ?平和だっけ?)を勝ち取った感がありますが、機械側(電池が減る)にもマトリックス世界(人口減る)にも、あまりメリットがないように感じます。良く解りませんが… 私としてはマトリックス世界のその後なんかどうでも良くって、ネオとトリニティが幸せに暮らす世界線があれば、それで良いかなって思っていたんですが、もう世界はループしないでしょうから、これで終わりでしょうね。え続編?この先まだ何かやるの? [DVD(字幕)] 4点(2024-11-09 10:08:07) |
11. マトリックス リローデッド
《ネタバレ》 “Reloaded”『再装填』。銃に弾丸を入れ直すリロードであり、ゲームを再びやり直すRe・Loadでもあり、この世界が6巡目のマトリックス世界で、ネオは6番目に装填された救世主だった。という意味もあります。バッチリ決まってますね。 公開前から『2と3が連続して創られていて、割と短期間のブランクで公開される』と言われていましたね。1作品で完結しないのが解っている映画を観るのは、ちょっとモヤモヤしそうですが、またあのすごい映像が観られるのが楽しみで、劇場に観に行きました。 空からバイクとトリニティが降ってくる。いちいちポーズが決まっていて、最初っからカッコいいです。そうそうコレコレ、これがマトリックスだよ。そして覚醒したネオとエージェント3人の戦い。ネオ圧勝だ。イヤホン外して別行動のスミスが2人に?おぉ、良いぞ良いぞ!?今回はザイオンの描写が増えるのか、二足歩行ロボットが勇ましいねぇ~!…ん~…。うん…。ふぁ~あ… 30分近いザイオンの描写は、オープニングからの興奮を見事に中和し、まるで別の映画を観ているようでした。そりゃ2つの世界がある映画だけどね。集会のモーフィアスの演説。そっから何故かみんな踊りだすんだよね。洞窟の中でクラブさながらに、約5分も踊り狂うのさ。延々と続く踊りに、ネオとトリニティのセックスが延々とオーバーラップして…この辺で飽きちゃったって人、私だけじゃない筈だ。 いよいよスミス登場!待ってましたぁ!うわっ、増殖した!ヤバい、数がヤバい!…ん~??…なんか、この格闘って決着着くの?映像は凄いけど、お互い致命傷となるダメージを与えられてないから、格闘技の達人同士がただペチペチと遊んでるだけのように観える。 ザイオンだけでなくマトリックス世界でも難しい話が続く。キーメーカーに会う目的で、ケーキ食べて興奮する女の話を挟む意図がよく解らない(あ、ここが最後のトリニティ蘇生に繋がるのか?)。ネオとボディガードの戦いも、今更こんな、無敵の人VS格下との戦いを観せられても…って感じ。 高速の死闘は面白かったです。映像が凄かった。銃撃を受けた車の穴の空き方、ボンネットからジャンプするエージェント。こういうのをたくさん観たかったのさ、これがマトリックスだよ。モーフィアス&トリニティVS双子VSエージェントの、どっちが勝つかわからない感が良いのさ。ネオは強くなりすぎて、負ける気がしなくて緊張感がないのさ。やっぱ普通のエージェントとの戦いが、バランス的に見応えあるわ。双子は今後も出てくると思ってたけど、アレで終わり?ちょっとスッキリしない最後。 映画はこの先も続くんだけど、高速の死闘がピークでしたね。ただでさえ凄い力を持つネオが、直接心臓マッサージに現実世界での超能力と無茶振り観せるから、最後の方ついて行けなくなってました。前作もネオが凄い力に目覚めて終わりますが、単発作品として舞空術もアリだったんです。今回、舞空術以上の凄いものを観せなきゃって思ったんでしょうか、続編の前フリとして、やりすぎてしまったと思います。 [映画館(字幕)] 5点(2024-10-23 23:09:27) |
12. デッドコースター
《ネタバレ》 “Final Destination 2”そのままで良いのに何この邦題?配給会社の新人に付けさせたの?ってくらい、あれれなタイトルです。 『大事故を免れた人々が、運命付けられた死を回避できず、順々に死んでいく』というプロットが優れています。工夫次第でいろんなバリエーションが創れそうです。今回はハイウェイの多重衝突事故。まぁ飛行機事故=ほぼ100%死ぬことを考えると、交通事故ってそこまで、関係者の死亡率高いか?って思いますが、日常で誰にでも起きうる死なので、良い着眼点だと思います。 また事故当日を『晴れてるけど路面が濡れた朝』にしています。撮影のため、わざわざ数百m~数kmもの路面を濡らしたと思うと(いやCGかな?)、制作側のちょっとしたコダワリが感じられて好感度高いです。ってか、後半に出てくるハイウェイの路面も濡れてます。単に季節的な気候現象なのかな? 大惨事は一瞬でしたが、「つぶせ!つぶせ!」のスクールバスや、ミニカー2台をガッチャンガッチャンしてる子供とか、事故に至るまでの不吉な予兆も、イイ感じにイヤな感じです。前作では、人によってはアッサリ死んだんですが、本作ではまるで『こんなアンラッキーな死に方はイヤだ』のオンパレードです。じわじわ迫る死を、どうにか回避…したと思ったら突然死。って感じで、本作では特に拘ったポイントだったんでしょうね。 クレアが精神病院に自主入院しているのは、悲惨なその後が伺えて良かったですが、あっさり死んでた主人公アレックスは、もう少し深堀りしてほしかったような…レンガが頭にって…。 後半けっこう雑です。せっかく再登場のクレアの最後、正直印象薄かったです。死神が1年掛けたミッションが、ようやくコンプリートしたんだから、達成感的な何かがあっても良いような気もしたけど。死を回避するには新しい生命の云々…も、無理やりなこじつけ感が強いかな。そもそも自殺は出来ないのはユージーンが実証済みだし。まぁ、結局はそれが正解じゃなかった。って結末でしたね。 [地上波(吹替)] 6点(2024-10-17 22:40:41) |
13. スパイダーマン3
《ネタバレ》 “Spider-Man 3”邦題まま。三部作として創られた完結編です。 過去2作品で見慣れた登場人物たちの、安定した掛け合いが気持ち良い。やっぱ新聞社とピーターの大家さん達とのやり取りが面白い。新キャラ・エディにグウェンも作品世界にすぐ馴染んでたわ。ただね、マルコがベン伯父さんを殺したって設定が今更出てきて、そこは後付け感が…。2の最後で3のヴィランはハリーのゴブリンだなって思ってたところ、サンドマンを出したもんだから、ピーターが戦う理由が必要と考えたのかもしれない。それが効果的だったかどうか?更にヴェノムまで出てきて驚いたわ。ヴェノムって映画の主役やってたのは知ってたから、相当人気のあるキャラだと思うけど、まさか最終作の後半に出てくるとは思わなかったわ。 整理すると本作は敵が多く、メインのサンドマン&ヴェノムに、ハリーゴブリン。ブラック・スパイダーマンとしてピーター自身の葛藤も描いているから、実質4体もの敵キャラが登場。これがきちんと整理できていたかというと、どうかなぁ? 序盤はマルコ/サンドマンの家族構成や誕生に時間を割いたのに、終盤は単なるモンスターとして中ボス化し、途中からポッと出てきたヴェノムがボスキャラ・ポジションになってしまった。そもそも、ヴェノムってもっと見せ場を作れるヴィランだったんじゃないかな。本作がシリーズ最後だから入れましたって感じで、ちょっともったいない気がしたなぁ。サンドマンだけで良かったんじゃないかなぁ? ハリーが最後味方になるのはアツい展開だけど、敵対→記憶喪失→記憶回復→共闘→最後。と忙しい。ってか周りに振り回されて可哀想に思える。記憶を失ったハリーを見たピーターが“あれ?このままイケんじゃね?”ってしたり顔に見えて…けっきょく、一番記憶に残るのは“調子こいた主人公”だ。街の人気者だと浮かれるピーターにスパイダーマン。ブラック化して腰振って踊りまくるピーターの滑稽さと勘違いっぷりが痛々しかった。 アクションは素晴らしい。キャラも素晴らしい。でも時間配分が内容に見合わない。1のときに思った「長いなぁ」って感じはなかったけど、なにか物足りなさを感じてしまった。 [DVD(字幕)] 5点(2024-10-08 22:35:21) |
14. ファイナル・デスティネーション
《ネタバレ》 “FINAL DESTINATION”『最終目的地』。空港でアレックスのスーツケースに付けられる荷物タグに書いてます。『FINAL DESTINATION CDG(シャルル・ド・ゴール空港) PARIS,FRANCE』 後にシリーズ化され、『死のピタゴラスイッチ』なんて言われるようになりますが、実はピタゴラスイッチ放送開始前の本作。この当時のホラー映画って、ジェイソンみたいな殺人鬼物は出尽くした感があり、コメディや宇宙生物(CGが見どころ)と融合した変化球だったり、呪いや幽霊でゾッとする恐さ表現(出血少なめ)にシフトしていた感があります。そんな時代に本作は、グロい死に様を前面に出した、かなりド直球なホラーの成功作でした。 公開時の予告でテリーがバスに轢かれるあまりに突然っぷりに『あ、これ怖そう…』と思わせた作品。なのでビビリの私は劇場で観る勇気がなかったですね。 序盤の空港から飛行機事故までの一連の流れが出色の出来です。雷雨の中の離陸、巨大な飛行機の先端の剥げ具合、飛行機ドア横の傷と舐めたネジ、翼の煤け具合…空旅が苦手な人は、こんな些細な情報を自分から拾って『この飛行機大丈夫か?』って思ってしまうんですよね。 そこに追い打ちをかける不安要素。変な宗教家、墜落死を連想させるジョン・デンバー('97年死去)、たまたま開いたページがダイアナ妃の事故写真(パリ)、空港作業車の車体番号が666(ありえん)…不吉のフルコースですね。ちなみに出発前、アレックスがお守りとして敢えて付けてた荷物タグはJFK(空港)のものでした。ママに外されたけど。 飛行機墜落をアレックスの予知夢として、乗客視点で観せる演出も墜落の恐さ満点です。炎に巻かれ皮膚がパチパチと焼ける音、全身焼かれてもまだ生きてる様子が生々しく、肺が熱風で満たされる苦しさを感じました。実際の事故は遠影で小さく観せるのも旨い演出ですね(でも流石に、空港ロビーのガラスは砕けないだろう)。劇中では架空のヴォレー航空になっていますが、事故の経緯は'96年のTWA800便墜落事故をベースとしていて、なるほどリアルです。 トッドの父の逆恨み、ルートン先生がラリー先生を先行させたことで心を病むところとかも人間臭いですね。アレックスがクレアの写真とエロ本を見比べて何かを感じてるところもいい。事故直後、クレアだけ空港に迎えが来ない時の寂しそうな表情も良かった。クレアの部屋にエッフェル塔の置物が幾つかあって、お土産で貰ったのか、自分で買ったのか、彼女のパリへの思いもちょっぴり感じられました。トッドの兄やクリスタとブレイクの学校のマドンナ・コンビ。ずっとフランス語のラリー先生。飛行機に赤ちゃんと障害者。チョイ役もきちんキャラが立ってます。 最後は試写会の不評から半年後に撮り直したというエンディング(こういう事してしまうのが、ハリウッドの凄さだよね)で、タイトル回収…でも悪夢は続くよってホラーらしい終わり方。 うわ、メインのホラー部分について何も書けなかったな。けど『良いホラー映画観たなぁ』って満足感に満たされました。 [ビデオ(字幕)] 8点(2024-10-07 11:41:51) |
15. スパイダーマン2
《ネタバレ》 “SPIDER-MAN 2”大文字か小文字か、悩ましいところです… 前作で「…面白いけど長いなー」って感じましたが、本作は普通に面白かったです。上映時間は長くなっていますが、前作で感じた、重たいメインディッシュの連続感はなく、話の組み立て方にメリハリがあったと思います。 スパイダーマンの独特の動き。前作ではどうも、スローモーションを活用した体捌きが、マトリックスのインパクトに引っ張られたんだろうなぁって印象でしたが、今回きちんと蜘蛛っぽい(=スパイダーマンらしい)動きに磨きがかかってきた印象です。特殊能力が消える&引退を考える。というのはヒーロー物の定番ですね。そんな定番をサム・ライミは、このスパイダーマン・シリーズに上手に落とし込んでいます。 あと監督が好きなコメディ要素も若干増えてます。デイリービューグル新聞社の個性的な面々のやり取りが微笑ましく、なんかず~~っと観てられます。秘書?のブラントが意味深ですが、原作ではピーターの初恋人だったんですね。 懐かしい“スパイダーマンのテーマ”。'67年版スパイダーマンのアニメが存在しない世界で、前作ではエンドロールに入れてましたが、本作では劇中、路上ミュージシャンが歌ってます。思い切った演出ですが、本作はスパイダーマンの決定版だと思っているので、なんか納得してしまうんですよね。 今回多くの人に正体がバレます。電車のNY市民は彼の正体を見なかったことにし、体を張ってスパイダーマンを守ろうとするシーンは胸が熱くなります。そしてMJは彼の正体に納得し、ハリーは驚愕します。続きが気になる展開です。 敵はドクター・オクトパス。アームの中心に太ったオッサンが居るビジュアルは、見た目的に中ボス感が漂うんですが、3部作の真ん中として『次の敵はもっと凄いぞ!?』って割り切ってる感じがして、案外納得してしまいました。そして映画の最後に次の敵が…おぉ、そう来たか!って、凄くテンション上がりました。続き物の真ん中って、あんまり『この続きは次作で!』パターンを入れすぎると、満足感が減って消化不良を起こすんですが、こと本作の終わり方は、適度な満足感と、続きが気になる度合いのブレンディングが巧かったと思います。 最後、川に沈んで大惨事を防げるって理由がイマイチわかりませんでした。どうして??あと、結婚式当日のドタキャンは、ウエディングドレスで駆け出す画的なインパクト(使い古しではあるけど)は良かったけど、特段欠点のない婚約者ジョンに説明もなく、MJが一方的に逃げただけなので、MJ嫌いな人はますます嫌いになったでしょうね…2作続けてノーブラで頑張ってるのに。 [DVD(字幕)] 7点(2024-10-06 11:35:52) |
16. スパイダーマン(2002)
《ネタバレ》 “Spider-Man”邦題まま。小さいころ東映のヒーロー物でやってましたね。そのためスーパーマンと並んで馴染み深いヒーローでした。 サム・ライミと言えばB級ホラー映画監督のイメージが強いのに、こんなメジャーなアメコミ・ヒーロー物を、それも巨額な制作費を掛けて撮るなんて!と当時驚いたものです。…そう言えば同じB級ホラー監督だったピーター・ジャクソンも、同じような時期に超大作の監督に抜擢されてますね。ハリウッドがそんな動きをしていた時期だったんでしょうか? ひ弱な苛められっ子のピーター・パーカーが新種の蜘蛛に噛まれ、超能力を手にし、謎のヒーロー・スパイダーマンとして成長していく。サム・ライミ監督なのに、奇をてらわない、とてもオーソドックスな展開に驚きました。原作は知りませんが、あの有名なスパイダーマンの映画化として、ディープなファンも、にわかファンも、一般人も、みんな納得して受け入れられる作品だったと思います。 叔父の死、片思いのMJとの関係。親友ハリーとその父とMJの複雑に入り組んだ気持ちと関係。グリーン・ゴブリン=ノーマンの心の葛藤を、本作の一貫したテーマである『大いなる力には、大いなる責任が伴う』を絡め、一本の映画に上手くまとめていると思います。 MJのキルスティン・ダンストに批評があるようですが、スパイダーマンとのキスシーンや、ピーターに女優でなくカフェで働いてるのがバレた時の表情なんか、私はとても好きです。 さて、エピソードのどの部分も、スパイダーマンを創るに当たり必要な要素に思えるし、上映時間も長すぎない。だけど何故か個人的にダレてしまいます。初めて観たとき「…面白いけど長いなー」と感じ、恐らく6回目くらいの今回の視聴も、やっぱり同じ感想を持ってしまいました。上映時間は決して長くないのに、不思議。恐らく『トラブル発生→スパイダーマンが解決』のエピソードの積み重ねの、一つ一つがそれなりにボリュームがあって、つど満足してしまうから、それが積み重なって、全体を通したとき、過剰な満腹感になってるかな?って。 クドクドと自己分析すると、“オズコープ社の平和の祭典”からの、グリーン・ゴブリンによる“新聞社襲撃”あたりからクライマックスに流れていっても充分満足だったところ、MJとのキスを挟んでの“火災現場の戦い”。これだけ派手な戦いでもクライマックスにならず、叔母さんとハリーとMJとの関係を深堀りしての“ロープウェーでの決戦”で、やっとクライマックス。個人的に映画2本分くらいの情報量で、言い換えるとフルコース2回分の満腹感に感じてしまいました。 良い映画、面白い映画と認めていても、どうにも苦手ってあるものですね。このスパイダーマン辺りから、クライマックスの連続で、満足感でなく満腹感(お腹苦しい)を感じる映画が増えてきたと思います。 [映画館(字幕)] 6点(2024-10-05 18:24:00) |
17. キング・コング(2005)
《ネタバレ》 “KING KONG”と大文字になりました。 '76年版は現代劇として制作されていましたが、本作は'33年版オリジナルを、時代そのままに踏襲しています。 この辺りからでしょうか、ハリウッドが送り出す大作映画が、美麗なCGがウリなだけのリメイク作品やシリーズものばっかりになってきて、個人的にちょっと、食傷気味になってきたんですよ…。本作もそんなイメージで、美麗なCG以外のウリが、'76年版と違ってオリジナルのリメイク…くらいなんですよね。 でもけっこう高評価の作品のようですので、そういう意見もあるんだぁ~程度に読み流してください。 33年当時のニューヨークの街の再現度。オリジナルキャストの名前を出すお遊び。不気味な巨大昆虫。静まり返った公園の池で滑って遊ぶコングとアンなど、良かったシーンは結構あります。…ほとんどCGしか褒めてませんが。 エンパイヤステートビルの創り込みは、'33年版のビルの再現度の高さを再認識させてくれました。 ジュラシック・パークで見慣れたCG恐竜ですが、キングコングの恐竜はどこかヌメヌメした印象で、制作チームが違うと表現方法も変わるんだなって、勉強になりました。そしてオリジナルでは割愛されたらしい、巨大昆虫が気持ち悪いです。とても気持ち悪いです。次々襲われる船員。あんな島で、あんな虫に殺されるのは勘弁してほしいですね。 オリジナルと違い、アンとコングが相思相愛となっていて、この辺'76年版の影響かなぁ?'76年版を見慣れた私には、こちらの方がしっくりします。でも言い方を変えると、恐竜や昆虫以外、あまり代わり映えのない内容だなぁ…って思ってしまいました。 アンを握ったままジャングルを疾走するコングに、アンが潰れたり頚椎損傷しないか心配になりました。当時USJのアトラクションでも作ろうしたんでしょうか?そんなスピード感演出でしたね。(※アトラクションあったみたいです) プロントサウルスがゴロゴロと坂を転げ落ちるシーンは、まるでAIが造った、動く肉の塊の映像みたいです。そもそも、あのシーンの必要性が判りません。ラプトルみたいな肉食恐竜も一緒に走ってますが、別に踏まれる危険を犯して並走しなくても、一番足の遅いプロントサウルスを捕食すれば良いだけでは?って、冷めた目で観てしまいました。こちらもアトラクション化を意識しての演出かな? 一番の欠点は、上映時間が長いんですよ。オリジナルが100分のキングコングに188分も掛けるのは、時間管理と映像の取捨選択が下手だからだと思います。 例えば船の衝突の場面。見張りのジミーが前方に壁を見つけて叫ぶ。で船長が壁を目視して機関停止を命じるまで、何と20秒も掛かってます。長すぎです。壁を見つけてから座礁するまで4分近く使ってます。時間取りすぎです。キングコングを観に来たお客さんは、貨物船の座礁なんて、別にじっくり観たい訳じゃないんです。きっと他の監督なら30秒で終わらせたでしょう。 キングコングの前で起死回生のパントマイムするアンは予想外の動きで可愛いんですが、序盤の舞台で踊る映像は酷いもので、放り投げた帽子のキャッチは観客の背中や別カット割りで誤魔化す。アンが倒れ込むアクションすら別カット。何か「役者が頑張ってないなぁ」って印象を持ちました。 ジミー少年と育ての親ヘイズにも時間を割いていますが、2人で本の解釈を語り合う場面って必要?どんな裏設定でも構わないけど、2人のシーンは全カットしても全く問題なかったですね。 コングの最後を見たデナムの「美女が野獣を死なせたんだ」のセリフ。これオリジナルではコングの片想いだったから、意味があったと思うんですよ。相思相愛にしちゃった本作では、やっぱり飛行機がとどめを刺したって事になると思います。デナムは知らないけど、本作のアンは体張ってコング守ろうとしたし。 良いシーンもあったし、CGはお金掛かって綺麗。本作の出来に腹は立ちませんが、もう50分短ければ、もう1点追加しても良かったです。 個人的な見解ですが、ピーター・ジャクソンって何故か大御所感がありますが、ブレインデッドのカルト的高評価で、実力以上の仕事を任されてしまった感が拭えません。彼をメジャーに押し上げたロード・オブ・ザ・リングって、あれだけメジャーな原作で、上映時間と制作時間、制作費と宣伝費を掛けたら、誰が創っても、アレくらいはゴージャスになるような気がします。そんな流れで、メジャーなオリジナルがあって、同じように時間と費用を掛けた本作。その後はまたロード・オブ・シリーズの尻尾のホビット…身の丈にあった上映時間と制作費の、オリジナル作品を観てみたいものです。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2024-10-02 18:51:41) |
18. 沈まぬ太陽
《ネタバレ》 所有するDVD(未レビュー)の中で、一番上映時間の長いのが本作でした。原作もかなりの長編小説で、大きく3編に分かれているとのことで、最初は戸惑った各時代を行ったり来たりする映画の構成の理由が、何か納得できました。ただクライマーズ・ハイも時代が行ったり来たりしたっけ。 私は、アフリカ編の前段に当たる、労働組合と会社の闘いが一番興味深かったです。ストをタテに賃上げ要求(年末4.2?まじか…)に、時代と労働者側のエネルギーを感じ取れました。また会社側の陰湿な報復人事も巨大企業らしく、特に八木の扱いがあまりに酷くて怖くなりました。会社と労働者の闘いから、会社からの個人攻撃になるんだよな、恐ろしい。会社側の御用組合を創るところも、その経緯が裏側から観られて、とても興味深かったです。 御巣鷹山編がこの映画のメインだと思いますが、主人公の恩地は遺族係なので、会社や他の労働者のための大きな活躍をしません。あの労使交渉で、労働者の正当な賃金と空の安全を確保出来た。その報復として、恩地は海外の僻地に左遷された。にも関わらず『やっぱり事故は起きました。』では、どうにもスッキリ出来ないところ。遺族会の分断を図る行天の卑劣さが増していき、じっとりとした巨大企業の闇は感じられました。 会長室編でスカッとしたいところですが、行天という人物が、この時のために悪い方に育てられた人身御供でしたね。スタートは一緒だった恩地と行天。2人は国民航空の表と裏の関係なのでしょう。 3時間超えの超大作で、飽きずに楽しめましたが、3編それぞれが違うテイストのため、一本の映画としては平坦な印象でした。 [地上波(邦画)] 5点(2024-09-06 12:01:33) |
19. 東京タワー オカンとボクと、時々、オトン(2007)
《ネタバレ》 オカンにゲロシャワー、「私にも写せます(当時のCM)」からのフライパン一撃。こういう路線か。当時ブームだった'60年代ノスタルジーとちょっとオーバーなコメディの融合。少年時代は炭鉱町の再現度も素晴らしく見応えがありました。 オカンも樹木希林と雰囲気の似た女優さんだなと思っていたら、内田也哉子だったのか、劇中のオカンがスゴく違和感なくお年を召したので、ちょっと不思議な感じで良かったです。 ボクが大人になるにつれ、平栗くんのモヒカン辺りからオーバーなコメディ色は減っていき、徐々に観ていて辛い闘病ドラマになっていきます。自由奔放なオトンから離れて、女手一つでボクを育て、内職、料理屋と働いたお金で仕送りするオカン。ボクの誘いでアッサリと東京に出てきてしまうオカン。地元に未練とか無かったんだろうか?精一杯頑張って生きてきて、なんであんなに苦しんで死んでいかなければならないんだろう。ベッドの上で苦しむ小さな身体を観て、恐らく多くの人が自分の母親とダブらせて観てしまうことでしょう。そして順番からして先に逝く母親に、いま、どれだけ親孝行ができるだろう?と考えるでしょうね。 タイトルの東京タワーの意味が、ちょっと解りにくかったです。オカンとボクは、いつか東京タワーに登ろうと約束をします。それほど重要なイベントでもなかったと思いますが、ミズエと別れたためか、オカンの生前は果たされることはなかったようです。東京タワーは、行こうと思えばいつでも行けたけど、結局行けず終いになったことの象徴でしょうか。後悔のない生き方とは、思いつく限りの、そんな些細なやり残しを、一つ一つ果たしていくことの積み重ねなのかも知れません。 最後にボクがオトンに「仏像の絵がほしい」というけど、オトンは「描き上がったらの、もうちょっとや」と。そういえばオトン、船の模型ももう少しで完成するのに、やめてしまっていましたね。8mm撮っても映写機がない。そして未完成の東京タワーとの写真。東京に弾き飛ばされ、地方に出戻ったオトン。敢えて色々をやり残すことで、未練は多くても後悔の少ない生き方をしていたのかも知れません。 [CS・衛星(邦画)] 5点(2024-09-05 21:10:00) |
20. チャーリーズ・エンジェル(2000)
《ネタバレ》 “CHARLIE'S ANGELS”『チャーリーの天使たち』複数形です3人組です。 女の子たちがコスプレしてスパイ活動し、悪い男をなぎ倒し、イイ男を誘惑する。女の子だけのチームものの元祖かもしれません(※詳しくないので想像です)。そんな人気テレビドラマ('76~)のリメイク映画です。 リメイク作品ですが、当時はまだまだオリジナル作品も元気で、CGであれもこれも表現できるとハリウッドが活気のあった時代。ネタ切れ感で惰性で創られた作品というより“今の時代だから出来る往年の名作のリメイク”と言った意味合いが強かったかと思います。 …まぁ、この先10年以上も名作リメイクばっかりの時代が続いてしまうんですが… 3人のエンジェルは当時の“時の人”でしたね。盤石の人気のキャメロンに、子役時代が懐かしいドリュー、最近良く観るルーシーと、彼女たちが選ばれた理由も納得です。オリジナルは全員白人だったのを、白・白・黄に。日中アジア市場を狙って(だと思う)ルーシーを入れてますね。あくまで勘違いニッポンですが… ワイヤーアクションでフワ~~~っと飛び上がって足伸ばしたら敵に当たる。スローモーションでくる~~んと回転して敵を倒す。痛みが感じられないアクションの、ゆるフワ作品ですが、女子ウケは良かったです。 例えばセーラームーンも、戦闘が迫力あるとかでなく、日常のほのぼの感と、変装してゴージャスな大人の世界に足を踏み入れるドキドキ感がメインで、彼女たちが華麗に戦うまでの前置きを楽しむ作品です。本作はそこがよく解ってた作品だったと思います。私はちょっと物足りなかったけど… [映画館(字幕)] 5点(2024-09-01 12:46:15) |