1. 萌の朱雀
叙景のなかに、死も、恋も、悲しみも、全部。そんないかにも日本的やりかたを、若い監督が無批判に踏襲していることに、最後まで疑問であります。映像は悪くないが、西日本の田舎はあんなに静謐ではない、と声を大にして言いたい。ということは、リアリティーなんてそっちのけなんであります。つくりあげられた郷愁。そうであるということに無自覚で、ゆえに突然出てくる村の人々たちのスナップがとても鼻につきます。死の直前の8ミリなんて、どうだか。若い人がこういうものを撮る、ということが、危険なんであります。ただ、ただ、尾野真千子が大発掘。惚れちゃいました。 6点(2003-07-19 23:21:30) |
2. シカゴ(2002)
アメリカ最高と泣きたくなる。アメリカじゃないと作れへん、こんな映画。人間の暗部も複雑な筋もいらへんねん。そんなんこだわるなら、しかめっつらして本でも読んでて。筋もペラペラ。人間の作りこみも平板。だが、ここにはエンターテイメントがあり、男優がいて、女優がいる。映画は虚構。映画はサーカス。ストイックなプロ根性にスタンディングオーベーション。アカデミー賞は捨てたもんじゃない。 10点(2003-06-07 23:04:09) |
3. SWEET SIXTEEN
リアリティーと物語は共存するという、最高のお手本。うそ臭さゼロ。ハリウッドのどんな作品よりも物語がよい。基礎体力の違い。愛国心の違い。映画への信頼ゆえに。だから泣ける。絶望というのではない。人間への愛情の差というものだね。DVD出たら、買います。というかケン・ローチBOXを! おふくろの財布から盗んでも是非! 9点(2003-02-15 23:21:56)(良:1票) |
4. 地獄(1960)
ストーリーをどうこう言うのはナンセンスであるし、地獄はどう見たって場末の浜場だ。ちっとも恐くなんかないや。皮剥ぎの場面だってスイカ割りの要領だ。ドリフばりの大笑いと隣り合わせの底深い虚無。苦悩ゆえではない。運命のためでもない。根本的認識が思いっきりずれている。目をつむりながら、たやすく死を受け止め、いいことしたのに地獄へ行って、その罪苦をつぐなう。さすが日本人! カット、カットも良いです。 8点(2003-02-15 22:35:45) |