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主人公の髪型同様、「地下鉄のザジ」を髣髴させるポップでキュートな映像がオモチャ箱をひっくり返したように画面に横溢されているのみならず、心臓がバクバクしたり、体が溶けて無くなったり、と電波少年みたいなことをやってもその演出が単なるギミックに陥っていないのは、各登場人物の「好きなこと」及び「嫌いなこと」に象徴されるように鋭い人間観察力に裏打ちされたジュネの人間そのものに対する視線がいつものようにどこかグロテスクな意匠を纏うことないがゆえ、所謂「キャラが立っている」からであって。各登場人物は皆何かを喪失しているようだが、喪失したものを得ようとするとき、客観的に見れば大したことなくても、主観的には大いなる一歩を踏み出さねばならないわけで、アメリはその一歩にほんの少しだけ後押しする、世界はもっとシンプルだよ、と。かくいうアメリもこと自分の恋に関しては奥手でその一歩が踏み出せないんだけど、誰もが多少なりともこういう経験ってあるんだよね、とシミジミ思える類の映画・・・のみではない!ラストのアメリとニノの笑顔を見てたら胸の奥から熱いものが堰を切ったようにこみ上げて来てしょうがなかった。本作を見終えた後は、いつもと同じはずの町の風景が少し違って見え、いつになく友達の顔が見たくなり、若しあなたが恋をしているなら、その相手には必ずこう聞きたくなるだろう「あなたの好きのものは何?」と。それとこの監督、音楽というよりノイズも含めた音そのものに対するセンスと拘りが実に素晴らしく、例えばアメリがカットアップして作り直した手紙をマドが読むシーンにザッピング音をかぶせたりするところなどは白眉。
【ダイ】さん 9点(2002-03-17 22:24:21)(良:1票)
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