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『彼岸花』という「映画」の楽しみ方って何だろう? 「映える」。例えば、画面奥の玄関口に置かれた真っ白な陶磁の花瓶や、いつも部屋のどこかに配置されている真っ赤に塗られたやかんやラジオなどの小道具のさりげない存在感を、さらには、襖に映し出される(見えない)庭の池の揺らめく反射など小津独特のこだわりの空間を楽しむことではないか?
「画く」。例えば、これら隅々まで目の行き届いた色彩豊かな空間において、男たちは、酒やタバコを手に、座敷あるいは会社や飲み屋の椅子にどっかりと腰を下ろし、手前勝手な理屈と淋しき本音をぼそぼそと口にするしかまるで能がない。これに対し、女たちは、感情を露にし、早口でまくし立てるだけでは飽き足らず、画面の手前から奥へと配置された廊下を小走りに嬉々として行き来する(その優美で艶やかな躍動感!)。そんな男と女の関係のアイロニカルな転倒を楽しむことではないか? しかし、なぜ、本作には原節子が出てこないのだ? その謎を解明する楽しみだけでも、本作は、最低3回は観返すことが出来る。ああ、小津の映画って、楽しくて奥が深いよなあ。←などと調子に乗って書いていたら、今夜の『秋刀魚の味』の放映を観逃してしまったよ!なんてこったい。 【なるせたろう】さん 10点(2003-12-11 20:28:27)(良:2票)
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