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森の中で「カリスマ」と称される木をめぐって人々が争う。その主張はわかりやすく3つにわかれるがその部分だけ見れば「共生」がテーマとなるのだが、ストーリー上の本当のテーマは冒頭で語られる「世界の法則を回復せよ」と「カリスマ」をめぐる争いがどう関係してくるのかを紐解いていけば浮かび上がってくる。「規則」ではなく「法則」ということは、人間が人間の都合で生み出した様々な法や規則、あるいは理性や概念というものが様々な歪みや弊害を生み出した今、この世界を自然の摂理にもどせ、ということ。その結果世界が終わることをも許容する「カリスマ」の存在をこの作品は描いてゆく。「カリスマ」が木から役所宏司へと受け継がれる展開は『CURE』の伝道師の役目を萩原から役所へと渡された展開に似ている。しかし終末を許容する存在を明確にすることで『CURE』では描かれなかった終末がとうとう描かれてしまう。恐るべき終末映画。とは言うものの私がこの映画に惹かれたのはストーリーと画と演出がバラバラなところだったりする。ストーリーとは裏腹に気を失った役所を引きずる画といい、療養所の未亡人の存在といい、いや、佇まいや歩く姿まで、さらには家や森までホラー色全開で見せる。かと思えば木(カリスマ)が燃やされた後のカリスマでもなんでもない木をめぐる人間の描写はコメディそのもの。この綿密に計算されたかのようなバラバラ具合にたまらなく惹きつけられるのである。 まるでこれまで培われてきた映画の規則に対する「映画の法則を回復せよ」という黒沢清の声が聞こえるようで。
【R&A】さん [DVD(字幕)] 7点(2005-12-14 14:19:25)(良:1票)
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