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《ネタバレ》 お金をかけて撮った大作らしい大作で、見応えは十分。ただ、盛り上がりが散漫で、見栄えのする素敵な役者を集めて並べただけ、という印象もまたぬぐえない。CGによる戦闘シーンも最近は食傷気味。とは言え、アキレスを演じたブラット・ピットはさすが。輝かしい不死身の英雄ではなく、あくまで動物的な勇者という感じがして面白い。鍛えた肉体もすごかったし、武術的に完成された動きも上手い演出だ。アキレスと正反対の、国のため家族のために戦う英雄ヘクトル王子も上手い。エリック・バナの地味で寡黙な雰囲気が、悲壮感を盛り上げて迫力がある。妻に何度も、逃げ道は覚えたかと尋ねる場面は、なかなか泣ける。そして何より感動したのが、ピーター・オトゥールのトロイ王プリアモス。なんというか、威厳と慈愛を持ってはいるが輝きと強さを失っている、まさに「滅びるべき運命を迎えた国の王」そのものなのだ。プリアモスがヘクトルの遺体を帰してくれるようアキレスに頼む場面は、まさに名場面である。すべての元凶となったパリス王子の軽率さ・幼稚さや臆病ぶりがまたすごい。けれども物語の中でほんの少しだけ成長をする。そこがいい。かの三部作で美しく完全無欠なキャラを演じたオーランド・ブルームが、同じ弓矢をつがえながら、ここまで情けないキャラに扮してくれるというのも、なかなかツボだった。配役をした人に拍手したい。配役といえばショーン・ビーンのオデュッセウスも素晴らしい。大国の強引な侵略戦争に、小国の王として心ならずも従わなくてはならないが、従うとなったら策謀を巡らせ友を引き込むことを厭わない。仕方ないんだよと言いながら、これ見よがしな苦悩を見せるわけでもない。ずる賢そうな顔をして、しかし、その両肩になにがしか重みを背負ってるようには見える。物語の中で、一人冷めたオデュッセウスを演じたショーン・ビーンは面白い役者だ。彼の語りに始まって終わる演出は、なかなか良かったと思う。トロイ戦争とはむろん「愛のための戦い」ではなく、侵略戦争である。そこには、オデュッセウスも語るように「名を残す」ことへの渇望と、本能的に戦争・戦闘を嗜好する男たちの欲望がある。女たちの人生は眼中にない。だから、戦いを嗜んだアガメムノンとメネラオス、そしてアキレスが死に、戦いに背を向けたパリスとヘレンが逃げ延びるというのは、満足すべき結果なのかもしれない。
【ルクレツィアの娘】さん 8点(2004-05-23 23:00:50)(良:3票)
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