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この映画は暴力的で、自制心に欠ける。また、聖書にない描写があって、非常にうるさい。特に冒頭の、イエスが実際に傷を治す奇跡を起こすシーンは、不要なので削るべきだ。この映画を観て、あらためて文字の力を実感した。聖書を何度も読み返し、イエスの苦悩やマリアの嘆きや弟子たちの弱さ、ローマ兵の残虐やユダヤ祭司たちの醜悪さに触れる。男の弟子たちは逃げ、女の弟子たちだけが処刑の場を見守っていたこと。偶然に通りかかってイエスの十字架を共に担いだクレネ人シモンのこと。後に初代ローマ教皇としてあがめられるペテロがした、3度の否認のこと。十字架の下でさいころに興じていたローマ兵のこと。そして、イエスの言葉。すべてが短い描写だ。けれど読むたびに、人の弱さと醜さと強さと優しさについて考えさせられる。ほんの一行の描写について、あとから気が付くことがある。私はキリスト教信者ではなく仏教徒である。だが、聖書の持つ強さには敬服する。そして、キリスト教徒たちが制作した膨大な絵画についても感嘆する。有名無名を含めて膨大なキリスト教の絵画と並べたなら、この映画は、単にその一つに過ぎないような気がする。聖書の持つ普遍的な強さはない。映像と合わさることによって、心に響いてくるイエスの言葉はあるけれども、そう考えるには、この映画の方向が何か違う。私はこの映画を観ていて、フランス映画『ゴルゴダの丘』と比較してしまった。ほぼ同じ部分を描きながら、両者の印象はだいぶ違う。白黒とカラーの差異だけでなく、監督の精神のあり方だと思う。
【ルクレツィアの娘】さん 3点(2004-05-04 11:44:01)(良:1票)
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