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冒頭、カメラが水平に移動してくると座頭市の姿を捉え、その後で「勝プロダクション第一回作品」のテロップ。この冒頭の座頭市が例によって、スルメだか何だかをガシガシ食っており、やっぱり座頭市って――というより勝新太郎という人には――健啖家のイメージがありますね。大胆不敵な生命力、みたいなもの。これを、映画の画面に叩きつけてみせる。
これも例によって、タイトルの「牢破り」の意味はわかりませんけれども(誰がタイトル決めてるんだろう?)、監督が山本薩夫。社会派の印象が強いですが、『忍びの者』なんかでアクション作品もこなしてますしね。 監督が効いたのか、勝プロ第一回の意気込みが効いたのか、一筋縄ではいかないヒネった作品になっています。座頭市が反省を迫られる展開。前半の座頭市は、「世の中の役に立たないヤツは大嫌い。大嫌いなヤツは殺さなくちゃ気が済まない」などと嘯いている。 そういや話は飛びますけど、『トゥルーライズ』という作品は、キャメロン監督が明らかに軽薄さを意識して作っており、『ターミネーター2』で忌むべきものとして描いた核兵器を敢えてオチャラケ風に扱っているのもそうだけど、シュワ演じる「平凡なパパ」が、今までに殺したのは悪いヤツだけだ、などとすまして言ってのけるのも、スパイ映画の類型的な軽薄さを軽薄なまま楽しみましょうよ、というノリ。 ここでの我らが座頭市、もちろんそういうパロディ的な扱いではないですが、類型的なヒットマンの側面を持った存在として描かれています。いざとなれば平気で人の命を奪う冷酷さを持った、死神のごとき側面。しかし、人を斬り命を奪えば、そこには悲しみが生まれ、残された者の人生を狂わせてしまう、という現実を、座頭市は突きつけられる。 敵役はあのふてぶてしい表情でお馴染みの遠藤辰雄・・・と思ったら話はそう単純ではなく、西村晃に三國連太郎、それを上回る曲者たちが登場して物語は錯綜し、根深い悪が描かれます。 一方で、農民たちの描かれ方を見ていると、映像のタッチは異なるとは言え黒澤映画なんかも思い出したりするのですが、そうすると『七人の侍』を彷彿とさせる豪雨の中の殺陣が展開されたりも。 この作品、音楽がやたら荘重で、こちらも気合い入ってます。が、クライマックスで流れる音楽はこれ、「カルミナ・ブラーナ」のパロディですね? ちょっと意外な。。。 【鱗歌】さん [CS・衛星(邦画)] 7点(2025-04-20 09:07:29)《新規》
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