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《ネタバレ》 集団レイプの被害に遭った女性がバリバリと復讐をこなし、それでもダメなら凶暴な男性刑事が敵をギタギタに叩きのめす、という『ダーティハリー4』。つくづくマッチョな作品だと思います。まあ、あくまで映画作品なんだからそれもアリなんですが、そういう作品があるからこそ、一方でこの『ヴェンジェンス』のような小品とも言える作品の、優しさ、みたいなものが光ったりもします。
娘と二人で暮らす女性がある日、娘の目の前で街のチンピラどもにレイプされてしまう。いったんは犯人たちが逮捕されるものの、閉鎖的な田舎町ということもあって母娘に対する周囲の視線も冷たく、さらには裁判を通じて二人の生活はボロボロにされていく。誰しもがソンドラ・ロックのように強くなれるんじゃ、ないんですね。これが、厳しい現実。 で、それをそっと見守る孤独な刑事。誰もが改造マグナムを手に敵を蹴散らすイーストウッドになれる訳じゃないんです。 とても残念なことに、これがどういう訳か、「ニコラスケイジ映画」の一本、だったりするのですが、いや、そんなに残念がることでも無い気もしてきます。いいじゃないですか。孤独が似合う男、ケイジ刑事(←単にこれが言いたかっただけなのか?)。 タイトルは原題通りVengeance、要は「復讐」な訳ですが、正直、この「復讐」の部分に関して、作中の描写にいろいろと不足があるようには思います。あくまでケイジ刑事が「陰で支えている存在」であるとは言え、もう少し踏み込んだ描写が無いと、いささか唐突でもあるし、「孤独に見えて、実は彼には協力者がいるのか?」と中途半端に思わせるシーンがあったりもします(あの女性の声は?)。でも、孤独な男には、これくらいの省略が、似合うかも知れませぬ。 それよりも、原題にはもう一つ「A Love Story」というサブタイトルがついていて、これは確かに、まさにラブストーリーであると思います。どこがって? 最後に「別れ」があるから。逆説的だけど、作品のラストにおいて、ああ、これは間違いなくラブストーリーだと思いました。密やかな愛と、別れ。恋愛であると同時に、一種の家族愛でもある。金網越しの別れが、切ないのです。 母と娘にはこの先もどんな試練が待っているか知れないけれども、ひとまずは新しい土地で新たな生活を歩みはじめ、孤独な刑事はまた孤独な生活へと舞い戻る。たぶん彼らは二度と会うことは無いんだろう、いや、「二度と会うことは無かったんだろう」と過去の記憶のように、思えてきます。 金網で別れた後、刑事は自動車のルームミラー越しに、二人へ視線を送るのですが、この場面はたぶん、実際にミラーに映った二人の姿ではなく、刑事の記憶する二人の姿が、描かれています。二人の並びが、鏡像になっておらず、彼が肉眼で見たそのままだから。そして、彼がハンドルを切ると、二人の姿もミラーからふいと消える。まるで夢のように。 この余韻がたまらない。本当にいいラストだと思います。 【鱗歌】さん [インターネット(字幕)] 8点(2025-06-01 07:20:37)《新規》
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