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小早川家の秋 のクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 小早川家の秋
製作国
上映時間103分
劇場公開日 1961-10-29
ジャンルドラマ,コメディ
レビュー情報
こうやって映画の感想文を書きこむ時、最初の方は話のマクラとして作品の内容とあまり関係ないことを書き連ねてしまう悪いクセがある。という自覚はあるのですが、今回もそのパターン。いや、マクラだけで終わるかも。。。
関西が舞台の注目すべき小津作品、ではあるのですがこれまで見る機会がなく、昨日ようやく見ました。酒蔵が並ぶ街並みは、伏見が舞台なんでしょう。嵐山も今や観光客が爆増しているとはいえ趣きは変わりません。ところで映画の中盤、孫とのかくれんぼをすっぽかして鴈治郎が競輪場に言っちゃう場面ですが、京都にも向日町競輪があるけれど、直前に「西大寺道」という石碑が映るので、これは大和西大寺にある奈良競輪ですな。ところが、私も出身は奈良ではないとは言え、かれこれ約20年、この大和西大寺に住んでいるのですが、どうもこの石碑を近所で見た覚えがない・・・。
しかし、「西大寺道」の石碑についてネットで調べてみると、ちゃんとブログで取り上げてくれている人がいたりして、有難いもんです。ああ、あそこにある石碑が実はそうだったのか、と見当をつけて自転車に飛び乗り、早速、写真を撮ってまいりました。と言っても、ここには載せられませんが。。。
大和西大寺駅の東に広がる平城旧跡、その北西の角のあたりの交差点のところに島状のエリアがあって祠が立っており、その横に立っている石碑が実はソレなのでありました(何度となく通ってきた場所ながら、近くに寄って見たのは初めて)。石碑の下部は道に埋まっているし、周囲もコンクリで覆われてちょっと見づらいけど、石碑の南面には映画と同じ「西大寺道」の文字。裏の北面には「元禄十二年己卯六月朔日」とあるので、1699年ですね。まあ、古墳だらけのこの辺りにしてみれば、この石碑はまだ新しい方かも(笑)。
それにしても、この映画に出てくる光景を思うと、なんとまあ、この大和西大寺エリアの光景が変貌したことか。一方で、あの街の規模でまだあれだけの風情を残す古都ライバルの京都。さすがと言わねばなりませぬ。

さて、話を戻して、本作ですが(笑)、小津作品ながら、東宝系の作品ということで、なかなかに濃いメンツが集結。さらには原節子、笠智衆、杉村春子といった人たちも顔を出し、さらにさらに小早川家の中心たるクソジジイ役には、大映から中村鴈治郎(『浮草』なども思い起こさせ違和感ナシ)。こんだけ登場人物多かったらもうワケわからんでしょ、というくらい登場して、なかなかにややこしい人物相関関係。小早川家とそれを取り巻く面々の壮大なる一大叙事詩、であります。いや、あくまでホームドラマなんですけど。
でも、普通のホームドラマのイメージだと、爺さん婆さんがいて、その子供たちが家庭を持っていて、それぞれが孫を連れてきて賑やかに・・・というピラミッド型の年齢構成になるのですが、どうもこの小早川家はそんな雰囲気じゃない。祖父の代から孫の代まで、揃ってはいるけれど、年齢がまんべんなく散っていて、そうすると何となく平均年齢が高めの印象になってきます。不幸もあったようですが、甲斐性無しのジジイにも大きな責任があるような。
タイトルは『小早川家の秋』ですが、作品全体は夏の暑さが描かれます。だけどそれでも、秋、あるいは斜陽、といったものを感じさせます。ジジイだって昔からジジイだった訳じゃなくって、おそらくは若い頃からテキトーなことばかりやってきて、気が付いたらジジイになってしまっているけれど、相変わらずテキトーなことばかりやっている。そういう人生なんだから、生きてる限りテキトーだし、死んだらそのテキトーさもおしまい。斜陽と言えば斜陽だけど、残された者は残された者で、次の世代の物語を紡いでいく。なんだか、「川」が登場することがこれだけしっくりくる映画、というのも、なかなかありません。
古都の風情と、きらびやかな都会のネオンサインとの、対比。
煙突の映像か挿入されると、これもいつもなら工場の煙突を思い浮かべるのですが、ここでは火葬場の煙突。周囲にはカラスの姿があちこちに見られ、えらく不気味でもあります。そこに佇む笠智衆のやかな表情、しかし、ほぼ死神ですよ、これは。

音楽は黛敏郎。オープニングは普通に(自制して?)小津映画調の穏やかな音楽か、、、と思いきや、早くも対位法を利かせた怪しげな曲調になってきます。ラストでは重苦しさすら感じさる音楽となって、いよいよ本性むき出しか。
鱗歌さん [インターネット(邦画)] 9点(2025-05-18 07:37:01)
その他情報
作品のレビュー数 30件
作品の平均点 7.17点
作品の点数分布
000.00%
100.00%
213.33%
300.00%
413.33%
513.33%
6413.33%
71136.67%
8516.67%
9723.33%
1000.00%
作品の標準偏差 1.57
このレビューの偏差値 57.42
※この作品のどの当たりの点数に位置するかを表した値
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