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《ネタバレ》 アントン・カラスのチター演奏が余りにも有名な監督キャロル・リードの傑作。多くの方がおっしゃる通りモノクロ映像の光と影が抜群の効果を収めており、ハリーが窓明かりに照らされるまでの一連のシークエンス、並木道の哀愁溢れるエンディングシーンなどなど数々の名場面が鮮烈な残像を残します。飛び交う言葉が英語だけではなく、ロシア語など複数の言語が第二次大戦直後、敗戦国オーストリアの不安定な雰囲気を醸し出している。帽子をかぶった子供がもうひとつのサスペンスの伏線になるとか、愛猫を第三の男の正体を明かす橋渡しにするなど子供や小動物の使い方が憎いほど上手い。さらに後半、ホリィが殺人の容疑者として追われる身になるという二重のサスペンスを並行させる辺り、なかなか捻りを効かせた味わい深いプロット。そして、もうひとつの見どころが三人三様の人間模様。すばしこく世渡り上手なハリー(オーソン・ウェルズ)。そんな彼と対照的な、どんくさいが正義心の強いホリィ(ジョセフ・コットン)。20年ぶりに再開するものの、お互い人生観も方向性も天と地ほど変わってしまっている。圧制支配下のもとで生み出されたルネッサンス文化とスイスの鳩時計を引き合いに出し、悪人特有の理屈を並べるハリー。そして、そんな二人にはさまれるアンナを演じたアリダ・ヴァリが本作では文句なしに素晴らしい。情感の込められた最高の演技は、この作品にしっとりとした厚みを加えていた。カメラワークに映像、音楽、脚本、雰囲気描写、俳優陣の演技…どれを取り上げても素晴らしく、映画の教科書(お手本)と言われるだけのことはあると思います。
【光りやまねこ】さん [ビデオ(字幕)] 10点(2005-04-15 15:41:17)(良:3票)
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