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特攻隊といえば、敵艦目掛けて体当たりするゼロ戦ことゼロ式戦闘機が有名。そして、もうひとつの特攻隊である人間魚雷「回天」も忘れてはならない。潜水艦に備え付けられた魚雷に隊員が乗り込み、ゼロ戦と同様、敵艦に突っ込むという正気の沙汰とは思えない戦法である。まさに戦争による狂気が生み出した産物であり、人間を人間として見なさない当時の帝国陸海軍の証左ともいえよう。この作品は回天特別攻撃隊津村敏行の手記を映画化したもので、脚本は須崎勝弥に、監督は松林宗恵による演出。戦後10年しか経っていないこともあるとは思うが、リアリティ溢れる描写とセット美術が素晴らしい。荘厳で哀愁漂う音楽も、この戦争ドラマに厚みを加えている。岡田英二演じる特攻隊員を筆頭に木村功、宇津井健、沼田曜一など個々の切々と訴える好演も手伝い、見る者により一層悲壮感を掻き立たせる。とくにラスト。「赤とんぼ」の歌声が幻聴となって表われる中、朝倉少尉(岡田英二)が「我未だ生存せり」と心境を刻み込み、生を噛みしめんとするエンディングは悲し過ぎる。このシーンは何回見ても涙なしではいられない。もう遅い、すべてが遅過ぎたのである。神よ神よとおだてられ、自ら志願した後では時すでに遅く、お国の為に散っていくより選択の余地のない土壌が用意されていたのである。純粋な学徒達を特攻隊へと駆り立てた歴史的事実を描いた作品としては、「雲ながるる果てに」と共に日本映画史上、永遠に記録されるべき名作です。
【光りやまねこ】さん 9点(2004-04-05 21:56:47)(良:2票)
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