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《ネタバレ》 死人に口なし。人間というものは自分に有利で都合のよい供述をする。死人も死人でこれまた同じで、しかも恥を嫌う侍なのでなおさらだ。(巫女を通してだが) ラストに赤ん坊を登場させるわけだが、これは芥川龍之介の原作にはない。賛否両論分かれるところだが、救いを持たせるラストともいえ溜飲が下がったのは事実。この辺り、やはり黒澤監督らしい締めくくり方だ。登場人物はわずかに8人。(赤ん坊除く) 京マチ子の妖艶な演技を初め、各人各様の存在感のある演技が作品そのものを引き締めている。生々しい斬り合いのシーンは当時としては斬新であったろうし、霊媒師の異様なシーンもこの不可解な心理劇に独特の味付けをしている。また宮川一夫のカメラワークと映像も見応え充分で、セット美術も申し分ない。鬼が宿るという羅生門の不気味な雰囲気描写、神秘的な森や木の葉を映し出すシーンなど印象的なカットは数多い。人間の心の奥底に潜む業という、洋の東西を超えた普遍的かつ永遠的ともいえるテーマ性。芥川龍之介の世界観とまた一味違った独自のものを構築しており、監督黒澤明を筆頭に三船敏郎、京マチ子、そして宮川一夫の名を世界に知らしめた傑作。
【光りやまねこ】さん [ビデオ(字幕)] 10点(2005-08-30 23:34:53)(良:1票)
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