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《ネタバレ》 もう退職されてしまったけど、職場にETによく似た先輩がいました。見た目はもちろんそっくりなんですが、半身に麻痺を抱えていて動きがぎこちなかったり、呂律が回らないために言葉がたどたどしくて口数が少ないところも似ていました。けれどそんなハンデを補って余りあるほど素敵な内面をもった方で、仕事はまじめに丁寧に取り組むし、人を傷つけずに笑いを取るユーモアを持っていて、誰からも好かれる人気者でした。私個人も、台風の中ずぶ濡れになりながら自転車通勤した日にカッパをプレゼントしてもらったり、球技大会に出ることが決まった日に会社のロッカーを開けると、その人が昔使っていた野球のグローブが入っていたり…と、いろんな場面で親切にしていただきました。そんな人だったので、誰かに何かを言われずともその人の仕事は手伝ったし、そうすることが楽しかったのを覚えています。
翻ってこの映画。言葉も通じず、控えめに言っても不気味としか言いようのない外見のETに、エリオットは人間の言葉を教え、母船との連絡手段を用意し、大人たちの目から匿いました。物珍しさからとか、ペットを世話するような感覚から、あるいはそうすることで自分に何か見返りがあるから…ではなく、純粋に思いやりからきた行動です。終始表情も変えず、お礼を言うわけでもなく、地球で生きていこうとはこれっぽっちも考えていないETが、宇宙船のタラップの上でエリオットに「イコウ」と声をかけるシーン。エリオットのこれまでの頑張りについて、ETがどう思っていたのかを一言で説明するこのシーン、E.T.がどんな映画だったかを思い出すとき、自転車で空を飛ぶシーンよりも先に、鮮明に頭に浮かんできます。それくらい私にとって印象深い、感動したシーンでした。 送別会の席で先輩と話したとき、「君がいろいろ気を遣ってくれたおかげで助かったし、ありがたかった」と、初めてお礼を言われました。今思い返しても誇らしさで胸が一杯になる、宝物のような思い出です。信頼関係や友情は、お互いが相手を思いやることで生まれるものであり、それは少年と異星人の関係に限らず、身近な人間関係についても言える事なんじゃないか…ってこの映画を観ていて思いました。 【あなたのはレビオSir.】さん [DVD(字幕)] 7点(2012-10-10 09:53:21)(良:1票)
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