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侯孝賢監督映画。80年代終わり頃に流行りました。「冬冬の夏休み」とか「恋恋風塵」とかね。で、この2作を太刀持ちとして、どーんと構えるのはやっぱり歴史大作「悲情城市」でしょう。あの頃、ようやく中国映画なんかが国際的に評価されてきて、陳凱歌とか張芸謀の映画が次々と公開されていました。彼らの初期の作品というのは、中国の広大な大地に根ざした裸の人間たちを描くかなり骨太で大味な印象を与えるものでしたが、台湾出身の侯孝賢というのはどちらかといえば繊細で暖かな味わいを作風とする為、彼の作品の方が、僕らには受け入れやすかったように思います。小品を得意としてきた彼が初めて祖国の歴史大作として世に問うたのがこの「悲情城市」です。<それまではこういった歴史を公然と語ることができなかったそうな> 大戦後の日本軍の台湾撤退から、蒋介石による台北制圧までの4年間の内乱を、ある家族の悲劇を通して描いていきます。戦後の台湾の歴史を知らないとなかなか理解できないところもあるかもしれませんが、実際、そこに僕たち日本人が深く暗い影を落としていることが事実としてある以上、それを知らないのは本当は失礼なことなのかもしれません。それはともかく、トニーレオン扮する聾唖の写真屋と少女の静謐な愛情のやりとりが秀逸です。歴史のうねりに翻弄されながらも家族の愛を拠り所とする生き様<そう最後の家族写真のシーンです>には、静かな感動と言い知れぬ哀しさを感じずにはいられませんでした。中国人監督達がその後、商業ベースにしっかりと乗っかったのに対し、一体、侯孝賢はどうしてしまったのでしょうか?ここのレビューで全く人気がないのも忘れ去られた監督故なのでしょうか?ちょっと心配なところです。
【onomichi】さん 10点(2003-10-16 00:03:35)(良:1票)
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