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《ネタバレ》 予備情報なしに、「意外に豪華なキャストなのね」くらいのつもりで見たんだけど、岩井さん脚本ということで、納得。『Love Letter』以来の原点回帰で、ストレートなラブロマンス。自分で撮るにはいまさらってことで、熊澤さんに任せたんだろうなぁ。
何もわかっちゃいない男の子の期間限定のうぶい感じが好きになってしまった、女の子のせつない思いを、純粋にとりだすのに、ヒロインを殺してしまって回想っていうのは、そういえば『Love Letter』と同じ手ではあるけれど、この距離感のとりかたは絶妙で職人芸の域に達している。 役者たちの演技も見事なんだけど、観客をお話に100%入り込ませるというよりは、あくまで「上野の芝居」「蒼井の芝居」「小日向の芝居」を見せるというスタンスも良かった。相田翔子もあてがきの芝居で、彼女の果たすべき役割を十二分に果たしていたと思う。あの章があれだけの長さがなくて、そのままエンディングになだれこんじゃっていたら、ラストの盛り上りはなかったはず。冒頭のシーンにふたたび戻ってきたときに、相田との不思議な関係で一息ついてという距離感があってこそ、「ああ、あの冒頭の携帯メールのシーンはこういう状態だったのね」という発見があり、またコーダとしておかれたエピローグが生きてくる。 さらに、劇中劇をはじめから最後まで全部見せちゃうという、ふつうなかなかやらない暴挙にでるんだけど、「ああ、このシーン、あそこで撮ってたんだよなぁ」とか、「練習してたこのセリフこうなったんだ」とか、「クランクアップのあのシーンはこういうことだったんだ」とか、ちらりちらりと見せ続けていた予備情報がうまくここでつながるっていうように作っていて、それにはすっかりやられた。 しかもこの劇中劇、死んだヒロインの元気なところをエンディング近くの、しかも通夜葬式の真っ最中で見せるっていうんだから、ふつうなら間違いなく、泣き落としにくるところが、するっと流して、盛り上りを最後の最後までとっておくというのも心にくい演出だった。ホルスト「惑星」の妙に平坦な素人くさいシンセのBGMの使い方も見事。 最後に死んだ彼女の手書きのメッセージが見つかるっていうのも、『Love Letter』の焼き直しではあるけれど、やっぱりいいね。小津にとっての父娘ものみたいなストーリーなんだろうな。 【小原一馬】さん [地上波(邦画)] 8点(2009-10-03 01:30:05)(良:3票)
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