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私の男(2013) のクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 私の男(2013)
製作国
上映時間129分
劇場公開日 2014-06-14
ジャンルドラマ,犯罪もの,ロマンス,小説の映画化
レビュー情報
“女”にとって、“男”は、ほんとうに、純粋に、暗く空いた心の隙間を埋めるためだけの、“詰め物”だったのかもしれない。
精神が歪んでいるわけでも、感情が欠如しているわけでもない。
むしろ逆だ。
あまりに真っすぐに、あまりに直情的に、自分に“無いもの”を求めた結果だ。

不条理であり、おぞましさすら感じる。
しかし、その激情を表す言葉はやはり「愛」以外にはあり得ない。


「あれは私の全部だ!」と、“女”は叫ぶ。

もう、この咆哮にすべてが表れている。
文字通りの死の淵から、“空っぽ”の状態で生き延びた少女は、「必然的」に現れた“男”で、その空洞を埋め尽くしていったのだろう。

“女”が“男”で満たされるのにそれほど時間はかからず、同様に“男”も“女”で満たされていく。
「秘密」が誰に暴かれようが暴かれまいが、それを誰に非難されようが非難されまいが、最初から最後まで彼らの世界には、二人しか居なかったのだと思える。

何かがほんの少し違っていれば、辿り着いた場所はもう少しマシだったのではないか……と、僕自身を含めて、他人は思う。しかし、そんな他人の思考はあまりに無意味であることに気づく。
“男”の台詞に表れているように、彼らがほんとうに望んでいたことと、彼らが辿った運命は、少しずつ確実に乖離していったのかもしれない。
それでも、彼らはああやって互いの命をつないでいくしかなかったし、あの先もああやって生きていくのだろう。


ドヴォルザークのメロディーが夕刻を告げるチャイムとして流れる中、“女”が数日ぶりに帰ってきた“男”を迎える。
映画の展開的には、まだ物語が劇的に転じる前の何気ないシーンとして映し出されているが、おそらくはこの映画の中で最も重要なシーンだったろう。

誰も知らない二人だけの世界。孤立感と、それ故の多幸感。
そして彼らの背景に染み渡っているような不穏さと背徳感。

でも、たまらなく美しいこのシーンを忘れることはできない。
鉄腕麗人さん [映画館(邦画)] 10点(2014-07-21 07:01:22)(良:1票)
その他情報
作品のレビュー数 16件
作品の平均点 6.44点
作品の点数分布
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3212.50%
416.25%
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616.25%
7531.25%
8425.00%
900.00%
1016.25%
作品の標準偏差 1.90
このレビューの偏差値 59.84
※この作品のどの当たりの点数に位置するかを表した値
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