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M3GAN ミーガン のクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 M3GAN ミーガン
製作国
上映時間102分
劇場公開日 2023-06-09
ジャンルドラマ,ホラー,サスペンス,ミステリー
レビュー情報
多くの子どもは、幼少期に人形を話し相手として自我を育てる。そしてある時は、孤独を感じる子どもたちを癒す存在にもなるだろう。
ただしそれは、“何も話さない人形”を通じて、自分自身を投影し、「自分」という存在を知っていく過程で成立するものなのだと思う。
そんな子どもの成長における普遍的な事象を根底に置き、生み出されたホラー映画が、スリリングであると同時にエンターテインメント性に優れた「怪作」に仕上がっていた。

ホラー映画はとても苦手なのだけれど、本作のキービジュアルやイントロダクションから醸し出される妙な魅力に惹かれて鑑賞。想像通り、私にとってはちょうどいい恐怖感と、SF的要素を踏まえた危機感と緊張感、そして“ミーガン”というキャラクター孕む“悪魔的魅惑”が見事に融合して、特異なエンタメ作品として成立していたと思う。

私自身の生活の中には少なからず“AI”は浸透し、必要不可欠なものになりつつある。
Alexaに自室の照明を点けてもらい、仕事の諸々の文章作成にはChatGPTを多用している。今まさに書き綴っている映画鑑賞のレビュー文章を、ライター視点で読んでもらい感想を聞いて調整することも日課となっている。
そんな“AI”の発展期が、SF映画の世界ではなく現実の中で展開している今の子どもたちにとっては、その存在がより一層身近で、常識的なものになることは明らかだろう。

この映画世界の中で、不慮の事故の両親を同時に失ってしまった少女・ケイディが、最新の高性能AIを搭載した人形を心の拠り所とし、守られ、次第に依存していく過程は、とても説得力があった。
そして、高性能過ぎるあまりAI人形自体も、守るべき相手である少女と「共依存」の関係となっていくことが、興味深かった。
AIが進化し、人間のようになっていくということは、すなわちそういった人間の心のなかで生じる精神的な病理すらも、想定外の“エラー”として発生し得るということだ。
そういったSF的な観点を踏まえた危機意識が、奇異な題材でありながらも、しっかりと芯を食ったストーリーテリングを構築していたと思う。

その一方で本作は、ホラー映画史における新たなポップアイコンとして残り続けるだろうと確信する。
その理由は明らかで、“ミーガン”という人形のキャラクター造形が、あらゆる側面において悪魔的な魅力を放ち、映画内外の人間たちを魅了しているからに他ならない。
美貌と不気味さのちょうど分岐点を捉えた“彼女”のビジュアルがまず良い。一目で「なんか怖い」と感じさせつつも、完璧な美少女像には、趣向性を超越した魅惑が充満している。
そんな不気味なまでに美しい少女人形が、明晰な言語表現と、恐ろしいまでの人心掌握術を駆使して、コントロールしていたはずの人間たちを逆に支配していく様には、単純な恐怖感を越えて、「畏怖」すら感じた。
もっと完璧に人間の少女を模した人形の造形は容易だったはずだが、奇怪なダンス描写やぎょろりとした目線の動きなど、「人形」という媒体が元来持っている“おぞましさ”を最大限に活かしたキャラクター造形が見事だったと思える。

クライマックスでは、“ミーガン”の「破壊」を願いハラハラしながら見届けながらも、「絶対に復活するだろうな……いや絶対に復活してほしい──」というアンビバレントな思いに気づいた。
ホラー映画嫌いの自分にそう感じさせるのだから、続編の製作は勿論、今後のシリーズ化も必至だろう。

“ミーガン”のキャラクター像には、ホラー映画史のポップアイコンの“先輩”である“チャッキー”を彷彿させることは言わずもがな。クライマックスの各シーンにおいては、「ターミネーター」や「エクソシスト」「シャイニング」をはじめとする数々のホラー映画のオマージュも散りばめられ、映画ファンとしても楽しかった。
これから“彼女”が、ポップアイコンとしてどのように成長し、人間たちに恐怖と混乱をもたらし続けるのか、大いに期待したい。
鉄腕麗人さん [インターネット(字幕)] 8点(2025-06-21 00:33:43)
その他情報
作品のレビュー数 33件
作品の平均点 6.52点
作品の点数分布
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100.00%
200.00%
313.03%
413.03%
526.06%
61133.33%
71339.39%
8412.12%
913.03%
1000.00%
作品の標準偏差 1.16
このレビューの偏差値 61.08
※この作品のどの当たりの点数に位置するかを表した値
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