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今秋(2025年)、新たな「フランケンシュタイン」映画が、ギレルモ・デル・トロ監督によって“生み出される”という報を聞いて、大きな期待感と高揚感を覚えた一方で、そういえばオリジナルの『フランケンシュタイン』は未鑑賞だったと思い、鑑賞。
1994年にケネス・ブラナー監督、ロバート・デ・ニーロ主演で製作された『フランケンシュタイン』は、随分昔に鑑賞したけれど、この“古典”は初鑑賞だった。 “悲しき怪物”という表現は数多の作品で繰り返し用いられてきたものだが、まさに本作に登場する“怪物”こそが、その原点であり、原典だと痛感した。 90年以上前のとても古い映画世界の中で、無論現代にも通じる人間の普遍的な罪と罰が、人間の愚かな傲慢によって生み出された怪物を通じて描き出されていた。 映像表現自体は勿論古めかしいけれど、舞台美術の造形や、特殊メイク、音声表現などは洗練されていて、今の時代においても充分に映画世界を堪能できる。 個人的には昨年公開された傑作『哀れなるものたち』の映画世界にも、本作の美術表現が大いに反映されている点が興味深かった。 『哀れなるものたち』の物語構造自体が、本作の原作者メアリ・シェリー本人の人生模様と、彼女が生み出した『フランケンシュタイン』に着想を得ていることは知っていたので、映像的な表現においても本作が多大な影響を及ぼしていたのだと思う。 ボリス・カーロフが演じる“怪物”の表現も秀逸で、非人間的な言動や風貌を表しつつも、不意に見せる無垢な人間的な感情が、ことほど左様に悲哀を創出していた。 フランケンシュタイン博士をはじめ、愚かな人間たちは、殺人狂の“脳”が移植されたことが怪物誕生の要因と思い込んで、一方的な討伐に走る。 けれど、実際は人格を蔑ろにした迫害や、生命そのものを弄んだ報いが、怪物の暴走を生んだことは明白であった。 そしてこの物語が伝えるテーマ性は、現代社会に通じることは勿論、より深く突き刺さるものだったと思える。 後世の映画表現や社会に多大な影響をもたらした古典的名作に賞賛を送りつつ、ギレルモ・デル・トロによって新たに創出される『フランケンシュタイン』にも大いに期待したい。 【鉄腕麗人】さん [インターネット(字幕)] 8点(2025-06-08 09:56:37)《新規》
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