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仲代達矢も名演であったと思います。ですが、武田信玄といえば、イメージとしては仲代達矢より勝新太郎であるのは間違いありません。黒澤監督の絵コンテも勝新太郎のイメージそのままですし、まして降板という事実を知れば、なおさら勝新太郎でなければダメだという思いがするのは当然です。勝と仲代はどちらも名優であることは間違いないと思いますが、本作においては勝新太郎がより似つかわしいキャスティングであることは明白でしょう。もっとも脇を固めた新人や経歴の浅い役者の委縮したような演技はさらに困りものです。違和感がまともに画面に出てしまって、どうしても作品に入り込めないし、メッセージも弱い。黒澤監督のマルチキャメラにはとても耐えられるものではありません。この起用は完全に裏目に出ていると思います。ただ、夢のシーンとラストの長篠の合戦は秀逸。唯一、この作品のテーマが映像によって浮かびあがるのがここです。合戦シーンについて言えば、思う存分の活劇を見せてほしかった気もしますが、スローでつながれた編集によって強烈な「悲哀」がもたらされ、むしろ力のあるシーケンスに仕上がっています。おそらく活劇で見せることは可能であったと思いますが、この「悲哀」が哀れな影武者のクローズアップと相まって見事に無常観を演出しています。テーマを考えればこの選択は正解だったと思います。何しろ、馬が「名演」ですね。本作はカンヌでグランプリを受賞していますが、これは確かにネームバリューという見方もできます。往年の作品群に比べれば、プロットが圧倒的に弱い。ただし、もし、これを他の無名監督が作ったとしたらどうでしょうか。恐らくはそのスケールの大きさゆえに、やっぱり驚いてしまうのではないでしょうか。
【スロウボート】さん 7点(2004-03-12 22:52:33)(良:2票)
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