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《ネタバレ》 もはやジブリは誰が監督でもそれほど差はない。これはほめ言葉です。つまりアリエッティにせよ、コクリコ坂にせよ、ポニョにせよ、レベルはほぼ同じで高水準です。誰がメガホンをとろうがジブリはジブリであり、監督が違えども、選手は同じなのです。本作品をみて改めてジブリの絵は「ヘタウマ」に変化しつつあると思った。本当は俺たち、写真のようにリアルティのある絵を描けるんだぜ、だけどそういう路線には進まないんだぜ、とジブリは言っているのです。彼らの矜持にたいし、私は畏敬の念を感じずにはいられない。よくピカソの絵は下手なんじゃないの?という議論が持ち上がる。ひょっとしてジブリの創り出す絵はピカソ的方向に向かっているのではないか?つまり多視点への挑戦です。表現力の追及です。さらに古き良き時代がノスタルジーとして描かれている。かといって単なる懐古主義に終始しているわけではなく、未来への希望が前面に打ち出されている。実は学園闘争の描写は「挑戦」に対するメタファーになっており、そこに人間賛歌が描かれている。しかも小難しいメッセージがない。もし駿が今映画を作っているならば、原発問題へのメッセージまでも織り込みそうでかえって怖い。我々映画ファンは、外国人に褒められるようなバカなアニメ映画はもうたくさんなのだ。ちなみにこの映画が楽しめるか否かの生命線は、ヒロインの海を応援できるか否かにかかっていると思います。海が母親から真相を聞いて泣き出すシーン。私は鼻水垂らして号泣でした。なぜ海は泣いたのか?その涙はうれし涙ではないと思う。張りつめていた不安や緊張感から一気に解放されたがゆえの涙だったに違いない。結ばれない恋愛と思いつつも私はあなたを好きになってよかったというあの気丈セリフ。君の一挙一動に私は涙で脱水症状寸前でした。ジブリの魅力はたしかに冒険もあるでしょう。しかし真のジブリの魅力とはヒロインの魅力に尽きる。時にはブタやババアを主役にして大コケすることはあるがナウシカ、シータ、キキ、トトロの姉妹、それら少女の人物描写こそジブリの財産であることをジブリ自身が自覚していることに私は安堵した。良い主人公だった。だから良い映画だったと心から思う。私の感想はそれに尽きる。
【花守湖】さん [DVD(邦画)] 9点(2012-08-18 20:07:17)(良:1票)
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