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《ネタバレ》 かつて宮崎駿監督の息子さんである吾朗監督が、父親である宮崎氏からその『ゲド戦記』製作中に辛辣な批判を浴びせられ続け、あるいは映画完成後に、その作品の原作者であるル=グウィン氏からも非常に手厳しい批判を受け、それでもその『ゲド戦記』の中に自分の思うことを盛り込み、また自分の思った通りに映画を作りとおした(それが良いか悪いかはもちろん個々の方々の感じ方によるでしょう)事を思い起こすと、この『アリエッティ』は何とも素直な作品となっていると思います。
柔らかくファンタスティックな世界観づくりや、美麗極まりない背景の描きこみはまさしく「ジブリ品質」といったところでしょう。また主人公アリエッティ役の女優さんが何とも上手に役を演じられていたのも印象的でした。僕自身は色々な理由から、必ずしもこれまでのジブリの「俳優起用」の傾向を批判的に見るつもりは無いのですが、それでもこの『アリエッティ』の配役全体に関して、「これまでのジブリ作品と比べてもひときわ成功している」と言いたい気になります。 ただし作品の内容に関して上記映像(あるいは世界観)・配役といった点を除いた場合、個人的な印象を控えめに言うなら「強烈な作家性を感じさせる過去の作品と比べると、その点でやや希薄である」という印象をぬぐい去れません。 映画のパンフレットを読んだ限りでは、監督は絵コンテを切るにあたって途中から「宮崎監督の顔色は窺わないようになっていった」らしいのですが、僕が見た限りでは、その絵コンテを切るにあたってその「イメージ」は確かに独自にふくらませたように感じる一方、少なくとも「脚本」にはかなり忠実に従っているのでは、という印象を受けました。お手伝い役のおばさんの役どころが何だか後味の悪い「いかにもな悪役」といった感じであり、その点に関して監督が吟味して修正を加えた様子も見受けられません。その点も個人的にはちょっと残念でした。 もともとこの作品が(ジブリ内部で)どういう位置づけの元に製作されたのか不明であり(そもそも最初から「肩肘張らずにジブリの世界観を提供する」という目的があるのかもしれませんし)、そういう作品に「作家性」(と言うか「個人的な動機」といったもの)を求めるのも最初からお門違いなのかもしれません。しかし僕自身はそれでも、その辺が個人的にはちょっと物足りなかったかなと感じたのが正直なところです。 5点か6点か迷ったのですが、内容的には納得いかない点があるものの、何だかんだ言ってジブリ品質のあの世界観は魅力的ですし、何よりアリエッティの演技と健気さ可愛らしさが印象的だったので、5.3~4点の切り上げ6点としたいと思います。 【マーチェンカ】さん [映画館(邦画)] 6点(2010-07-29 00:42:15)
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