Menu
 > 作品
 > サ行
 > さよなら、さよならハリウッド
 > 給食係さんのレビュー
さよなら、さよならハリウッド のクチコミ・感想
作品情報
タイトル名 さよなら、さよならハリウッド
製作国
上映時間112分
劇場公開日 2005-04-23
ジャンルコメディ,ロマンス
レビュー情報
《ネタバレ》 その経歴ゆえ、その知性ゆえ、そのスタンスゆえ。「もっと別の意味があるのではないか?」観る者の深読みを誘うトクな映画作家。それがウディ・アレンである。ベタベタなスラップスティックであっても、甘っちょろい男女の恋物語であっても「もっと複雑で重層的な意図が・・」と意味を訪ねる観客は数知れない。どこまで計算しているかは本人のみぞ知るところだが、誠実な作りをしていることだけは確か。誠実は「自信」と言い換えてもいい。
酔ってホテルに戻ったエリーとハルがスクリーンから唐突に消える。画面に映るは殺風景な部屋の片隅と2人の声だけ。今、こんなシーンを堂々と見せることのできる監督は彼を置いていない。西海岸の気候や文化を茶化すのも、作品に自身を投影し、道化に徹するのも自信あればこそ。自分を最も支持してくれる国を賛美しつつ、しかし一方ではピンぼけでカメラアングルもままならない作品を「芸術だ」と評するフランスの行き過ぎた形而上路線をからかってみせる。そしてエリーとのあまりにも安直な恋物語を見せることで、本作をも皮肉の俎上へと載せてしまうというこの度量。これを送るアレンもアレンなら、受けたカンヌも大したもの。
アメリカに愛想を尽かし、おいそれとパリへ旅立つヴァルとエリーを囲むのは、彼が愛してやまないNYのこの上ない絶景。皮肉と揶揄、そして矛盾。「アニーホール」以来、手を変え品を変え、アレンが追ってきたのは人間こその不条理だ。だからウディアレンは今日も映画を作る。一義的にこのドタバタコメディに笑い転げるもよし、何かの比喩や暗示があると勘ぐりを入れるもよし。人の心を強く惹きつけるものは一色ではなく、相反するような複数の色を持つものだ。解釈する楽しさを教えてくれる当代一の名監督に大きな拍手を。好演したマーク・ライデルにも拍手。着古したラルフローレンに身を包んだアレンよろしく、いかにも人間的な滑稽さで観客を包む本作は、ちょっと古風だけれど、でも気分はすこぶるいい。
給食係さん [映画館(字幕)] 8点(2005-05-11 15:04:59)(良:1票)
その他情報
作品のレビュー数 24件
作品の平均点 5.79点
作品の点数分布
000.00%
100.00%
200.00%
300.00%
4520.83%
5729.17%
6416.67%
7416.67%
8416.67%
900.00%
1000.00%
作品の標準偏差 1.38
このレビューの偏差値 61.53
※この作品のどの当たりの点数に位置するかを表した値
さよなら、さよならハリウッドのレビュー一覧を見る


© 1997 JTNEWS