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《ネタバレ》 ドキュメンタリーの形をとっての「映画音響」をテーマとしての映画であったが、大変見応えのある映画だった。蓄音機から始まる「音」への映画のアプローチがものすごく興味深い。映画界、特に音響の分野を目指している若者はこの映画を見るべきだと思う。素人の私からして、映画音響の考え方に取り憑かれるような内容だ。
本当の初期の頃には映画館に本物のオーケストラが張り付き演奏し、セリフもその場で役者が当てるような形で行われていた。そこから徐々に声の録音、効果音の作成、それらの編集と目まぐるしく出来ることが増え技術が進歩し、今に至る。 音や声の作成と同じく、それを出力する手段も同時に進歩していく。スクリーンの裏に一つしかなかったモノスピーカーが両サイドに一つずつ配置されるステレオスピーカーになり、やがて館内を360°カバーする5.1chサウンドとなり。 正直私は音に対してこれまでそこまで真摯に向き合ってはこなかった。聞きやすいか聞き取りにくいか、強いて言えばそれくらいの判断基準しか持ち合わせてこなかった。私も作中に出てきた映画製作会社の幹部たちと同様、「音」に対してそこまで真剣に考えたことがなくどちらかと言うと軽視してきた人間ということだろう。だが、ここまでの音響世界での足跡とその軌跡を見るにあたって、当たり前に自分たちが楽しんできたあの音たちは当たり前ではなかったんだと思えるようになった。10分程度の長さの音を作るために数週間を要する。それはひょっとしたら、映画にとって音と双璧をなす映像よりも時間のかかる緻密な作業が必要なのかも知れない。 単に効果音と言っても、動物の声などを組み合わせた効果音や、道具を駆使して自分たちで音を創り出すフォーリー、風などの環境音など、そこにも様々な分野があることを知った。ジェット機の音にライオンや猿の声が入っていたなんて、本当に驚きだ。 そう言ったことを知っていき、驚く反面、技術の進歩に伴ってリアルな音、というのが軽視されていないかということが心配になってきた。個人的な見方だけど、観客へのインパクトを重視するあまり、またどんな音でも工夫や時間次第で創り出せる今の技術下では、実際の音よりもインパクトや驚きを演出するため加工しているのではないか、と。そうなってくると少し違うような気もしてくる。上述したジェット機の音にしても、「本物は意外と大したことなかった」と、それ以外の音を加えて編集して客にこれはジェット機だと聴かせているが、それが正解なのかどうかは個人的に疑問が残る。R2D2などの機械のしゃべりや、非現実の事象の音に対してその音を作るために様々な工夫はあって良いと思うが、実際存在するものを「インパクトが足りない」と違う音で演出するのには違和感を覚えた。あくまで個人的な見方です。あしからず。 しかしそれはそれとして、音に対する考え方、その姿勢にとても感銘を受けたことは間違いない。 私は今年40歳だが、産まれてからここまで世界の技術革新と共に歩んできた、そういう時代とともに育ってきたという自負があります。物心ついた時には小さなブラウン管、ファミコン、ワープロやフロッピーだったのが、今や60インチ近くの有機ELテレビ、PS5やスマホゲーム、テラバイトの容量を持つPCなどを個人で所有するような時代となった。 同じように音の世界の技術革新に触れ、それを飽くことなく追いかけて形にし続けてきた先人たちに素直にリスペクトの念を抱かざるを得ない。素晴らしいドキュメンタリーでした。 【TANTO】さん [インターネット(字幕)] 9点(2022-09-07 01:33:48)
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