| 作品情報
レビュー情報
《ネタバレ》 これって、もしかして「映画的キュビズム!?」と思ってしまいました。■ピカソによって提唱された「キュビズム」は“複数の視点による対象の把握と画面上の再構成”を意図する芸術活動のことで、隠れて見えない立体物の裏側や、もともと見えない人間の内面を、サイコロの展開図のように2次元絵画へ定着させていく手法であると理解しています。そもそも従来のミュージカル映画のミュージカルシーンというものは「映画の構造」を語る上では重要な要素になり得ないと認識をしていましたが、この映画のミュージカルシーンこそは、対象物の裏側や内面を訴求しうるものとなっており、光の当たらない・目に見えない・隠された側面を浮き立たせ、物語の真正面を語るストーリーシーンとともに、対象物を多面的に複合的にそして立体的に訴えかけてくるのです。この映画は“複数の視点による対象の把握”という作業を経て、ミュージカルシーンという異なるアプローチを内包することによって“映画を(多面的に複合的に立体的に)再構成”しているのです。そんな「映画の構造」を考え巡って、前述の「キュビズム」という言葉に行き着いたわけです。今作品が他の凡庸なミュージカル映画と一線を画す要因となるのが、演出味たっぷりなナイトクラブのショーという別次元で、全てのミュージカルシーンが実施されているところにあります。出演者がショーのパフォーマーとなり、観客に向けてストーリーシーンとは違う手法のプレゼンテーションを繰り広げていくのです。その内容は「嘘まるだしの逆説的自己プレゼン」や「可笑しいほど自虐的な自己プレゼン」であったり「ある状況下における人間関係、力関係の変化、役割説明」までもが、照明・衣装・大道具を利かした劇的空間で展開されるのです。このようにストーリーシーンとミュージカルシーンとの明快で大胆な分離を計ることによって、「違う視点」がクローズアップされ、この映画は厚みのある立体感のある作品へと昇華し、稀有なミュージカル映画と醸成していったのです。■ラスト2人組による機関銃ショーは 「誇大妄想としての叶わなかった夢物語」であったと主張しておきたい。結局、共演が成功しなかった末の妄想だったのだ。嘘・自惚れなど虚実入り乱れたこの映画のラストとしては悪くない解釈だと思いますが、いかがでしょうか?
【マーク・レスター】さん 8点(2005-01-01 00:54:03)(良:1票)
その他情報
|
© 1997 JTNEWS |