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《ネタバレ》 岩井俊二監督の劇場映画デビュー作とのことだが、冒頭の小樽の雪景色から既に美しく、この時点で映像的にはかなり引き込まれた。ほかにもカーテンから漏れる光など思わず息をのむ美しさで、かなり久しぶりに見た岩井監督の映画だったのだが、やはりこの監督の映画はその圧倒的な映像の美しさだけでも魅せるものがあると感じる。脚本的にも面白く、タイトルからストレートな恋愛ものを想像していたのだが、そうではなく、ヒロイン 渡辺博子(中山美穂)が死んだ恋人に宛てて出した手紙の返事が来るというミステリアスな展開で、そこから博子と彼女の死んだ恋人と同姓同名のもう一人のヒロインである藤井樹(中山美穂の二役)の文通が始まるというのが面白い。実は博子の恋人だった藤井樹(男)(柏原崇司)は中学時代に藤井樹(女)(酒井美紀)と三年間クラスメイトだったことが分かったあたりから始まる二人の中学時代の回想シーンからようやくラブストーリーらしくなるが、そこまでベタベタした感じはせずに見れたのは良かったし、むしろこの中学時代のエピソードのほうが現代のパートよりも話としては印象に残ってしまったくらい。藤井樹(男)が図書カードに自分の名前を我先にと書くのはちょっと「耳をすませば」を思い出してしまうが、でもそれがラストシーンにつながっているのも巧い。それにもとはと言えば博子が死んだ恋人に出した手紙から始まっているが、それは博子と藤井樹(女)の文通を経てここにつながるんだと思うとなんと巧いタイトルだろう。博子が死んだ恋人の友人(豊川悦司)に誘われて行った慰霊登山で恋人の死んだ山に向かって叫ぶシーンも一見引いてしまうようなシーンだが、恋人のことを一生懸命吹っ切れようとする博子の気持ちが伝わってきて切なかった。文通の中にも登場し、ここでも博子が叫ぶ「お元気ですか。私は元気です。」という言葉は何度も出てくるせいかとても印象に残った。流行語になっていてもおかしくないが、本作は日本よりも韓国でヒットしたとのことで、韓国ではだれでも知ってる日本語なのだとか。見る前に思ったよりも笑えるシーンが多かったのも良かった。突っ込みどころも多い映画ではあるが、岩井監督らしい独特の雰囲気も良く、間違いなくこの時代を代表するような佳作だと思う。
【イニシャルK】さん [DVD(邦画)] 7点(2018-11-04 17:29:55)
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