| 作品情報
レビュー情報
《ネタバレ》 カメラは多く据えっぱなしの長回し、へたに揺れもせず、淡々と語る。音楽も付かず、柱時計の音が聞こえるだけ。もう無駄なものをとことんそぎ落として、まるでわれわれもそこに居あわせたかのように、まるで共有する昔の記憶をたどるように映画は語る。ことさらドラマティックな映像は一つもないが、かえって直截な心情が伝わってくる。ほほえましい情景の連続ながら、それがせっぱ詰まった状況に裏打ちされていて、有為の青年が特攻で死ににゆかなければならない理由が、いっそう不条理に迫ってくる。かといって、戦後史観からの声高で一方的な弾劾でもなく、一方ナルシスティックな反動でもなく、実際そこにあったような市井の人間の時間が描かれている。こんな戦争映画はほかに記憶がない。黒木和雄の到達したひとつの極致といっていいのだろう。
【goro】さん [DVD(邦画)] 9点(2007-10-01 00:43:08)(良:3票)
その他情報
|
© 1997 JTNEWS |