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《ネタバレ》 この作品は、老境という孤独への幽囚を描いたものではないだろうか。樹木がまばらに生えた森や一軒家などはとても象徴的で、それはまるで老境の心象風景のよう。絶望的な程には行き詰まってもいなく閉塞的ではないにしても、薄暗く寂然としていて、そこには漠然とした不安感と孤独感がある。そしてまた、老人が猫を探す為に外出し、忘れ去られ破裂していたゆで卵もまた一種の暗示。ある日 “森”というルーティーンの中で、恐ろしいものを目撃する老人。静謐な生活の中への闖入者。そこから彼の生活は乱されて行く。奇妙な一連の出来事をエサに、老人の中で良からぬものがどんどん涵養されて行く。明確な説明も明瞭な言葉もない。思えば無音というのは最も精神を刺激する。耳障りな無音。ゆで続けられている卵。老人の中で静かに涵養される狂気。そして最後の瞬間、卵は破裂してしまう。これはホラーと取ると陳腐な物語かも知れないけれど、視点を変えると途端に興味深くなる。これは静寂の中進行する、静謐な狂気の物語なのだ、と。
【ひのと】さん [DVD(字幕)] 7点(2006-05-15 23:13:46)
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