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「感情移入できない」とか「主人公の性格が嫌」といった映画批評でよくみられる言葉は、ルノワールの前で全く無効となる。「人にはそれぞれ言い分がある」のだし、そもそも映画って万人が愛する人物像を描かなければならないの?この映画のジャン・ギャバンも相当嫌な奴だ。アルヌールはただの浮気者だし、その恋人も女々しい嫌な野郎だ。ところが、それがぜ~んぶチャラになる素晴らしさ。このカンカンを前にしたら、あなた、もう何の言葉も浮かびません。途中、一度曲が途切れ、アルヌールがポーズを決めた時、「え、もう終わるの?」のため息が観客から一斉にこぼれる。再び音楽が始まると、ほっとした空気が流れる、「ああ、まだ見れるんだ」。そして再び、観客の予想を遙かに超えた踊りが繰り広げられる。もっともっともっとこの踊りを観ていたい。できることなら一生見続けていたい、と思う。しかしエンドマークはやってくる。映画と自分との間に広がる果てしない距離を思い、絶望的になるのはその時だ。
【まぶぜたろう】さん 10点(2003-12-08 00:50:51)(良:1票)
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