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《ネタバレ》 ギリシャ神話にミダス王の有名なエピソードがある。手に触れるもの全てが黄金になるようディオニュソスに願いごとをし、それが叶えられると、しばらく王は黄金の魅力に取りつかれていた。そのうち、食べ物も愛する娘も金に変わってしまうことに気づき、彼は激しく後悔したという。
アメリカの経済サスペンスものは、たいていこのエピソードがそのまま当てはまってしまう。身に過ぎた富を追い求めると、王が娘を彫像にしてしまったように、身内をも巻き込み必ずいつか破滅する。 そもそも主人公がスパイ行為に手を染め始めたとき、視聴したことを激しく後悔した。人の信頼を得て背信行為を働く映画は、もう年齢的にきつい。それでも歯を食いしばって最後まで見たが、ラストは単なる盗聴で悪事を暴いてあっけない幕引き。主人公のどや顔に、白けて引いてしまう。ここに至るまでのストレスを吹き飛ばすくらいの凝った方法でひっくり返して欲しかったのに。それでも、ハリソン・フォードとゲイリー・オールドマンのこってりとしたセリフの応酬、顔芸はすばらしかった。そこだけを何回でも見直したい。 一番残念なのは、ヒロインだった。産業スパイがいてもおかしくない大会社の重要ポストに就いていながら、見ず知らずの男と一夜限りの仲になるわ、新参者を相手に牽制するわ、遅刻はするわ、PCからデータを盗まれたことにも気づかないわ、社の命運を左右する端末を恋人同室の枕元で充電するわ、携帯の紛失は半狂乱になるほどの事態だというのに、「私をだましたのね」とスパイとわかった彼氏にのん気に電話するわ、彼女の危機管理能力は呆れるほどゼロに等しい。美人という以外、いったい彼女の何が秀でていてジョックの御側付きが務まっていたのか、理解に苦しむ。ラストの「私は高いの」というセリフには苦笑してしまった。あなたは何もかも緩すぎるんだって! 産業スパイをあえて懐に飛び込ませるためにジョックが彼女を雇っていた、という設定にしなければ、ジョックの手腕にムラがありすぎる。全体的に煮詰まっていない作品だと思う。 【tony】さん [インターネット(字幕)] 5点(2019-03-27 15:28:39)
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