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《ネタバレ》 高い発生率の南海トラフ地震におびえる太平洋側の住人としては、この映画は単なる娯楽として鑑賞できなかった。建築物の崩壊シーンはあまりにも生々しく圧倒的で、震災で身内を亡くされるなど、深刻な被災を経験した人がこの映画を観るにはかなりハードルが高い気がして心配になったほど。
巨大生物に善も悪もなく、ただ決して共存できない存在として描かれているため、ゴジラは生物というよりは、まさしく地震やその他の天災をつかさどる荒ぶる神の化身に見える。東日本大震災では、大きな地震や津波が起こったあと、二次被害として原子力発電所の重大事故が発生したが、そうした段階を踏んだ震災の様子が、ゴジラの上陸、建築物の破壊、放射能火炎放射らと重なって見え、考え込まざるをえなかった。何度もくり返された 「生物なら倒せる」 というセリフは、決して避けることができない天災を人類が直接手を下して牛耳りたい、防ぎたいという願望が込められている気がする。 海外のGODZILLAで描かれる人間ドラマは、怪獣と対比させるためにやむなく必要だったのだろうが(そのため、どうしてもとってつけたような感が残る)、このシン・ゴジラは、擬人化した「震災」に立ち向かう人間ドラマであって、どちらも重要な両輪の役目を果たしていた。核を使わず、ピンポイントでゴジラをしとめる人間の知恵と勇気は、東日本大震災の折、放射能拡散を防ぐため、命がけで発電所に放水をくりかえした東京消防庁の人々、バルブを閉めに行った熟練者たちへの思いに重なる。この映画を観た外国人の中には、退屈な官僚たちの人間ドラマなど不要という感想を持つ人が多いと聞くが、日本人にしかわからなくてもいいと堂々と開き直りたい。 【tony】さん [映画館(邦画)] 10点(2016-08-06 01:08:26)(良:3票)
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