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ニクソン大統領の業績と没落は経済史や国際関係史などを学んだ一部の人以外にとっては既に遠い歴史事実になっています。でもウォーターゲート事件という権力者が決してやってはいけない盗聴スキャンダルという罪を差し引いても彼の業績は偉大だったと言えます。彼を外交面で支えたのは1973年にノーベル平和賞を受賞してつい最近100歳くらいの高齢で逝去したヘンリー・キッシンジャーの外交補佐官としての功績が大きかったけれど実現したのは大統領の地位にあったニクソンでその意味でキッシンジャーとニクソンは的を定める人と矢を放つ人という分業を人類に最も資する形で成功に導いたと言えるでしょう。アメリカでは1950年代には共産主義が忌み嫌われてレッド・パージといった理不尽な共産主義者排斥運動も起きてソ連やその他経済発展の途上に於いて共産主義を取る国々を神経質に警戒しましたが、1960年代に入って経済成長の恩恵がアメリカ社会に浸透するにつれ、共産主義に抵抗する真のツールは国民の最低限の生活を保証することと機会均等だということが判明して人々の考え方も「共産主義の道筋がそれを実現できるなら邪魔だてはしない。」というように変わっていったのです。わたしたちは今正にロシアと中国でこの顛末を見ているところです。これが同じアイルランド系でありながら親の上昇志向のおかげでハーバード大卒のエリートとなったケネディーが自分で道を切り開いてきたニクソンに大統領選で勝った一因かもしれないと思ったりもしました。ニクソンには年老いて政界を去っていく世界大戦の功労者でもあるアイゼンハウアーの面影もチラホラしたと思います。因みにこの選挙戦で初めてテレビで討論が導入され、ケネディーはスポットライトに映えるようにメイクをほどこし、主張内容はおそらく47歳で共和党選出のニクソンは草の根の要求を拾い上げ、43歳の民主党選出のケネディーは理想を高く掲げて民衆を引っ張っていくような内容だったと思われます。本作品中ではニクソンの少年時代のフラッシュバックが少なくとも3回モノクロで挿入されますがそのそれぞれの思い出が地位を上り詰めていくニクソンに「人間、夢と意志があればどんな困難も克服することが出来る。」という勇気を与えたのだと思います。お坊ちゃん育ちで共産主義とは相いれずにキューバ危機を引き起こしたケネディーと8年後に更に成熟したアメリカの舵取りを任されて共産主義との融和とさらなる経済成長に必須だった世界金融秩序の構築を成し遂げたニクソンは異なる政党に属しながら絶妙なバトンタッチによってアメリカと世界を新しい世界に導いたと思います。
【かわまり】さん [DVD(字幕)] 10点(2025-02-11 15:48:34)
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