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小津が死の前年に撮った遺作であり、すべてが磨き込まれた小津芸術の完成形。でありながら、娯楽作品としても一級品。カラー映像が本当に美しく、どのシーンも味わい深い。ムダなものは何ひとつない映画。映画監督は普通、キャリアの初期や中期に最盛期があって、その後下り坂になるイメージがあるが、小津は老いるほどに高みへ上っていった監督ではないだろうか。この作品は役者陣にも見所が多く、特に後の“水戸黄門”東野英治郎が主役を奪うかのような存在感を見せる。出世したかつての教え子たちに対し、卑屈さすれすれの態度で接する落ちぶれた元教師であり、娘を嫁にやれなかったダメな父親。これで泣けてしまうのが大人の男というもの。他にも、しっかりした面と初々しさの両面を見せる若き日の岩下志麻の美しさ、当時から年齢不詳な(?)岸田今日子、当たり前だが中井貴一そっくりの佐田啓二、と今では演技以外の別の面からも楽しめる豪華キャスト。ホームドラマのひと言では到底片付けられない、「ジャパニーズ家庭エンターテインメント」とでも言うべき作品。
【眠い悪魔】さん 9点(2004-01-27 11:57:37)
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