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スティーブン・キング原作、フランク・ダラボン監督作で舞台が刑務所とくれば、世評の高い『ショーシャンクの空に』の感動ふたたび!の呼び声がかかる。ところが本作は、しみじみと満ち足りた心地好さを満喫したショーシャンク~とは、まるで正反対の苦さを、見る者の心に残す。それは、奇跡への絶望感だ。■『ベルリン・天使の詩』には、ふたりの天使が登場した。黒いロングコートをまとった彼ら天使は人間からその姿が見えず、人間のすぐそばに、寄り添うようにたたずんでいる。人間を見守りながら、しかし彼らはなにもしない。なにもせず、ただ寄り添っているだけの存在である。■グリーンマイルに登場する囚人ジョン・コーフィは、ギトギトのどす黒い巨躯に、薄汚れた肌着とオーバーオールを貼りつけた、生身の人間である。そのジョンが、人々の目の前で奇跡を見せる。ところが、彼が奇跡を行うそのさまは、ひどくおぞましくて痛々しいのだ。■人の苦しみを一身に受け、病や悪を、悪であると裁断を下して灰に変えてしまう。そんな決定的な力は地上のどんな者にも付与されるべきではない。私たちは、奇跡をなにかキラキラした夢か希望のように夢想しがちだけれども、現実に奇跡があるとしたら、奇跡を行う者がいるとすれば、それは、ジョン・コーフィのような醜い姿でしかありえないだろうし、彼と同じ末路をたどるほかはないだろう。人もまた、ついには彼を葬る以外の道を選ばないに違いない。■奇跡をあきらめさせられてなお、悪に怯え、病に身をむしばまれながら生きるこの世はたんに過酷である。しかし、奇跡のないこの世に絶望しても、それでこの世に生きることをもあきらめようとは、この映画は言わない。この作品は、私たちの直面する事実だけを、私たちに見せている。■見慣れた配役は、NY派の常連スターの同窓会の様相。いささか食調気味の主演トム・ハンクスの周りを固める第一級の脇役陣の好演にホレボレさせられる。『コンタクト』のデイヴィッド・モーズ、『プライベートライアン』のバリー・ペッパー。思わぬところでゲイリー・シニーズがひょっこり顔を出すに至っては、テレビの前ですっかりミーハー化してしまいました。■特筆すべきは、冒頭から登場する、老後の主人公役に扮するおじいさん。見覚えあるなアと思ったら、大草原の小さな家のオルデン牧師じゃーありませんか!(ダブズ・グリアー)ごぶさたしてます~。
【本橋哲郎】さん 6点(2004-02-11 15:41:56)
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