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《ネタバレ》 ゾンビ映画は数あれど、すぐに忘れ去られてしまうのが明白なものが九割以上。しかしこれは、久々に当たりといっていい良作だったと思う。筋書きの荒さが目立つが、それにしても主題の明確さ、映像や音楽の質の高さは頭一つ抜けている。
狙撃部隊による無差別攻撃や、ナパーム弾で炎上する市街地の場面はとくによくできていると思う。かつての名作『ゾンビ』でショッピングセンターをだらだらと徘徊するゾンビたちに現代人の虚ろさを重ねて見ることができたのと同じように、この映画の凄まじい勢いで襲い来るゾンビたちには戦場における人間の暴力性を重ねることができる。 間の抜けた無計画さ、一見理性的なようでいて極端すぎる決断、いざというときには歯止めが利かない獣性によって見る見るうちに無残な結果へ向かっていくさまは、まったく現実の米軍を見ているようで、洒落になっていない。そういう意味では、『ドーン・オブ・ザ・デッド』などよりも遥かに“走るゾンビ”の必然性があるように感じられた。 残酷なエピソードが多く、それも生理的というよりは精神的に訴えてくるのがこの映画の特徴だ。家族で殺しあったり、軍唯一の良心ともいうべき兵士があっけなく焼き殺されてしまったりと、驚くほど救いがない。閉所恐怖と暗所恐怖の両方を同時に覚える地下鉄の下りは見る人によっては半ば拷問ではないかと思う(まあヘリコプターの攻撃は、半ばギャグだけど)。 中盤、姉弟がバイクで疾走する廃墟と化したロンドンの光景が印象に残った。無人の市街地の寂寥とした美しさに、全編を覆う絶望的なヴィジョンが集約されているように思う。 【no one】さん [DVD(字幕)] 8点(2008-08-06 15:46:30)(良:1票)
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