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《ネタバレ》 盟友の撮影監督エマニュエル・ルベツキ抜きのキュアロン監督というのはちょい不安だったのですが、全くの杞憂でした。冒頭の印象的なタイルとそこに映り込む飛行機の映像から始まり、主人公一家が住む家のなかを水平移動するカメラ。あちこちにモノが散らばっているところに、この一家の不安定な日常が浮かび挙がってくる。犬とあちこちに散らばるその糞。それでも素直で元気な子どもたち。少数民族の言語で会話するメイド。道を行進する軍隊。狭いガレージに無理矢理駐車される巨大なアメ車。これら一つ一つが、その後、家族の状況の変化のなかでとても効果的に繰り返し描かれる。なんてことはない反復技法なのだけれど、モノクロの美しい映像でゆっくりじっくりと見せられると、そこに込められた心情描写がじんわりと見る者にも染み込んでくる。水平移動カメラで俯瞰的に眺める映像は、序盤はちょっともどかしいのだけれど、中盤のクライマックスの若者運動の弾圧シーン、そしてラストの海辺のシーンでは、これ以上ないくらい効果的に使われる。そして、ラストの空に向かうショットの美しさ! もう絵を思い出しただけで泣けそう。残念だったのは、音と映像に凝ったこの映画を、映画館で観る機会がほとんどないということ。もちろん、非英語、モノクロ、パーソナルなテーマという点では明らかにミニシアター向けのこの作品が、田舎に住んでいてもすぐにNetflixで見られることは、悪いことばかりではないのだけれど。
【ころりさん】さん [インターネット(字幕)] 9点(2019-01-06 10:55:44)(良:1票)
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