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《ネタバレ》 じつはちゃんと見たのは初めてです。宮崎駿の価値観がもっともシンプルかつストレートに表現されてるのかもしれません。久石譲の音楽は「ハウル」と「紅の豚」がもっとも美しいと感じます。
おそらく「風立ちぬ」の堀越二郎が飛行機に託したのも《自由》という夢だったのでしょうが、それはあっという間に近代国家の戦争や全体主義の道具になってしまったわけですね。この「紅の豚」では、国を捨ててお尋ね者(盗賊)になった男の姿をとおして、本来の飛行機乗りの素朴なロマンティシズムを描いてるわけですが、それとは逆に「風立ちぬ」では、戦争の現実のなかで近代国家の道具にならざるを得なかった男の姿を描いてる。そういう意味で、2つの作品はちょうど対照をなしてるといえます。 資本主義に適合しやすいゲルマン民族のプロテスタンティズムとか、日本人やドイツ人のような勤勉さに比べると、イタリア人のラテン的な特質は欠点に見えたりもするわけですが、裏を返せば、近代国家に適合しきれない自由な精神こそがラテン民族の美点でもあるわけよね。たとえばベルトルッチやビクトル・エリセの映画などを見ていると、イタリア人やスペイン人にとっての《ファシズム》は一種の病気だったと感じられるのですが、その一方で日本人やドイツ人の場合は、もともとの民族性がかなり全体主義的だし、それは戦後になっても変わってないように見えるし、ファシズムの捉え方がちょっと違うんじゃないかと感じます。 そう考えると、「紅の豚」の舞台がイタリアであり、「風立ちぬ」の舞台が日本であるのは必然かもしれません。 【まいか】さん [地上波(邦画)] 8点(2025-05-10 01:00:44)(良:1票)
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