| 作品情報
レビュー情報
《ネタバレ》 弱肉強食の自然の摂理のなかでオオカミに母親を殺された子羊がその復讐を果たすまでのお話。前半はディズニーの「バンビ」、後半は梶原一騎の「タイガーマスク」って感じです。かなり奇妙な物語で、しかも救いのないバッドエンド。それをサンリオとやなせたかしが作ってる。これは、やはり敗戦国ならではの物語だと感じます。タイガーマスクであれ、あしたのジョーであれ、銀河鉄道999の鉄郎であれ、戦後日本の漫画の多くは、悲しい境遇を背負った主人公が復讐することの虚しさと悲しさに気づく戦中世代の物語ですよね。
1978年に発表された作品ですが、これは本来なら敗戦直後の1940〜50年代に親兄弟を亡くした子供たちに伝えるべき内容。広島や長崎にかぎらず、東京をはじめとする都市部には、そのような子供がたくさんいたのだから。 もちろん個人によって事情は違うけど、基本的に1970年代の子供たちは戦時中の復讐心などもってなかったし、いまいちピンと来てなかった可能性のほうが高い。まあ、戦中世代の人々が復讐することの虚しさを実感したのは、敗戦から数十年たった後だったのでしょう。 ただし、これは個人の物語であるのみならず国家の物語と解釈することもできます。第一次大戦の復讐を果たそうとしたドイツは、ふたたび第二次大戦でも敗北してる。近代以降の戦争で負けを知らずに対米戦で敗北した日本も、米国に復讐するのは現実的に不可能でした。国家的な復讐も不毛であって、むしろ復讐心を捨てたことで得るもののほうが大きい。ロシアや中国や韓国も、間接的には日本への復讐を果たしたけれど、そこから得たものはほとんどなく、むしろ米国への復讐心を捨てた日本のほうが、かえって得たものは大きかったというべきです。 一方、イスラエルは、本来ならキリスト教世界へ向けるべき復讐心をイスラム世界に転嫁してるわけですが、かえって自分の首を絞めてるだけです。アラブ諸国もイスラエルへの復讐を果たすのは不可能だと思います。 【まいか】さん [地上波(邦画)] 6点(2025-06-25 20:09:30)
その他情報
|
© 1997 JTNEWS |