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《ネタバレ》 世にいう「キメツノヤイバ」なるものにまったく無知でしたが、やっとその魅力の一端が分かった気がします。
物語の冒頭は、目を背けたくなるほど絶望的な場面から始まります。しかし、そこから先は、ほぼ無双状態でサバイバルしていく展開になっており、いわば不遇な子供の自己実現の物語のように見えます。 きっと現実の社会にも、絶望的な状況から人生を始めなければならない子供は存在すると思うので、そのような子供たちにとって、こうしたサバイバルなストーリーは夢があるのかもしれません。 ただ、絶望からスタートする人生というのは、たいていの場合、自分自身が「鬼」になって社会への復讐を目指すような生き方になるケースが多いと思うのですが、この物語の場合は、復讐すべき相手のほうがそもそも「鬼」なので、自分自身はけっして鬼にはなれないのですね。そこがユニークなところだと思います。 主人公は、文字通り「心を鬼にして」鬼を殺していくのですが、じつは鬼と同じ悲しみを共有しており、つねに敵が鬼になった境遇や背景を意識せざるをえません。ある意味では自分の境遇も鬼と同じなのであり、さらにいえば、唯一残されている肉親の妹もまた鬼だからです。 主人公は、情け容赦なく鬼を殺していくけれど、心の底から鬼を憎むことができません。したがって、これは「復讐の物語」ではあるけれど、けっして「憎しみの物語」にはなりえない。それが、この物語の秀でた点であり、同時に倫理的な希望にもなっていると思います。 これは「鬼とは何なのか」という社会学的な問いであり、日本古来の桃太郎伝承=勧善懲悪神話に対する痛烈な批判でもあるはずです。 【まいか】さん [地上波(邦画)] 7点(2020-10-11 14:11:49)
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