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《ネタバレ》 GYAOの無料動画で視聴。昔いちど観たはずだけど、まったく中身を忘れていました。
カラー時代の小津のエロコメディの文体で撮られていることに加え、家族ではなく旅芸人を題材にしたリメイク作品であること、関東ではなく関西(小津の故郷の三重県)を舞台にしていること、松竹ではなく大映で作られたこと…など、いくつかの点で特異性があります。キスシーンが多いのも意外だし、杉村春子と京マチ子の対決ってのも、いま考えるとスゴいことだなあと思う。 リメイクしただけのことはあって、お話はとてもドラマティックで面白い。映画人だって旅役者と同様のヤクザ稼業には違いないから、この物語は小津にとって(舞台を故郷に設定したことも含めて)他人事じゃなかったのかもしれません。その哀しい生きざまを、松竹ではなく大映の役者に演じさせたのですね。 端的にいえば「パワハラ親父の毒親物語」なので(当時の観客は旅役者の境遇に同情したかもしれませんが)、現在の観客なら、こんな両親を許せないだろうし、むしろ「息子たちは物分かりがよすぎる」とさえ感じるかもしれません。 しかも、村の女たちと旅役者たちとの行きずりの恋は世代を超えて性懲りもなく反復されており、いわば構造的な悲劇であることが暗示されています。たとえば床屋の娘は、父親ではなく母親に守られていますが、村の男たちも客商売なので、ふしだらな旅役者といえど無下にはできない弱い立場にあって、一様に無口で影が薄いのですね。したがって、村の女たちは(ある意味では自由とも言えるけれど)自分で自分を守るしかありません。 隠し子を生んだ主人公の男女は、浮き草のような自分たちの生き方に後ろめたさを感じ、郵便局勤めのお堅い息子に希望を託していたものの、結局は世代を超えて同じ過ちが反復され、その身勝手な希望もあえなく砕かれます。「蛙の子は蛙」という哀れなセリフには思わず笑ってしまいました。これはほとんど希望の見出せない物語。旅役者の男女が再起できるとも思えないし、残された母子が女優あがりの若い娘と上手くやっていける保証もない。むしろ息子の進学や出世の可能性はかなり狭まったと言ってよい。小津と野田はあからさまな悲劇にはしたくなかったでしょうが、あたかも希望があるかのように終わらせるのは無理がありました。実際は、かなり悲劇的なエンディングだと思います。 【まいか】さん [インターネット(邦画)] 8点(2023-03-16 06:52:04)
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