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《ネタバレ》 世界的な評価の確立した名作に対して「7点」というのは、自分としてはやや低めの評価です。観る前のハードルが高すぎたのですが、駄作と言うほど悪いとは言えないものの、傑作と呼ぶ気にはなれません。宮川一夫のカメラと香川京子が申し分もなく美しいことに変わりないし、花柳喜章だって悪いとは思いません。じゃあ、いったい何が不満だったのか。おそらく、わたしは、鴎外の文章がもっていた非常に簡潔な叙事性と、前々作の「雨月物語」が強烈に放っていた神秘性とを、両方とも併せもったような世界に期待していたのだと思います。わたしが勝手に設定したそのハードルから見ると、この作品はごくフツーでした。いくつかの点で、鴎外の短編と違っている部分(安寿が妹である、巫女に騙される、姥竹が自殺ではない、厨子王に変節がある、山椒大夫に仕打ちが与えられる、最後に官位を捨ててしまう、地蔵の奇跡が描かれていない、等)がありますが、そうした変更を一概に悪いと言うつもりはありません。鴎外の小説じたい、もともとあった複数の伝説の翻案なのだし、たしかに小説どおりの展開にしていたら、かえってリアリティに欠けていたようにも思います。しかし、結果として現代的な意味での説得性が増しているぶん、おなじ中世の物語である「雨月物語」に感じられた理解を超越するような神秘性が薄まり、ややマンガじみた分かり易さに帰着した気がします。ヨーロッパの人たちにそのあたりがどう見えたのかは知りませんけど…。けっきょく総合的な意味でやっぱり最高傑作だって思うのは「近松物語」かなぁ。といいつつ、いまだに他の作品をレビューできていませんが。
【まいか】さん [DVD(邦画)] 7点(2012-10-07 01:13:48)(良:1票)
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