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『わが谷は緑なりき』・・・私はこの作品における”緑”という色について少し考えてみました。まずこの作品を観る前に私の炭坑のイメージ色は黒や灰色しか思い浮かびませんでした。なぜならすす汚れた炭坑夫達や掘り尽くされ荒廃した山々が先入観としてあったために”緑なりき”の緑という色が合っていないように思えたからです。しかしながらこの作品を観ているうちにその緑という色に自分の“心”が徐々に染め上げられていきました。緑というものは植物を連想させ、植物は風雪や日照りなど過酷な状況下におかれても必死に大地に根を張って生きています。それと同じゅうしてこの作品における人達も決して裕福ではない生活の中“喜怒哀楽”の感情を充分に出しきり必死に生きていました。たくましく必死に生きている人達の心をどうして灰色だと言えるでしょうか。”生”ある色としての緑という色こそが一番合っていると思えてきたのです。そして、この作品はモノクロ映画なので実際に緑という色を見ることはできないのですが、私は自分自身の目を閉じて生まれ育った故郷を思い出してみました。思い出を遡り少年時代の頃を思い浮かべるとその光景には紛れも無く“色”がついています。私の故郷はどちらかというと田舎なので田んぼや山などがすぐ目の前にあり、友達とクワガタ採りや池で魚釣りをしたことなどはいくつになってもその思い出の数々が色褪せることは決してありません。山野で育った私にとって緑という色こそが一番身近な色だったことを思い出させてくれたのです。それを含めてこの作品を観ているうちに白と黒以外にも様様な”色”を見ることができたのです。自分の心にある故郷。そこには生ある人達の息吹、亡くなった人達の思い出が詰まっている。それさえ失わなければ“わが谷は緑なりき”と誇れることだろうと思いました。
【tetsu78】さん 10点(2005-02-11 20:16:05)(良:3票)
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