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身震いするほどかっこいいイントロにはじまって、すべてを失ったヤクザが大暴れをはじめる前半部分は最高。ポーターを裏切った後悔からヤク中になった妻は、死んだと思っていた夫が生きて帰ってきたショックから致死量のクスリをやって命を落とします。そして、妻の死体と一晩添い寝したポーターは復讐を決意。「俺はもう生きてる必要がないんだ」と言わんばかりに、どんなヤバイ連中を相手にしてもまったくひるまず、ただひたすら復讐のために突き進む。これぞ復讐映画の醍醐味です。これまで悪人役をほとんどやってこなかったメル・ギブソンが、恐ろしいほどよくハマっています。そして、仇役のグレッグ・ヘンリーはそれ以上のハマり方で、卑怯で変態で恐ろしくむかつく小物ヤクザを完璧に熱演。画面に映るだけで心底イラっとくる素晴らしい悪役ぶりは、仮に作品自体が評価されていればオスカー候補にでもなりえたのではと思うほどです。しかし、グレッグ・ヘンリーを殺して以降は、作品がガラっと変わってしまいます。映画の軸が復讐からロマンスへと移り、前半の殺伐とした空気が突然なくなります。ポーターなどまるで別人で、「リーサル・ウェポン」のマーティン・リッグスのような人格になってしまいます。アクションも突如として派手になり、爆破あり、銃撃ありの普通のアクション映画に。当時流行っていた二丁拳銃まで披露するサービスぶりで、もはや同一の映画とは思えないほど。これは製作時のゴタゴタが原因で、ブライアン・ヘルゲランドの脚本が気に入らなかったメル・ギブソンが「マッドマックス2」のテリー・ヘイズを呼び寄せて脚本を書き変え、実質的に監督権も奪ってしまったため、前半と後半でまったく別の映画になってしまったのです。そのために発生したのが「7万ドル」問題で、どれだけ金額を吊り上げられても7万ドルに固執するポーターがバカにしか見えないという問題は、後半の方向転換により発生しました。前半における「7万ドル」はあくまで復讐の口実のような意味合いで使われていたのに対し(だから金額は重要ではなかった)、復讐の意味合いが薄まった後半においても7万ドルという数字にこだわると、妙な違和感が残ったのです。。。前半の殺伐とした復讐劇のまま続けていればバイオレンスの佳作にはなったはずなのに、どうして後半を変えてしまったのか、不思議で仕方ありません。
【ザ・チャンバラ】さん [DVD(吹替)] 7点(2010-02-19 22:29:55)
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