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《ネタバレ》 日系のアメリカ国民を強制収容所に隔離し、彼らから人権と財産を不当に奪ってしまったというアメリカ近現代史の闇。そんな歴史の中で引き裂かれた男女のロマンス。人種的偏見が絡んだ殺人事件の裁判。この3つの要素が絡み合った作品ながら、各々がうまく混ざり合わないまま2時間が経過してしまったという印象です。過去と現在の物語が主人公の回想により同時進行で進んでいくというスタイルをとっているのですが、年代毎に画面のトーンを変える等の工夫がなされていないため直感的に内容を把握しづらく、話を追うことに対してストレスを感じてしまいます。話が分からないわけではないのですが、あえてこのスタイルをとる必要があったのかは疑問であり、上映時間が長くなるという弊害はありますが、話を年代順に整理した方が観客の理解は進んだのではないかと思います。
また、主人公の感情に共感しづらいという点も弱みとなっています。日系人に対する彼の態度が、度を越して冷たいのです。強制収容所送りが決定した際、彼は日系の恋人に寄り添うことを諦め、さらには、隔離政策に対して反対意見を述べる父親に向かって「そんな記事を書けば新聞社が潰れてしまう」と言い、日和見を決め込もうとしました。また、裁判開始後、偶然にも雪道で再開したハツエから「言論の力で何とかこの危機を救って欲しい」と懇願されたものの、「大したことはできない」と言ってアッサリと拒絶。さらには、かなり早い段階でカズオの無罪に繋がる証拠を入手していたものの、その公表をずっと控えているという冷血漢ぶり。さすがにイライラさせられました。 タイプキャストも作品の弊害となっています。カズオの弁護士がマックス・フォン・シドー、判事がジェームズ・クロムウェル。彼らの重厚なパフォーマンスは大いに評価できる一方で、額に「誠実」と刻み込まれているかのようなこの二人が付いていれば、カズオは絶対に大丈夫だろうという安心感が漂ってしまい、固唾を飲んで裁判の行方を見守るという観客の楽しみが失われています。少なくとも判事役には、どちらにでも転びかねないタヌキオヤジみたいな俳優を配置すべきだったと思います。また、対する検事役が悪人顔のジェームズ・レブホーンという点もマイナス。彼では、どう見てもマックス・フォン・シドーには勝てません。レブホーンとクロムウェルの役柄を入れ替えてしまった方がよかったと思います。 【ザ・チャンバラ】さん [DVD(吹替)] 4点(2015-08-29 00:10:39)
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