| 作品情報
レビュー情報
《ネタバレ》 消化不良な一本である。この映画は混乱を描いているが、その混乱は、「そこに存在すべきでないものが、存在してしまった」という過剰感によって引き起こされている。モロッコ人の家庭には猟銃があり、アメリカ人夫妻は異境モロッコに滞在しており、その夫妻の子供たちはベビーシッターのメキシコ人の車に乗っている。その視点から考えると、日本はこの映画のなかで特殊な位置を占める。まず、日本では混乱とよべる状況がおきていない。また、妻を自殺で亡くした役所広司とその娘で聾ある菊池凛子の親子が、苦しみつつも、苦しみをどう受け入れるかを模索するという、モロッコパートやアメリカパートでは見られない葛藤が描かれている。その意味で、日本バートの苦しみは「そこに存在すべきものが存在していない」という欠如感に裏打ちされているといってもいいだろう。過剰なものは削ればよいが、欠如をどう埋めるかは難しい。埋められない欠如に対する日本パートの答えは、「欠如を常態としてみなす」という痛々しいものだが、抱き合った役所、菊池親子の美しい姿をしても猶、救いあるいは希望は訪れていないように思える。みていて辛い作品である。
【wunderlich】さん [DVD(字幕)] 6点(2008-07-20 09:57:22)
その他情報
|
© 1997 JTNEWS |