| 作品情報
レビュー情報
《ネタバレ》 人の生と死。自然な生と死もあれば、社会が生み出すある意味不自然な生と死もあります。その具体が悪としての殺人であり、その結果として行われる正義としての死刑でしょう。
基本的に本作のテーマは「命」なのだと思います。死刑制度の是非に触れる部分もあるので、それもまたテーマに含まれるのでしょう。家畜とイルカの命について触れる部分では、社会制度としての死刑と人間が食料を得るために行う屠殺との対比にも触れています。ただ、作り手は明確な考え方を示してはいないように思えました。これは作品全体で終始一貫しているように思えます。 テーマに限らず、死刑囚一人ひとりは勿論のこと、教誨師も含めた登場人物に関するエピソードは断片的にしか示されません。あとは観る者が想像するだけ。この作り方が作品世界に感情移入し没入するにあたって大変有効だったと思います。勿論、出演者の優れた演技によるところも大きいとは思いますが、冒頭から完全に惹き込まれました。 実際の事件を連想させる死刑囚も登場するし、その一人には死刑が執行されます。これは相当な批判を受けることを覚悟で製作されたのでは?と作り手の本作品製作にあたっての強い意志を感じました。 ちなみに、誰に死刑が執行されるのか?という場面でのミスリード的演出、サイコなストーカーが見る被害者の幻影、教誨師の見る兄の幻影と突然倒れる卓上カレンダー等、淡々と語られる物語にエンタメ性も添えているところには好感が持てました。 ラストのグラビアの紙片に拙い文字で書き綴られた聖書の一節。心を打たれ、長く余韻に浸れる結末でした。 公式サイトにある「大杉漣、最初のプロデュース作にして最後の主演作」という言葉は感慨深いところです。 【タコ太(ぺいぺい)】さん [インターネット(邦画)] 8点(2025-05-03 11:33:50)
その他情報
|
© 1997 JTNEWS |